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花京院典明のタイプを考える

はじめに

私がジョジョの奇妙な冒険という漫画を知ったのは、6部のストーンオーシャンが週刊少年ジャンプに連載されているときだったと思う。正確に言えばそれ以前からそういったタイトルの漫画があることは知っていたが、絵面のアクの強さが受け入れられず、読んではいなかった。今となってはアニメ化もされ美術館で個展も開かれるなど、すっかり一大人気コンテンツと化したが、当時はジャンプの掲載順序も後ろの方だったし、周りで読んでいる人もおらず、今ほどの知名度や人気はなかったと思う。この漫画を読み始めたきっかけは、たしか文芸ジャンキーパラダイスというサイトで大名作として紹介されており、興味が湧いたからだったと思う(10年以上ぶりにサイトを訪れたがまだ続いていてすごい)。最初は独特すぎるキャラクターデザインや台詞回し、描き込みが多く読みにくい絵についていけなかったが、「これがいいんだよこれが」となるまでそう時間はかからなかった。学校でクラスメイトに布教もした。

この漫画の3部、スターダストクルセイダースの登場人物、花京院典明についてだが、キャラクター性格診断スレではINTPとなっている。ただコメントを読むとINFJ評もある。INTPかINFJかで割れているようだ。
花京院はジョジョの中では結構好きなキャラクターで、行動原理に共感できるところも多い。先に自分の考えを述べると、花京院はINFJだと思う。本稿ではなぜ私が花京院をINFJだと思うのかの理由を述べる。

なお当然の話として、架空のキャラクターはそれが作り物である以上現実の人間と一致しない。過度に格好よく理想化されたものだったり、ストーリーの都合上作者の言いなりとなって動くシーンだってあるかもしれない。ただ、ある性質・気質を部分的に抽出してタイプを測ることはしてもいいと考えている。まあ、こんな人間本当にいるか?という目線は忘れてはいけないと思うが(例えばこの漫画だと、5部のジョルノやブチャラティはおよそ格好悪いシーンが見当たらず、現実離れしたキャラクターだと思う)。

登場からディオ戦で死亡するまで

まずこのキャラクターの最初から最後までの経緯を追ってみる。
花京院はまず承太郎の敵として現れる。キャンバスに筆を入れると同時に承太郎に攻撃が走る、操り人形を持つ、などの描写がある。近接型のパワータイプではなく、遠隔操作型の人間であることを示す演出だろう。まあこれらの小道具は承太郎戦の時にしか出てきてないが。
承太郎との戦いの中、花京院は「敗けたやつが悪なのだ」と冷徹な思想を述べているが、これはディオに肉の芽を植え付けられ操られているときの描写であるため、純粋な本人の性格とはしない。
花京院は承太郎に敗れ、承太郎から肉の芽を除去され正気を取り戻す。そして承太郎たちのディオを倒す旅に同行する。道中で次々と現れるディオの刺客と闘いながら旅を進めるが、エジプト上陸後のンドゥール戦で両目を負傷し、一時リタイアする。その後復帰、クライマックスのディオ戦で戦いを挑むが、返り討ちにあい致命傷を負う。薄れていく意識の中でディオのスタンド(超能力のようなもの)の正体を見破り、自分のスタンド能力で時計台を破壊し、ジョセフにメッセージを伝え、死亡した(ディオのスタンドは時を止めるというものである)。
物語上で描かれた花京院の行動や思考、性格から、花京院がINFJだと思うのは以下のようなところである。

  1. 仲間が原動力になっている

  2. ディオに屈した自分が許せなかった

  3. 家族に何も告げずに旅に出た

  4. 承太郎との関係性

  5. 紳士的な態度

  6. 情報を操作する戦略を取った

  7. ユーモラスなワガママさ

一つ一つ説明する。

動機付けとして「仲間」の存在が大きい

3部ではキャラクターの紹介にページが割かれているところがある。花京院の紹介を見てみる。

ここで私が着目するのは、後半の「ひかえ目だが、チームの和を保とうとする気持ちは、だれよりも強い」という部分。チーム内の空気を重んじるのはFJの性質だ。そして、そういった強い気持ち(F)を持ちながらもあまり表現しようとしないというところが特徴的だと思う。ExFxだったら率直かつオーバーに表現して逆に隠すのが困難だろう、同じ内向型でもIxFPあたりはよく表現しているような気がする。ISFJは表面上の大人しさと内心の感情の強さのギャップがNほどあまりないかと思われる。
となるとこの性質はINFJのものとなるのだが、早計のような気もする。まあ控えめに(?)Iの性質としてここでは留めておく。

