医療観察制度
6つの重大な他害行為
「医療観察制度」とは医療観察法に基づいて心神喪失または心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った者の社会復帰を促進する処遇制度のことです。
重大な他害行為とは殺人、放火、強盗、傷害(致死)、強制性交、強制わいせつの6種類を指します。
心神喪失は無罪
「心神喪失」とは精神上の障害のために是非善悪を弁別できないか、また弁別してもそれによって行動することができない状態を指し、この状態が認められれば無罪となります。
心神耗弱で減刑
「心神耗弱」とは精神が衰弱して識別力が乏しくなり、自分の行為の結果についての判断能力が劣っている状態とされます。
心神耗弱状態が認められれば、刑が減軽されます。
鑑定入院
重大な他害行為を行った者は、警察から検察官に送致され起訴されます。
心神喪失等で不起訴処分になったり、裁判所に無罪と判断されると、検察官は地方裁判所に入院や通院の申立てを行います。
その決定が降りるまでの原則2か月(最長3か月)は、「鑑定入院」というかたちで鑑定入院医療機関に入院します。
鑑定入院中には、検査や診断のほか、精神科治療も行われます。
鑑定入院期間中に、社会復帰調整官が生活環境の調査を実施します。
社会復帰調整官の役割
「社会復帰調整官」は保護観察所に配置された福祉的な役割を担うコーディネーターで、医療観察対象者の退院後の生活環境の調査や調整、入院中の精神保健観察等を行い、社会復帰までの道筋をつくる支援をします。
入院によって病状が改善した場合、指定入院医療機関は裁判所に退院の申立てを行います。
裁判所は、退院が可能であると判断した場合、続けて通院処遇の決定や医療観察法の処遇終了の決定を行います。
鑑定入院~審判手続き
入院か通院か不処遇かの審判は、裁判官1名と精神保健審判員1名の合議体により、地方裁判所で行われ、精神保健参与員の意見が求められます。
「精神保健審判員」は厚生労働大臣が作成した名簿の中から選定される精神保健判定医で、事件ごとに裁判所が任命します。
審判では、裁判官と合議して医学的見地から提言を行います。
「精神保健参与員」は厚生労働大臣が作成した名簿の中から選定される精神保健福祉士等で、事件ごとに裁判所が任命します。
一定の要件を満たし「精神保健判定医等養成研修」を修了している必要があります。
審判では、精神保健福祉の視点から意見を述べます。
指定入院医療機関
審判において入院決定を受けた者には、厚生労働省大臣が指定する「指定入院医療機関」による専門的な医療が提供されます。
入院期間は1年半を標準とするが上限はありません。
その間、保護観察所に勤める社会復帰調整官によってその人の退院後の生活環境の調整が行われます。
指定通院医療機関
審判において通院決定を受けた者および退院を許可された者は、原則として3年間(延長を含めて最長5年間)保護観察所による「精神保健観察」に付され、厚生労働大臣が指定する「指定通院医療機関」による医療が提供されます。