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古の芸術のあとは現代の芸術を 八ヶ岳でアートと時間を過ごす 康耀堂美術館【紀行文】
11月の平日の休み、好きな信州にて、井戸尻考古館の土器を堪能した。
近くの店で信州蕎麦に舌鼓を打った後、時計を見ると13時半だった。時間があれば、上田市まで足を延ばす予定だったが、その暇はなさそうだ。
そこで、近くにある康耀堂美術館に行くことにした。
私は絵を見るのも好きで、展覧会などには年に数回いくのだが、体系的な知識がなく、絵を見てもどことなく消化不足に思っていた。
そこで美術検定を活用することにした。美術検定は美術史や絵画の鑑賞方法に一定の指標を与えてくれるため、昨年から少しずつ勉強している。
康耀堂美術館は、京都芸術大学の外部博物館であり、近現代の日本人画家の作品を鑑賞できる。美術検定のテキストにも載っている画家の作品もあり、11月中旬に予定している検定試験の復習にもよい、またこれまでの勉強で、絵画鑑賞に対する自分の見方の変化があるかもしれないと期待し、出かけた。
現代の日本画と洋画の作家の作品を静謐な空間で楽しむ
康耀堂美術館は信州が誇る縄文のビーナスを展示している尖石考古館の近くにある。京都芸術大学の外部博物館である康耀堂美術館は、美しい八ヶ岳の紅葉の中に静かに立つんでいた。
私は石造りのエントランスから入った。
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落ち着いた瀟洒な建物であり、地中海の遺跡を思わせる。先客は一人いるだけのようだった。展示室はA・Bに分かれており、Aは日本画、Bは洋画に区分されており、いずれも日本人の現代画家の絵が中心である。
Aホールにある日本画については、つい最近勉強した近代の洋画を意識した日本画の影響がなんとなく見えた。顔料の違いか、もしくは支持体の違いか、その茫洋としたキャンバスに込められたと言うより、ふわりと浮かび上がるような風景。
陰翳礼讃ではないが、障子紙の淡い光の中、どことなく幽玄な世界に誘ってくれる。
淡く浮かび上がるような朦朧とした茫洋とした主題がなんとなく日本人の心象に合うのである。
私はこの中で高橋天山という方の日本画が美しいと思った。
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続いて洋画、油彩を中心としたBホールに向かう。日本に油彩を主に普及させたのは黒田清輝であるが、その黒田の薫陶を受けた次世代の画家の特徴をオマージュしたような作品が多いと思った。
この絵は、あの作品の主題を踏まえているんだろうなという想像がつくものもあり、セザンヌのサント=ヴィクトワールを日本の山に置き換えたのではなかろうか、という作品もあった。
最も惹かれたのが、悳俊彦氏の「夏の花」であり、ミントブルーの花が爽やかに表現されていた。油彩とあったが、日本画のような儚さがあり、有限な美を感じた。調べると、浮世絵の制作もされている方のようであった。
日本画、洋画ともにゆったりと静かな環境で楽しむことが出来た。一人静かな、そして広々とした空間で美術鑑賞が出来るなんて、なんと心地よいことだろうと思った。
作品を堪能した後は、館内の元カフェコーナーで、中庭を眺めながら休憩した。そこには、絵の具などの画材の違いを紹介するコーナーなどもあり、美術検定に向けたよい勉強にもなった。
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アートを愛する人がここにいたのだという、空気感が心地よかった
諏訪大社 春宮・秋宮へ
美術館を出るときは、15時だった。暗くなるまで少し時間があったので、「どこか・・・」と考えた時に浮かんだのは、やはり諏訪大社だった。
今年本宮と前宮にはお参りしたが、秋宮・春宮には行っていない。四社巡りの御朱印集めもできると思い、向かうことにした。
八ヶ岳の中腹から諏訪湖方面に向かって降りていく。いつも思うのであるが、山の中にいるはずなのだが、富士見~茅野・諏訪あたりは意外と平野のような平らな景色が続いていく。
古代から人々が住んできた場所なので、開墾されているためだろうか、いや、自然の働きでこのような人にとって住みやすい地形になったのだろう。縄文のころ、ここが日本の中心地であった。
国道20号線に入ると道が混んでおり、諏訪大社の秋宮に着いたのは16時を過ぎた頃であった。
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小雨降る中の平日夕方、参拝者はいなかった。
巨大な注連縄が神楽殿にあった。幣拝殿に回ると、そこには比較的新しい感じの建造物があった。
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幣拝殿の解説を見ると、江戸期に秋宮と春宮の幣拝殿建設にあたり、地元の大工に腕を競わせたとあった。
正直な感想から言うと、今年行った上社の本宮や前宮に感じたようなエネルギーを両宮から受け取ることが出来なかった。私の心が整っていなかったせいもあるかもしれない。
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秋宮と春宮、それぞれの境内地を巡り、いくつかの発見や面白さはあった。可能であれば、秋宮にある宝物館を見ていきたかったが、既に閉まっていたのが残念だった。
両宮は、諏訪湖の御神渡に関係した神社であると言われている。諏訪大社の上社には、タケミナカタノカミが祀られ、下社には妻のヤサカトメノカミが祀られていることになっている。
そして御神渡りは、夫であるタケミナカタノカミが妻の元へ渡っていくという筋書きになっているようだが、なにか七夕の織姫と彦星の話が習合したような居心地の悪さを覚える。後付けではないだろうか。
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この春宮と秋宮は諏訪湖が見渡せる、少し高台の位置に建てられており、諏訪湖を中心とした信仰の中では、やはり何かしらの意味のある場所であると思った。
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秋宮には、なぜかタケミナカタノカミとは相性が悪いはずの、天津神(アマテラス・タケミカヅチなど)が祭られている。
また若宮には、タケミナカタノカミの十三の御子神が祭られているが、これはタケミナカタノカミが鎮座する以前の土着の神々ではないかと思う。この辺りは、まだまだ勉強不足であるが、今後調べてみたいと思う。
少し駆け足ではあったが、この下社と春宮についても実際訪れたことで体感できたこともあり、知識も深まったので、また改めて立体的に諏訪信仰について自分なりの考えをまとめてみたい。
この諏訪湖の周りを走っていると分かるが、諏訪湖の南北にはすぐに山が迫っており、高く囲まれているような形になっている。
諏訪湖全体が巨大ながくんと凹んだ盆地になっているのだ。これはやはり地殻変動的によるものであろうし、その巨大な力を改めて思い知るのであった。
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