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第62回: MacはThink Differentしているか?(中編)

Macの起動音でThink Differentを表現するアップル

さて、ほんの数秒のサウンドを数億〜十数億人の世界中の人々に何十年にもわたって浸透させ続けている最大の成功例、Macの起動音について解説を続けます。


米国では1980-90年代から音=周波数がヒトの心理・行動に与える影響について基礎研究が続いていますので、米企業ではエヴィデンスに基づく科学的なサウンド構築が日本に先行して進んでいます。

そのような背景の中、アップルは以下の要素を織り込んでMacの起動音を制作したことが推測されます。もう一度聞いてみましょう。

◯ F#(ファ#)の持つ素養として平穏・ピースフルであると同時に未来志向の明るさが挙げられる
◯ F#(Triad) 、すなわち嬰ヘ長調の長三和音(ファ# -ラ#-ド#)の和音を使うことで創造的であることを表現
◯ 黒鍵が和音のボトムになることでそもそも和音に緊張感をもたらしている
◯ 他のキーのTriad(長3和音)には白鍵が含まれてしまうが、F# Triad(長3和音)のみすべてが黒鍵で構成される和音(ファ# +ラ#+ド#)である。
◯全て黒鍵で構成される長3和音を「あえて意図的に」選択することで「他とは違う、オリジナリティや独自性、即ちThink Differentな精神」を表現し、且つ明るい未来志向の中にも緊張感をもたらす

例えば、これがF#MajorではなくA♭のキーが選択された場合、A♭(ラ♭)は「過去を遡る要素」が含まれますので、それを聞いた人が「未来志向・創造的」といった要素を感じることは難しかったであろうと思われます。

このサウンドをいったい何人の人が聞いたのだろうか?タッチポイントで考える。

このように科学的に構築され、アップルの企業精神を正しく発信しているサウンドは一体何人のお客様に聞かれたと考えることができるでしょうか?

タッチポイントで考えてみましょう。1台のMacを一人が使っているのだったら、1タッチポイント。学校や企業などのようにMacを貸し出して1台のMacをn人で使っている場合、1台のMac×nタッチポイントと考えられますが、ややこしくなりますのでここは簡易的に1台=1タッチポイントと想定しましょう。

さて、1台のMac=1タッチポイントであったとしても、2023年の1年だけでも2200万台のMacが販売されたとの統計もあります。また同統計によると2020年から2023年の4年だけの累計でも約9300万台が販売されています(*)。この4年間に出荷されたMac1台あたり一人の人にしか使われなかったと仮定しても、9300万人もの人へのタッチポイントがあったと推測されます。

当該起動音を搭載したMacはこの4年以外にも20年以上販売されている模様ですから、累計販売台数は数億~十数億にも上ると思われます。つまり、アップル社はこの起動音を数億人~十数億の人に聞かせ、音を通じてThink Differentの精神をお客様の心に植え付け続けてきた、というわけです。

感覚的刷り込みとの違いはエヴィデンスと打率

日本では今も続く選挙カーの連呼、古くはパチンコ屋さんのマイクパフォーマンス、そして店舗や各種CMでの高デシベルでの社名や商品連呼。それらの音やサウンドは科学に基づいているのでしょうか?連呼すれば覚えてもらえる、振り向いてもらえる、刷り込んでいける・・・ そういった感覚で音やサウンドが構築されてはいないでしょうか?

エヴィデンスに基づく科学的に構築された音やサウンドの優位性

科学的に構築された音やサウンドはエヴィデンスがあるので、経験や感覚に基づいて作られた音やサウンドよりも効果の偏差値が高くなります。つまり、お客様の心に触れロイヤルティを醸成する「打率があがる。」というわけです。

刷り込み方式で覚えさせる記憶だけのロイヤルティとは違うのです。

さて、ここまでアップルの成功物語をお話いたしました。そこで気になるのがライバルのあの会社。

次回、「翻って、マイクロソフト。」をお送りいたしましょう。

引用 Apple Statistics (2024)

https://www.businessofapps.com/data/apple-statistics/

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