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土曜の夜、BARカウンターで

小田原、冬の夜。
前から気になっていた店を訪れた。
「BAR Carta」
カルタ、と読む。
小田原駅から徒歩数分、お城へと続く通りに面した店だ。一年ほど前に来た時は、満席で断念した。今夜は開店時間の19時に合わせて来た。
重い扉を引く。BARの第一条件、扉は重くなくてはならない。
中には、すでに先客が3名いた。


店内の照明は適度に暗く、一枚板のカウンターにだけ柔らかい光が差す。カウンターの中には女性バーテンダーが一人。彼女が「こちらへどうぞ」と手で示した席へ腰を下ろした。
バックバーを見ると、一通りのウイスキーが国別種類別に並べられている。合格だ。この時点で、わかる。内装は、どこか「和」を感じさせる造りで、我々のDNAは自然とくつろぐ体勢に入る。
店内には控えめなJAZZが流れている。土曜の夜とJAZZの組み合わせほど、カチッと音を立ててハマるピースはない。
僕は「タリスカー」をストレートでオーダーした。

刺激的な香りで、世界がハードボイルドに満たされてゆく。冬は、これくらい尖ったウイスキーの方が良い。
ナッツの塩味がピート香を引き立てる。

2杯目にオーダーしたのは「クラガンモア」だ。やはりストレートで。お手本のようなスペイサイドモルト。いちじくのドライフルーツと、クラガンモアのバニラ香が優しく溶け合う。
日常と、非日常が交差する。少しだけ、男を取り戻すことができる。

小一時間ほどで、店を出た。
BARは、自分に酔う場所でもある。
「BAR Carta」は、それができる店だ。
小田原城が、月夜に照らされていた。

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