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第52回:それって、「科学?スピリチュアル?」今こそ正しい音と医療の関係を。
巷には様々な音に関する情報があふれています。
曰く、「音楽を聞きながら治療を受けると痛みが軽減される。」「特定の産地の黒毛和牛はモーツァルトを聞いてリラックスしながら育っているのでお肉がおいしい。」「特定の周波数を出す音叉を聞くと心が癒される。」・・・・など、各種の音楽療法からセラピー、果てはスピリチュアルと呼ばれるものまで、「音が人(や和牛も?)に及ぼす好影響」に関する情報が世の中にはあふれています。
さて、いつもの「帝釈天で産湯を使い」方式です。
「音やサウンド」=周波数の表現はヒトの「感情」を引き出し、動かし、「記憶」を呼び起こし、「行動」を喚起することができます。
和牛とモーツァルトは少し脇に置くとしても、こと人間に関して言えば、音の医療目的利用は、感覚的な療法やセラピーやスピリチュアルなものではなく、「演奏や音表現の分析、音楽理論、音と心理学、認知心理学、行動分析、臨床、Background noiseのコントロールと設計、周波数、デシベル、ノイズの解析、医療・工学・商業との横断的基礎研究、統計学」を応用した学問に基づいています。
例えば・・
ピンクノイズ:高齢者の認知機能向上
睡眠時に低音が協調された穏やかで落ち着くピンクノイズを再生することで、眠りが深くなるとともに、記憶が改善することがわかっています¹。実際にヒトに聞こえる音としては、雨音の「ザアァァァアァ・・・」という音に似ています。よくYouTubeなどに、「朝まで眠るための雨音動画~キャンプ編」などありますよね。明らかにあれらはリラクゼーション効果を持つピンクノイズを意識的あるいは無意識的に応用した動画であろうかと推測されます。YouTubeから流れる疑似的な雨音を聞きながら寝るわけですが、実際、小雨がしとしとと降っている午後などに窓を開けて昼寝をすると実に気持ちが良いですよね。もちろん大雨になってしまうと、雨粒の多さから音の跳ね返り・反響が強くなりすぎ、従い音量デシベルも大きくなりすぎ、心地よい昼寝の妨げとなってしまいますが・・。
この研究に携わったノースウェスタン大学のフィリス・ジー博士は「ピンクノイズの刺激は、脳の健康を改善するのに役立つ可能性がある。革新的で、シンプルで、安全な非投薬的アプローチであり、これは、高齢者の記憶力を強化して記憶衰退を弱めるために有効なツールとなりうる」とおっしゃっています。
つまり、ソニック・アーキテクトのコンサルタントのもと、医療機器メーカーさんは商品開発をすることもできるでしょうし、病院や老人ホームなどの高齢者を実際に受け入れる施設ではそういった「ピンクノイズ発生機器」が開発されたら導入することもできるでしょう。従って、このお話は科学的根拠をもって音を有効活用することで、高齢化が進む日本の社会課題を解決することができるチャンスとも言える、と考えられます。
次回、医療分野での商品化が進む「音」についてもう少し深掘りしてみましょう。