第14回:居心地の良いレストランってどんなだろう・・
前回までの投稿ではソニック・アーキテクトの空間の音環境づくりでお店の売り上げアップに貢献できることや、酒屋さんでバロック音楽をBGMで流したら購入単価が上がったという事例をご紹介しました。では小売店ではなくレストランではどうでしょうか?
酒屋さんで売り上げがあがったから、同じようにレストランでもバロック音楽をBGMで流しましょうか?
しかも長居して頂けるように、スローテンポのバロック音楽・・・
レストランでもバロック音楽を流せば滞在時間が長くなって、より高価な食事や飲み物が注文されるのでしょうか?
もちろん、スローテンポのBGMにした方がお客様がレストランに滞在する時間は長くなります。でも、我々、残念ながらローマ貴族ではありません。レストランに滞在する時間が長くなったとて胃袋に入るお食事の量には限りがありますから、滞在時間に比例してお食事代の売り上げが上がるわけではないのです。
が。
アルコールは別腹。ですよね。滞在時間に比例してアルコール飲料の注文は増えます。こんな研究もあります(注¹)。今度はアップテンポのBGMを再生するのです。アップテンポのBGMが流れているとアルコール飲料の注文数はスローテンポのBGMが流れている時と比較して、1テーブルあたり平均3杯も多くなるとか。
このように一見、二つの相反する研究があるわけです、
じゃあ結局レストランではスローテンポの曲とアップテンポの曲とどっちを流したらいいんですか~!
答えはソニック・アーキテクトがもっています。
重要なのは、レストランを訪れるお客様は「居心地の良い場所」を求められているということ。そして、居心地のよさとは、「音楽やサウンドはもちろんのこと、その空間に存在するすべての音やノイズが、そのレストランのスタイルやイメージ、ブランド、雰囲気とマッチしていること」から創られるわけです。ですから、冒頭から申し上げているように「〇〇だけを流せばよい。」という答えはなく、我々ソニック・アーキテクトが、空間に存在するあらゆる音やサウンドや音楽を分析、構築、改善し、居心地良い空間を創り、「お客様が長居したくなり、また戻ってきたくなる空間」、つまりその場所の価値を高めるお手伝いをするというわけです。
これは、「複合的・戦略的」な音の有効活用であり、「〇〇のBGMが万能だ」「〇〇だけを連呼する」「〇〇の特売日のメロディーだけ流し続ける」ということでは決してないということなのです。
次回投稿では、アメリカでのスーパーマーケットの「複合的・戦略的音の活用事例」をご紹介しましょう。
(注¹)Milliman, E.R., (1986) . The Influence of Background Music on the Behavior of Restaurant Patrons. Journal of Consumer Research, Vol. 13, No 2.