第57回:クロスモーダルのこれから
前回までの記事では音と味覚の作用についてお話しをして参りました。
さて、それでは科学的なクロスモーダルを利用した食品などはすでに市場にどの程度あるのでしょうか。
例えば、機内食をより美味しく召し上がっていただくために、工夫をされている航空会社があります。飛行機の中のホワイトノイズと高デシベルの環境下では甘味の感じ方が鈍くなり、うま味を感じやすくなります。ですので、りんごジュースよりトマトジュースの方がおいしく感じやすくなりますね。
また、Background Noiseというものがあります。これはBGNと省略されて呼ばれる用語ですが、文字通り「バックグラウンドのノイズ」のことで、高いBGNレベルのホワイトノイズは、甘味の食感を抑え、うま味の感覚を高め、食感の「パリパリ感」が向上しますので、食感の変化が起こり、ポテトチップやナッツなどのパリパリ音が増して感じられます。ですから、飛行機の機内のスナックがあられのようなおせんべいだったり、ナッツであったりするのはとても理にかなっています。
紅茶をお出しする場合でしたら、コントラバスのような低周波サウンドを聞きながら飲むと少し苦みのあるダークフレーバーに感じますし、フルートのような高周波サウンドと共にお出しすると少しまろやかなマイルドフレーバーに感じることができます。
チョコレートやコーヒーの場合ですと、前回記事のエスプレッソ同様、低音ではより苦く、高温ではより甘いフレーバーに感じることができるのがわかっています。
航空会社やホテルのラウンジなどの、「味によりプレミア感を出す」ためにクロスモーダルを利用する事例は、国外を見ればすでに多数実績があります。
一方で、病院、特別老人介護施設や特別支援学校など、味覚や触覚を工夫することで、より快適に楽しく食事を楽しみQoLを向上させる・・ こういった分野にもクロスモーダルによる音と味覚作用の応用が期待されています。
それでは次回からはまた、ちょっと耳寄りな音声広告、記憶に残る企業のソニック・ロゴの解説をして参ります。お楽しみに!