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第43回:世界ランキング1位のソニックロゴ、その秘密を科学的に分析しよう(前編)

音声広告の分析を手掛ける英国の機関が発行したソニック・ロゴの世界ランキングで1位となったアメリカの大手保険会社ファーマーズ・インシュランス社*。今日はその「世界一位のソニック・ロゴ」を科学的に分析してみましょう。

*出典:2021年度Audio Logo Index(ソニック・ロゴのグローバル年間ランキング)より

さて、百聞は「一聞」に如かずですから、まずはファーマーズ社のソニック・ロゴを聞いてみましょう。

心理的効果の検証

とにもかくにも、抜群のプライミング効果。

プライミング効果とは、予め受けた刺激や記憶があり後に受けた刺激で無意識のうちに行動が促進・変容することを指します。例えば、ワインショップでフランス風のBGMが再生された日はフランスワインの売り上げが伸びる等の事例などもありますね。

ファーマーズ社のソニック・ロゴについては、メロディが始まった瞬間から社名の由来と推測される「Farmers=農業生産者」を想起させます。

そして、ソニックロゴが終るまでに力強いFarmers=農業生産者がサポートしてくれる感じを植え付け、最後のあたかも力強い楽隊と共に足踏みをするようなフォーリーサウンド(擬態音)である「♪ bum(ド)-ba(ド)-dum(ソ)-bum(ソ)-bum(ソ)-bum(シ)-bum(ド)」で決定的に力強さ、サポート感、頼りがいのある屈強な感じを記憶の中に受け付けることに成功しています。CMを聞き終わった直後のみならず、数時間、数日後もメロディと社名が記憶に残る秀逸で科学的な構成と言えるでしょう。

覚えやすさと記憶への残りやすさはどこから?

音楽理論や心理学を考慮した科学的アプローチに加え、社名を含めたサウンドニーモニック機能(音の覚えやすさ、記憶への残りやすさ)を十分に発揮し、ファーマーズ社の社名を全面に押し出した力強い意志を感じますね。相当に確信的な意図をもって構築されたソニック・ロゴと、ファーマーズ社の創業理念や企業の歴史、対象とする顧客、商品構成などを鑑みるに、ファーマーズ社には揺らぎないソニックアンセムが存在することを示唆しており、当然の帰結として本ソニック・ロゴはファーマーズ社の企業アンセムを十二分に体現することとなったと言えるでしょう。

一見破天荒で能天気に聞こえるソニック・ロゴも実は・・?

このランキングが2021年度の格付けであることも注目ポイント。2021年度の格付けは2020年度の音声広告を参照しています。そして、2020年と言えば、コロナ禍の始まった年でした。都市はロックダウンし、人々は家にこもり、悲しいニュースも多かった。社会が明るかったとは決して言えない年。そんな2020年に本ソニック・ロゴの破天荒な明るさが好感を持って迎えられた、と言えるでしょう。

人の感情の共感には二つあると言われています。

悲しいときに同じ感情をもって寄り添う共感と、悲しいときに別の感情を示してくれる共感。ファーマーズは人々に明るい共感を示したのです。ソニックロゴも社会情勢、季節感、時代に応じてブラッシュアップすべき好例となりました。

底抜けに明るいけれど、都会的でスタイリッシュ・・とは少し違う。けれども、不思議と一度聴いたら忘れられない。気が付いたら口ずさんで何なら社名もばっちり一緒に覚えてしまう・・。そんなファーマーズ社のソニック・ロゴ。今回は心理的効果を中心にお話をしました。次回音楽的検証とオーラル表現の分析をしてみましょう。お楽しみに!


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