経営計画から逆算する『採用』。IRを読む事で内定率が上がる理由。
優秀な学生だけど、面接の中でやりたいことや将来像を聞いていると、「今企業として求めている人物とはギャップが生じるので、今回は不合格にしよう...」ということがよく起こります。
就活生の皆さんはこの事態を避けるためにも、事前に企業のIR(特に中期経営計画)を読み込み『企業の成長したい方向』の理解を深めることをオススメします。
これまでも志望動機は「行きたい理由」×「活躍できる理由」の言語化だと、何度もお伝えしてきました。活躍理由を言語化する為には、業界だけではなく行きたい企業の業務レベルまで理解することが大切です。
しかし、実はこれだけではまだ不十分です。活躍理由に納得感を『企業の成長したい方向』まで十分に理解した上で、活躍理由を訴求するとさらに精度が上がります。
(逆を言えば、企業の注力していない方向に活躍理由を主張されると、いくら魅力的な学生だとしても、採用する側はあなたを採用出来ません。)
あなたの活躍理由の説得力を増す為に『なぜIRに目を通すと企業の求める人物像に面接の中で寄せていくことが出来るのか』を説明していきます。
※ note 志望動機は「行きたい理由 x 活躍できる理由」の言語化 を読んでいない方は、先に一読することをオススメ致します。
採用計画は経営計画に基づいて決められている
逆算的思考で就活を始めるためには、大前提として『採用計画は経営計画に基づいた決定』の理解が必要です。
いきなり「採用計画」「経営計画」などと言われても、とっつきにくい言葉かもしれません。もっとシンプルに考えてみましょう。例えば、以下の様な会社をイメージしてみてください。
外国人客の多いエリアを狙って、従業員が1人で運営できるバーを経営している企業があるとします。英語の出来る従業員が1人いれば年間売上が1,000万円立つと仮定しましょう。この会社で、来期に新規出店をしてプラス1億円の売上目標を立てます。
この状況であなたが人事担当だったら、来期どんな人を何人採用すれば良いでしょうか。(細かい条件は全て無視してください。)
答えとしては、英語の出来る人を10人採用すれば良いですよね。事例の企業は「来期にプラス1億円の売上目標」という経営計画に基づいて「英語の出来る人を10人採用する」という採用計画を決めているのです。
勿論、採用活動ではなく、社員教育(現在いる従業員に英語力をつけさせる)や人員配置(英語の出来る他の部署の人をこのバーの店舗に異動させる)によって、この経営計画を達成することもあります。
ただ、重要なことは採用も含めた全ての企業活動が、事業計画を達成する為にあるということです。
これは恋愛に置き換えても一緒です。私たちは人生設計(経営計画)に基づいて恋人選び(採用活動)をしているのです。仕事やプライベートに集中したい時は束縛しない人と付き合いたいし、結婚したい時は遊びじゃない人と付き合いたい。
将来の人生設計の中で子供が欲しいと思っている中で、どんなに美男美女だとしても子供が欲しくないと言っている人であれば、やはり恋人選びの対象からは外れるのです。
だからこそ、企業における人生設計(経営計画)をよく知って採用計画・求める人物像を推測していく逆算的思考が、就活でも『勝ち筋』になってきます。
経営計画を踏まえた面接官の視点
冒頭で「企業の注力していない方向に活躍理由を主張されても採用する側はあなたを採用できません」とお伝えしました。
これは、私が某大手IT企業で面接官の仕事を受けていた時の話です。
その会社はこれまで新規事業をガンガン行なっているイメージを持たれていました。当然のように多くの就活生が新規事業をやりたいと志望理由を伝えてきます。
大学院で立派な研究をしていたり、新規事業インターン経験者や自分でビジネスを立ち上げているような猛者も多くいました。しかし、この企業は既存事業のA事業とB事業に注力していく事業方針を打ち出し、IRやプレスリリースの中でも積極的に発表していきました。
その年から新卒採用された人の80%以上は、このA事業部とB事業部に初期配属されることも人事部内ではすでに決まっていたのです。そのため選考の中でも「この2つの事業部に配属されて大丈夫そうか」という視点が採用評価に織り込まれていました。
「新規事業をやりたい」という意気込みはもちろん悪くないですし、将来的にも叶えてあげられる可能性はあるのですが、少なくとも最初の3年から5年は企業の経営計画から考えると新規事業は控えてA事業とB事業に注力しなくてはいけないのです。
だから大半の学生が主張する活躍理由とは大きくギャップが生じるのです。これがまさに企業の注力していない方向に活躍理由を主張されても採用する側はあなたを採用できません、という言葉の背景です。
だから就活生はIR(中期経営計画)を読み、企業がどういう方向に進みたいのか理解しておく必要があると考えています。
経営計画から逆算する為の就活生の視点
過去に就活アドバイスをしていた学生が複数、森永製菓に内定を出した時があります。例えば森永製菓であれば以下のように見ていくと良いでしょう。
まずは森永製菓の直近期の有価証券報告書を見てみましょう。全て読み込めるとベストではありますが、少し難しいかと思うので、まずは9ページ目の【事業の状況】だけに目を通せば良いです。多くの会社はここに業績と今後の見通しのようなことが記載してあります。
いろんなことが書いてありますが、その中でも以下のようなキーワードを拾うことができます。
「2018中期経営計画」において経営基盤の盤石化と成長戦略の加速を実行していくこと
国内の菓子食品・冷菓部門における「既存領域」の強化
成長を担う「ウェルネス領域」「グローバル領域」の拡大に努めること