このキャラクターの描写には、自責を伴った内省(モノローグ)が描かれているという特徴がある。他のキャラクターにはない。そのシーンとはダービー弟戦とディオ戦の2つある。その後者の方でも、仲間の存在が重要となっていることが見て取れる。

エジプトの街中を飛び回るダイナミックなシーンの中、内心が吐露されているこのコマはとても静寂な時間が流れているように見える。動と静のコントラストがあるこのシーンは、印象に残った人も多いんじゃないだろうか。このキャラクターの本質がここにあると考えると、ここが物語中のハイライトのようにも思える。
「アブドゥルやイギーのことを考えると背中に鳥肌が立つのはなぜだろう」
この時点ではアブドゥルもイギーも死亡している。"背中に鳥肌が立つ"というのはどういうことか。多分怒りとか悲しみとか、一言では言い表せない何かが湧いて出てくるという事だと思う。抽象的に言えば「情動」だろう。「(スタンドが)見えない人間と真に気持ちが通い合うはずがない」と考えていた時の花京院にはきっとなかった感覚だろう。仲間が強いモチベーションになっているように思える。

もう一つ仲間思いのエピソードを挙げるとすると、J・ガイル&ホルホース戦でのポルナレフに対しての行動だ。ここでポルナレフは自分の過失によってアブドゥルを死なせてしまう。アブドゥルの死亡後、ポルナレフは相討ちをしてでも敵を倒そうと、自分の身代わりとなったアブドゥルの死を無駄にするかのような行動をとるが、窮地を花京院に助けられた後、アブドゥルの気持ちを理解し、生きるために戦うと誓う。
ここで花京院はポルナレフに肘鉄をくらわせるという過激な行動をとる。

元々アブドゥルはポルナレフに単独行動をしないよう忠告していたが、ポルナレフはそれを無視した。結果こうなってしまった。最後のコマを見ると、花京院は泣いている。これは仲間を失ってしまった悲しみによるものだろう。自分本位の勝手な行動によって、仲間を死なせてしまったポルナレフが許せなかったのだ(まあアブドゥルは実は死んでないんだが)。
ちなみにだがディオの手下であるダービー弟は、花京院を「その神経質そうな外見からは想像できないほどとても大胆な性格を持ったやつ」と評している。この気質はポルナレフを殴ったエピソードにも表れているだろう。現実のINFJも、普段は平静だが意外なところで爆発する、みたいなところはあるような気がする。

みじめな自分が許せない誇り高さ

花京院は家族とエジプトに旅行しているときにディオに出会い、肉の芽を植え付けられた。この時花京院は、ディオの圧倒的なカリスマに屈してしまい、強い屈辱を味わう。

「子供に言い聞かせるように」とある。ディオ目線でも花京院が明らかに弱い方の人間だとわかったんだろう。「花京院"くん"」と呼んでいる。
この自罰的な内省はディオ戦でも描かれている。相当ショックな出来事だったんだろう。

そういう弱い自分を呪い、克服するために花京院は承太郎たちの旅に同行した。「(みじめである)自分が許せない」というのは誇り高い人間が抱く感覚だと思う。これはNJの性質だと自分は考えている。NJはどこか貴族的なところがあると私は見ている。

