「CB上げ」とは?時代を切り開くキケ・セティエンの逆転の新発想【新ビルドアップ戦術】[2018-19シーズン]
数年前に運営していたブログの記事を振り返ろう企画ということで、まず第1弾はCB上げの記事を取り上げようと思います。マンチェスターシティがCLを初優勝したシーズンで多用していた戦術に近いですが、先に発明していたのはベティス時代のキケ・セティエンでした。
以下、その記事です!
シーズン序盤は苦しんだベティスだったが徐々に調子を上げ、15節を終えた時点で7位まで順位を上げた。その要因はキケ・セティエンの緻密な戦術だ。そこで特に緻密に設計されたビルドアップ戦術にスポットを当てて分析していこう。参考にする試合としてベティス対ラージョの試合の動画を用いる。
ビルドアップ戦術で有名なものだと、CB間にアンカーが落ちて3バックを形成する「アンカー落ち」や、IHがCB-SB間に落ちる「IH落ち」がある。これらは知っている人も多いだろう。だが、これから分析するベティスのビルドアップ戦術は全く新しいもの。これから普及していく可能性の秘めている新発想の戦術は必読だ。
・基本システム【3-1-4-2】
まずベティスの基本システムに簡単に触れる。キケ・セティエン監督は主に3-1-4-2をベースに選手を配置し攻撃的な戦術を採用。グアルディオラやサッリのようなボールを保持することで守備をする思考の監督のもと、選手もその考えを理解してプレーしている。また徐々に調子を上げてきたことは監督の戦術が新加入選手にも浸透してきた証拠でもあるだろう。
今回参考にする試合(ラージョ戦)のスターティングメンバーは上図のような感じだ。
シーズン序盤に更新した乾がベティスで求められる役割に迫った記事では、主にIHの役割を詳しく分析している。
・CB上げとは?
この動きは自陣からのビルドアップ時にパスコースを確保し敵のプレスを外すプレーである。上図のように3バックの真ん中のバルトラがアンカー脇まで上がり、通常の3バック+1アンカーから2バック+2アンカーのに変形するのだ。
ここで、「CB上げ」した状態ともともとの状態でどのような違いが生じるのか比較する。
★「CB上げ」で2バック+2アンカーのビルドアップ
左CBに対して3つのパスコースが生まれていることがわかる。
★もともとの3バック+1アンカーのビルドアップ
WBフィルポへのパスコースは確保されていることはわかるが、CBマンディとCBバルトラがボールを保持しているシドネイに対して直線上に並び被っている。これにより生み出せるパスコースを1つ失っていることがわかるだろう。
ただ、「CB上げ」によるビルドアップの方がパスコースが多く確保されることは事実ではあるが、単調になっては意味が無い。試合中には時間帯によって上記の2つのシステムを使い分けているので、キケ・セティエン監督としてはビルドアップのシステムを2つ用意しておくことで敵のプレスを絞らせないことが大きな意味を持っているのだろう。
・オプション
・自陣深くまでプレスを受けた場合
サッカークラスタ界隈で有名な「観音開き」。両端のCBが大きく開き、その間にGKパウロペス。中央にCBバルトラ、ANCカルバーリョに加えてIHの片方が下りてくる。ボールを失うと失点に直結する位置では上図の通りバランスよく選手が配置されることがわかる。
・敵陣までボールを運んだ場合
敵陣近くまでボールを運ぶとベティスは3バック+1アンカーで攻撃を組み立てる。だが、この試合は敵が4-3-1-2で噛み合わせ上、ANCカルバーリョがマンマークで消されてしまっていた。
それの対策としてカルバーリョが最終ラインに下りる。この動きで敵の守備陣形のバランスが崩れ、右サイドにスペースを生み出せていたのだ。
・終わりに
今回ベティスのビルドアップに焦点を当てて分析してきた。新たなビルドアップ戦術「CB上げ」も取り上げたが、あくまで敵のプレスを絞らせないことが重要なことが前提。様々なオプションをチームとして持っていることが重要であることを理解してほしい。
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