これをもとに2018年中期経営計画を見てもまさに同じことが書いてありますね。ざっくりまとめると日本国内における総人口の減少、シニア層の増加が進む中で、お菓子事業でしっかり稼ぎながら、それだけではなく今後は健康食品や海外マーケットに活路を見出そうとしているんですね。
トップメッセージや2020卒の採用サイトの事業ビジョンにも繰り返し同じことが強調してあります。
このような状況で志望理由を聞かれて、「昔から御社の○○という商品が好きで」の一点張りでは採用する側は会社の状況も踏まえるとどうしてもあなたを採用しづらいのです。
求める人物像はIR以外にも隠れている
森永製菓の例でも挙げているように、経営理念やトップメッセージなどにもヒントが隠れている場合があります。
上場企業ではない場合はIRの開示義務がないため、今後の見通しがわかりづらい場合があります。経営理念やトップメッセージ等も必ず目を通しておきしましょう。
(参照:https://www.i-note.jp/morinaga/recruit/)
また、採用サイトを見てみるのも良いでしょう。先ほどの森永製菓の例で考えても2020卒の採用サイトを開いたときに、「共に次の100年をつくろう。」というメッセージが最初に飛び込んできます。
次のスライドでは「甘くない、森永製菓」というキーワードと共に社員紹介が行われており、これらのことからもお菓子事業は甘くなく、今後は既存事業の改善だけではなく、次の0→1を作っていく人物を求めているんだろうということが推測できるのです。
だからこそ、自己PRも0→1経験に寄せた話をして、森永製菓の現在の置かれている立場の中でも活躍できるということをプレゼンすることで、企業の求めている人物とのギャップも少なくしていくことができるのです。
(あっ...これを書いている最中に2021卒の新卒サイトがオープンしたみたいです!!!2020卒の情報が消えた....悲しい。)
※ 2020卒の採用サイトは2/25にサイトがリニューアルされて、今は見ることができません。
ただ、2021卒の新卒サイトを見ると「成長の味が、クセになる。」というテーマに変わっていますね。成長を楽しめる人が欲しいということでしょう。
(参照:https://www.i-note.jp/morinaga/recruit/)
採用サイトも事業計画から落とし込まれて作られている
あなたが見ている採用サイトも事業計画から落とし込まれています。具体的に見ていきましょう。
20卒のトヨタの採用サイトであれば「世界への責任、未来への覚悟」、ソフトバンクの採用サイトであれば「Go Beyond the challenge」等のキーワードが採用サイトを開いた一番最初に飛び込んできます。
非上場企業であっても採用サイトは公開している可能性が高いです。みんなの知っているマイナビも20卒の採用サイトを見ると「期待を創れ。期待を超えろ。」というメッセージが飛び込んできます。
これらのメッセージも人事がただ適当に考えている訳ではありません。経営課題や経営計画から導き出された企業として求める人材へのメッセージとして人事部で考えているものです。
某金融機関ではリーマンショックの後から「一歩踏み出そう」という採用テーマを掲げていました。不景気の中でも自分たちで考えて一歩踏み出せる人物を採用したいという想いからです。
これが数年後に「世界へ一歩踏み出そう」とグローバルな視点が付け加えられました。背景には頭取がグローバル視点で考えようと言葉を発したことにこの採用テーマが考えられ、この年の採用ではTOEICの点数が重視されたということもあります。
経営計画を踏まえた『あなたの経験』の切り取り方
森永製菓の採用サイトがリニューアルされたので、森永製菓の例でいきましょう。
既存事業(菓子、冷凍食品)の強化(とはいっても伸び代に限界はありそう。。)。既存事業の利益を崩さぬまま新規事業(健康食品、海外事業)のビジネスを成長させていくということが2018年の中期経営計画(3ヶ年計画)で打ち出されています。2021年以降は「長期的且つ持続的な成長の実現」を掲げています。
(参照:https://www.morinaga.co.jp/company/ir/policy/strategy.html)
では、すでに2018年から2年が経とうとしていて足元の各事業部の売り上げはどうかというと、既存事業と健康事業は良さそうですが、海外売上高は苦戦してそうですね。
(参照:https://pdf.irpocket.com/C2201/ly8K/RgbJ/IQrZ.pdf)
採用サイトは「共に次の100年をつくろう。」というメッセージから「成長の味が、クセになる。」というテーマに変更されています。2018年の中期経営計画も後半に差し掛かり、2021年以降の「長期的且つ持続的な成長の実現」に向けて、成長を楽しめる人が欲しいということが逆算して読み取れます。
上記のようなことから、自身の成長の話を交えながら健康食品マーケットの成長に貢献できるように話を作り込んでいくのが良いのではないでしょうか。直近の森永の海外事業は良くはなさそうですが、留学などをしていた方は海外事業の成長に繋げても良いでしょう。
また過去のように0→1の話に重きを置くよりかは、先輩達との比較話を出しながら私はサークルをこのように改善→成長させてきた。というような話の方が刺さるでしょう。
最後に・・・
繰り返しになりますが、就活は『活躍理由』の言語化が大切です。会社に入りたい理由だけでは、面接官は評価できません。活躍理由を伝える為には、業界レベルでなく業務レベルまで理解する事が大切です。
さらに、経営計画を把握し「企業の成長したい方向」まで理解しておくと、採用される側と採用する側の"ズレ"を埋めることに繋がります。
就活では、相手/企業を熟知した上で、"あなた"を売り込む経験を切り取り魅せることが重要ですね。
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