ちなみにだが、アブドゥルも花京院同様、ディオに圧倒されて逃げ出してしまったが、花京院ほど強い自責にはかられておらず、反応に差がある。

また、このエピソードは心理的な成長と見ることもできる。自己成長と言うとINFPが思い浮かぶが、花京院の場合「克己」と表現した方が的確だろう。あんなに汗をダラダラ流しながら「二度と!…負けるものか…」なんて自分に鞭を打つようなマネはINFPはしない感じがする。IPはどこまでいっても「自分は自分」であって、「自分を乗り越える」という発想にはならないような気がするが、どうか。

また、このような自罰・自責の傾向が強いのはIJの性質だと私は考えている。

また、この誇り高いというのは「プライドが高い」という評をできるだけフラットにした表現である。現実においてこのプライドが高いという評は、必ずしも肯定的なものではないということを付け加えておく。

日常より大義を優先した

上に挙げた花京院の紹介ページでは「このエジプトへの旅行は、実は家出のような形で日本を離れているため、家族の周りでは大騒ぎのはずである」とある。もしかしたら敵にやられて死んでしまうかもしれない旅(実際に死んでしまった)だというのに、花京院は家族に何も告げていない(ここも神経質さと大胆さのギャップと言えるかもしれない)。なぜ何も話さなかったというと、花京院は日常的な事柄よりも大きな目的を優先する人間だからではないだろうか。NJは「大義を掲げる」という性質がある。
エジプトに行きディオを倒すという大きな目的の前で、家族への連絡など些細なことだと、存在が霞んでしまったのではないだろうか…と思う。まあこれは自分の想像が過ぎるかもしれない。元から花京院は家族とも打ち解けてなかったし、そこも理由としてはあるだろう。

承太郎(ISTP)との静かな友情

花京院と承太郎との間には静かな友情ともいうべき関係が築かれているのではないか、と私は思う。実際には、花京院と承太郎がタッグを組んだのは少なく、ホイールオブフォーチュン戦で谷底から這い上がるときと、ラバーズ戦でのセリフくらいか(ラバーズ戦は物理的に協力してるわけではないが)。

そう協力的なシーンが多いという訳でもないのに、なぜ友情があると言えるのかというと、あるたった一コマの演出である。それは、花京院がンドゥールから負傷を負いリタイアし、手術を終えてチームに復帰した際の、承太郎とのやり取りだ。

承太郎と握手をしている花京院、承太郎は沈黙している。小さなコマだが、私はここでこの二人は確実に心が通い合っていると思った。

承太郎にもキャラクター紹介のページがあるので見てみる。

承太郎がISTPであることに異論はあまりないと思う。学ラン姿の不良など令和となった今では完全なフィクションだし、このキャラクターも少年誌的な主人公像として格好よくデフォルメされたものであることは否めないが、一匹狼、アウトロー体質、よい意味で深く考えないシンプルなマインドはISTPのそれだろう。

私(INFJ)は実生活でもtwitter上でも、ISTPの人に嫌悪感を覚えたことはほとんどない。クラフトマンシップは率直に信頼できるし、人に干渉しないのも小心者で人目を気にするINFJ的にはありがたい(ESTPだと衝突しがちだ)。また、ISTPから見たINFJもそう悪い印象ではないようだ。

なぜISTPとINFJの相性がいいのか、自分なりに考えてみると、おそらくISTPの行動原理として、その時起こっているトラブルを解決したいというのがあると思うのだが、それはシンプルに解決したいというだけで、別に他人から感謝されたいとか社会に貢献したいとか人から良く思われたいとか思っているわけではない。ところが、トラブルを解決することによって結果的に他人のためになっているようにINFJの眼には映り、好感度が高い。で、INFJはあまりそれを直接的に表現しようとはしないのだが、ISTPはたとえ感謝の言葉であっても周りから色々言われるのは好ましくない(干渉されたくない)。だからINFJが黙っているのはISTP的には都合がよく、承太郎が言うところの「ウットーしい」やつにならない。こんなところだろうか。

ISTPもINFJも、あまり多くを語るタイプではないのだ。

女性を特別視する

少年誌なので恋愛を扱っているシーンはほとんどないのだが、花京院の女性に対する態度が垣間見えるのはストーリー上2か所ある。一つは、エジプトに旅立つ前、承太郎の母親ホリィに対する台詞。もう一つは、タワーオブグレー戦で飛行機の墜落中に、承太郎がはねっ返した女性とのやり取り。

