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母の教え№22  嫁と姑たちの戦い(4)       4 養  子


 8歳2か月と6歳7か月・3歳3か月の男の子3人を残して、父が戦病死したので、当然、親戚や周囲の人々から、〝子供を養子に出したら〟という話が起きてきた。
 母が元気を取り戻し、村葬が終わって少し落ちつくと、母の実父からも、父方のごく近しい子供のいない金持ちの親戚に、「せめて次兄だけでも、養子に出したら……」という話が持ち上がってきた。
 姑達にも、長兄の後取り息子さえ残れば、後の子供はどうでも良いという気持ちがあり、「病弱な嫁はもういらん」という態度がありありと見え隠れしていた。
 こんな時、母は、『どんなに辛くとも、ここに残って、母ちゃんがお前らの面倒を見なかったら、三人の子供がばらばらにされる。意地でも三人の子供は、離すもんか!』と改めて決意を新たにしたそうである。
 『いくら貧乏しても、自分のお腹を痛めて生んだ子は、三人一緒に自分の手元で育てたい』という母の信念を実父に話すと……、
 『そうか、お前も苦労するのう…』と納得してくれたとか。
 また、母は、昔、実父から次のような話を聞いたことがあった……。
 『お金持ちの人が、男の子を養子にもらって、“後取り息子だ! やれ可愛い……”と言って、乳母日傘で大切に育てていた。 
 その子の2歳のお誕生日に、おもちゃの刀を買ってやったら、“殺してやろか!” と言って、その刀を振りかざして、育ての親に向って行ったらしい……。そうしたら、育ての親達が、“2歳そこそこで、早くも親を殺す”と言ってかかって来た。末恐ろしい子供だ!と言って、すぐに実母のところに帰したそうだ』
 もしも、『自分がお腹を痛めて生んだ子なら、“殺してやろか!” と言われようが、実際に刀で叩かれようが、“まあ可愛い。こんな知恵が早くも付いたのか!” と言って喜び、許されたものを……。いくら大切に育ててもらったとしても、育てるだけの親とお腹を痛めて生んだ実の親とでは、子供を思う基本が違う』と実母の子供に対する愛情の深さを話してくれた。


 その後何度も、方々から次兄を養子に欲しいという話もあったが、全く手放す気持ちはなかったそうだ。

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