ボウイングを付ける作業の話
昨日は弓順のアップとダウンの記号の由来の記事を書きました。
強拍を意味するn、弱拍を意味するv
ココまでは実は伏線です。
一人でソロで弾く場合のボウイングは正直
奏者の好き勝手で構わないと思うのですが
合奏の場合はそうもいきません。
まずパート内のメンバーが揃っていないと見た目も変ですし
アクセント等のニュアンスも揃わない事になってしまいます。
更にパート間でも同じ符割りでハモっているなら弓は揃えたいですよね。
という訳で各パートのトップ同士はボウイング付けという作業を行います。
トップ同士で決めたボウイングを各パート内のメンバーに伝えていきます。
実はこの作業には非常に苦労が多いのです。
ボウイングを付ける時の基本的な考え方は記号の由来からもわかるように
強拍がダウン、弱拍がアップです。
4/4拍子であれば1拍目ダウン、2拍目アップ、3拍目ダウン、4拍目アップ
3/4拍子の場合は曲調によってはなので悩む所ですが
1拍目ダウン、2拍目アップ、3拍目アップがワルツ感が出ると思います。
基本はこの考え方であとはスラー以外は交互になるのですが
物事には常に例外があります。
アウフタクトは1拍目の前の弱拍なのでアップで入る事になりますが
タイで1拍目と繋がっている場合はダウンですかね。
これはシンコペーションで多いパターンですね。
シンコペの小節跨ぎはダウンがやりやすいです。
sfz(スフォルツァンド)やアクセントが付いている場合は
弱拍でもダウンにしたりします。
曲のラストに3~4重音でジャン!ジャン!ジャン!の連発がある場合は
全部ダウンにしたりしますね。
曲の冒頭とかでppとかのロングトーンで静かにスーッと入る場合
強拍でもアップにしたりします。
ようはダウンの方が重力アシストがあるので強い音を出しやすいですし
アップのほうは重力ブレーキが掛かるので弱い音を出しやすい訳です。
長いスラーでフレーズ繋がっている時や超ロングトーンの場合
弓が足らなくなるのでコッソリ返しを入れたりしますが
音の切れ目ができない工夫として返すタイミングを
パート内で敢えてズラしたりもします。
16分音符等の速い刻みや駆け上がり等は強拍弱拍関係なく
ダウンアップの繰り返しでないとなかなか弾けません。
こんな感じで全ての前提に則って付けたいところではあるのですが
弾きにくい!っていう場所がどうしても出てきてしまいます。
ココを音楽性を優先してゴリ押すか弾き易さを優先して妥協するか
ボウイング付けをする立場としては非常に悩みます。
弾きにくい!というクレームがメンバーからは容赦なく上がってきます。
さらに苦労が多いのはヴィオラのボウイング付けです。
ヴィオラの役割はヴァイオリン寄りとチェロ寄りの両方を
行ったり来たりする訳です。
ヴァイオリンに合わせて弓を付けるとチェロと交差してしまう
チェロに合わせるとヴァイオリンと交差してしまう
両方との交差を最小限に妥協点を探ってボウイングを付けると
パート内から弾きにくいとクレームが上がってしまう
更にチェロの弓はヴァイオリン、ヴィオラの弓より短いので
かなり返しが多くなります。
ヴィオラは板挟みとなり全方位味方が居ない状況となります。
ヴィオラのトップはボウイング付け作業においてかなり高ストレスです。
まあココまで書いておいて最後に元も子もない事を書きますけど
私個人的には奏者たるものどんなボウイングであろうと
弾けるように練習してくればよいだけの事で
アップでもアクセントは付けられるべきですし
ダウンでも弱くて優しい音は出せるべきと思ってます。
ではアナタはどのような考え方でボウイングを付けますか?と聞かれたら
私は迷わずこう答えます。見映えです!
ビジュアル的に映えるボウイングって有るんですよ
それがパート内、パート間でビシっと揃ってるとカッコ良いんですよ。
人前で演奏するなら見栄えは大事。
多少の弾きにくさや表現のしづらさは
練習で解消出来る範囲なんじゃないかな?と思ってます。
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