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絵は描いてから感じ取る

音楽は、時間芸術なので、自分が出した音を聴いてから意味付けしていては遅れる。今出した音はどんどん後ろに置いて行く。共演している他の演奏家と同じタイムを共有しながらどんどん進む。

でも、絵は描いてから、なるほどそうかと感じ取る。感じ取ったものを発展させて次に何を加えるか、どう展開させるかをじっくり考える。紙面に世界を足し算して行く。そして、いつ終わっても良いのだ。

時間芸術は、とても特殊なものだ。他にはダンスと芝居。ひょっとしてスポーツも。
パフォーマーはもちろん、観衆も経時的同期を愉しむ。
時間の共有をする際に、音楽ほど制限の多い鑑賞経験は少ない。始まりと終わり、テンポと拍子、音域や効果。
たくさんの抽象概念を共有しながら、感動や興奮を自家増殖させる。

音楽体験という何とも不思議で複雑な愉悦。なるほど、こう分析してみると、何故難しいとされる音楽が存在してしまうのか良くわかる。

クラシックにしてもジャズにしても、演奏家がやろうとしている事を解るというのは、リスナーにとっては突拍子もなく難しい事なのだ。

絵は、描きながら考えられる。その経過自体が私にとっては癒しとなる。

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