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繊細さん買い物にクヨクヨする

繊細である私は、些細な事で毎日クヨクヨしている。
…と書きながらふと「クヨクヨ」って変な言葉だなと気になったので、調べてみた。

すると「後悔する意味の、悔い悔い(クイクイ)」と「火が消えてるのにくすぶっている様子の、燻い燻い(クイクイ)」を「考えても仕方が無いことなのに、いつまでも思い悩んでいる人の様子」に結びつけ【クヨクヨ】と名付けたらしい(諸説あり)。

…昔の人の言葉のセンスに脱帽だ。
肩を落とし、うつむき加減にうなだれている人の姿を表すには【クヨクヨ】というネーミング以外は考えられないほど絶妙である。
日本語の成り立ちって素晴らしいなぁと感心しつつ、引き続き私のクヨクヨ癖について話を進めていこう。

数年前、職場で雑談をしていた時に上司が「ういろうが大好物だが、なかなか手に入らない」と残念そうに話していた。
私や同僚達は「確かに、ういろうってあまり見かけないですね~」とか「私がもし名古屋に旅行に行った時は、お土産に買ってきますよアハハ」などと談笑し、お気軽な会話はそこで終わっていた。

それから数日後の週末、夫とドライブをした際、とある道の駅に立ち寄った時に偶然、箱入りのういろうを見かけたのだ。
私はあまりにタイムリーな出会いに感動し(これ、あの上司にあげたら喜ぶだろうな)と反射的に手に取ったものの、三つ入りで600円という価格。

私は(600円か…自分で食べるならまだしも、ちょっとしたお土産としては高いな)と思い、バラ売り商品のういろうを探したが見当たらず、私は箱を手にしたまま暫く悩んだ。

そのういろうは道の駅近辺の畑で取れた豆が使われており、体に優しく美味しそうな商品であった。
しかも三つのういろうは「白豆・小豆・黒豆」と、1つ1つ違う豆が使われており、それぞれの味の特徴が箱に書いてある。
そんなにういろうが好きではない私ですら、三種類の味を食べ比べてみたいと思うほど魅力的な商品だ。

だが、見れば見るほど「この前、ういろうがお好きだとおっしゃってましたよね」と上司にポンと渡せるほど気軽な価格ではない。
しかも彼は私の直属の上司ではないので、日頃そこまで接点があるわけでもないのだ。
こんなものを突然渡したら逆に気を遣わせてしまうぞ…と思い、売り場でしばし悩んだ結果(そうだ。三個入りのうちの一つを上司にあげて、残り二つは私と夫で食べれば良いわ)と思いつき、私は購入を決めた。

その後帰宅し、ういろうをバラすために箱を開けようとした瞬間、私はふと「賞味期限の記載問題」に気付いた。

箱入りのお菓子は、箱の表面に賞味期限が書いてあっても、中身の個包装に記載が無い事も多い。
その場合、私が付箋に「賞味期限は⚪月⚪日です」などとメモを貼って渡さなければ、上司は安心して口に出来ないであろう。
一つ200円位のういろうなのに、私の汚い字で書いた付箋を貼ったら単価80円位に思われそうで、なんか嫌だ。

それに、このういろうが入っている「箱」がまた、めちゃくちゃお洒落でセンスが良いのだ。
ういろうにどんな豆が使われていて、職人がどのようなこだわりを持って作ったのかなど全ての説明は箱に書いてあり(これは美味しそう!)と、思わず手に取りたくなったのは、箱のデザインにも惹かれたからだ。
要は「箱とセット」で、ういろうを味わい楽しんでもらいたいという生産者の熱意が感じられるような素晴らしい商品なのである。

ただ、どう考えても箱ごと上司に渡すのは豪華すぎなのだ…。
上司に(急にこんな立派なお土産を渡してくるなんて、コイツは何を企んでいるんだ)と不安な気持ちにさせるのは本意ではないし、万が一お返しなどをされると逆に私も困ってしまう。

更には、私が立派なういろうを上司に渡した事が同僚達に知れ渡ったら(繊細ちゃんったら、あの上司に点数稼ぎしてるのかしら)(もしかして、あの上司の事が好きなんじゃない?)等と邪推されてしまうかもしれない。

そうなると、このういろうのせいで私は今までコツコツと築き上げてきた周囲からの信頼を、一気に無くしてしまうかもしれないのだ。
私は、箱を片手に(ああ…!なぜ私は、ここまで厄介な物を買ってしまったのだろう…!)と猛烈に後悔した。

ここで念のため断言しておくが、ういろうは一ミリも悪くない。全ては、こんな事でクヨクヨしてしまう私が100%悪いのである。

結果的に私は、上司にういろうをあげるのはやめようと決意した。
その代わり、職場の同僚と山分けすれば良いかと思ったのだが私の職場には5人の女性達がおり、ういろうが足りないのでその案も却下だ。

いっそのこと、夫とういろうを全て食べてしまおうとも思ったが、物覚えが良い夫は「あれ?これ、道の駅でお土産用に買った3つ入りのやつだよね?全部食べちゃって大丈夫なの?」と聞いてくるに違いない。
だが私は、こんな下らないクヨクヨ話を夫に1から10まで説明する事すら恥ずかしかったのである。

結果的に、ういろうは私の両親のお腹におさまった。
「わあ!こんなに立派なお菓子買ってきてくれてありがとう!」と両親が喜んでいる姿に若干の申し訳なさを感じつつ、親孝行できて良かったではないか…とも思えたが、それよりも自分のクヨクヨ度合いの強さに、改めて疲弊した出来事であった。

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