女だろうが一喝する硬派一本みたいな承太郎とは対照的に、花京院は女性には紳士的に優しく接している。この「紳士的」な態度は他のキャラクターには見られない気質だ。ナンパをしていたポルナレフは「遊び」という感じがするが、花京院は生真面目な感じがする(まあキザったらしいとも言えるが)。「守ってあげたい」も「女性を邪険に扱うなんて許せん」というセリフも、女性を特別な存在として認識しているから出てくるものだ。
個人的所感だが、NFJは異性ないし恋愛を理想化する傾向があると思う。まあ「守ってあげたい」はENFJのセリフのような気がするが。実際のINFJ男はテストステロン値低めのナヨっとした文化系もやしっ子だろう。有名人で言えば小沢健二、羽生結弦、藤井聡太みたいな感じか。守る側ではなく守られる側の人間だと思う。これは男性であってもである。

チームを裏から調整する

ポルナレフ vs カメオ戦で、ポルナレフは死んだはずのアブドゥルが生きていることを知る。驚きと喜びを隠せないポルナレフは、アブドゥルの生存を意気揚々と仲間に報告するが、承太郎、ジョセフ、花京院はスルーする。実は3人ともアブドゥルが生きていることは知っていて、ポルナレフだけに伝えられていなかったのだ。ディオ側は完全にアブドゥルを仕留めたと思っており、そのままにしておけば承太郎側からしてみたら嬉しい誤算だ。ただポルナレフは口が軽いから、知らせない方がいい。そう判断しての事だった。そして、これは今回再読して気付いたことだが、これを提案したのは花京院だったのである。

敵を騙すにはまず味方から…と言うが、花京院はそれをやってのけた。こういう情報を操作してチームを裏から調整するのはNJが得意とする戦略のように思う。

ワガママさがギャグになっている

エジプト上陸後、承太郎たちはンドゥールの水のスタンドによる襲来を受ける。敵のスタンドが潜んでいると思われる水筒が砂漠上に置かれている状況で、花京院はポルナレフに「水筒を攻撃しろ」と命令する。すでに敵のスタンドでスピードワゴン財団のクルーが負傷している。怖気づくポルナレフは、中遠距離型のスタンド能力を持つ花京院がやればいいのではないのか、と言うのだが、花京院は「ぼくだっていやだ!」と真顔で言ってのける。これには思わずポルナレフもツッコむ。

自分が嫌なものを人にやらせる、フツーに考えれば自分勝手とか、人の気持ちがわからない人間などと見られるだろう。ところがこのシーンは、ポルナレフのツッコミ込みで何だかギャグシーンみたいになっていて、花京院のユーモラスな一面が表出しているように思う。おそらく花京院が嫌がっているのは本心だろう。が、これまで述べたように、花京院はチームや他人を重んじる思慮深い人間であって、決して配慮を怠るような人物ではない。そういう前評価がある人間がワガママに振舞っているという構造におかしみが生じているのだと思う。他のタイプにはなかなかできない芸なのではないか。

ちなみに花京院がポルナレフに本心を言えているのは、既にポルナレフと充分な信頼関係が築けているからである。何しろ顔面に肘鉄をぶちこんで仲直りし、共闘して敵を倒した仲だ。現実でも、INFJがこんな風にワガママに振舞っているのを観察できるのであれば、きっとあなたには心を開いているのだと思う。

まとめ

  1. 仲間の存在が動機付けとして重要となっている(FJ)

  2. 強い気持ちを持ちながらもあまり表現しようとしない(I)

  3. 誇り高い(NJ)

  4. 自罰・自責の傾向が強い(IJ)

  5. 承太郎ISTPと相性が良い(INFJ)

  6. 大義を前に日常の連絡をおろそかにした(NJ)

  7. あえて嘘をついてチームを裏から調整した(NJ)

  8. 女性を特別視する(NFJ男)

以上の理由から、私は花京院典明をINFJと結論付けます。

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