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晩秋の田貫湖 早朝の静かな空を映す鏡

夜明け間近の富士山
まだ寝静まったキャンプサイト
サイト内の木々も秋化粧
落ち葉の絨毯
赤い絨毯
見上げるとお月様
休暇村、展望デッキからの富士山
日中は混んでいる展望デッキも貸切
遊歩道にある姫の橋
対岸から見たキャンプサイト
日の出
長く伸びる自分の影


11月、日曜日の早朝、田貫湖に来た。生まれ故郷の実家から、車で10分の場所。
昨夜は所用で帰省しており、実家に泊めてもらった。久しぶりに両親と会い、夕飯時は親子3人で酒を飲み、早い時間に寝てしまった。おかげで、かなり早い時間に目が覚めてしまったのだ。ふと思い立ち、夜明け前の田貫湖へ。

帰省するたびに来たくなる場所だ。
私が高校生の頃は、陸上部に所属していたこともあり、よく田貫湖まで走った。往復10キロ。しかも、行きはかなりの登り道となる。受験勉強の合間の息抜きに、当時はちょうどいいと思っていたが、今考えると、10代の体力おそるべし。当時は今と違って、湖畔にキャンプ場は整備されておらず、ぐるりと一周、遊歩道があるだけだった。当然、ほとんど人もいなかった。釣り人くらいか。

駐車場に車を停めると、そこはキャンプ場の入り口となる。夜明け前、少しづつ明るくなる富士山に、雲が複雑に絡み合う。まだ寝静まったキャンプサイト。早朝はすでにかなり冷え込む時期だが、張られたテントの数は多い。冬キャンプも完全にメジャーとなった遊びだ。早起きのキャンパーたちによる、焚き火のにおいがサイトに漂う。この匂いを嗅ぐと、私の脳裏には楽しく、幸せな思い出が一気に広がる。キャンプ、BBQ。このワードにネガティブな感情を持つ人は少ないと思う。私もその1人、それだけのことだ。
今回は、時計回りに湖を歩くことにした。キャンプサイトは、予想通り紅葉で秋化粧がほどこされ、全てが暖色だった。反して、吐く息は白い。舗装された遊歩道から、一歩芝生に入れば、落ち葉がカサカサと音を立てる。場所によってそれは、黄、橙、朱と色を変える。空には青白い月が浮かんでいる。朝日まで、あと少しだ。
富士山のビュースポットとして、人気の休暇村前の展望デッキも貸切状態だった。湖面に富士が正反射し、見事なダイヤモンドを描く。休暇村のホテル側から、ふといい匂いが漂う。朝食の準備をしているのだろう。急に空腹を覚えた。現在、6時30分。
田貫湖は一周3.3キロある。朝の散歩には程よい距離だ。休日の朝、ここを散歩コースとしてくる人も多いのであろうか、すれ違う人も多い。ランニングしている人、犬連れの人。今では完全に舗装された道となっているが、昔は舗装されていない場所も多く、ぬかるみ、すぐに靴が汚れてしまった記憶がある。姫の橋も私が中学生の頃にかけられたもので、この辺りも完全な湿地帯だった。
急に目を刺す眩しさを感じた。夜明けだ。朝日が限りなく低い位置から、並行に世界を照らし出す。湖面に輝く光の帯が、ゆっくりと揺れる。午後から雨予報が出ているため、これから天気が荒れ始めるのだろう、風も出てきた。その風が湖面に波を作り、光の帯と連動して、湖全体がうねるように動く。まるで巨大な龍のようだ。私にはそれを、畏怖の念ではなく、吉兆として感じられた。神に触れた、そんな荘厳な景色。湖面に反射した暖かい朝日が、私の影を長く伸ばす。祝福の時間だ。
田貫湖を訪れるたびに、私は過去の思い出と、これからの人生への期待を再確認することができる。私にとって大切な場所だ。
さて、そろそろ帰ろう。母の作る温かい味噌汁が待っている。

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