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太極拳を体験して気づいた人生の極意とは

※タイトル画像は「modern湯治おんりーゆー」ホームページより拝借

太極拳と聞いて、あなたは何を連想するだろうか?
中国や台湾などで、お年寄りがゆっくりと体全身を使って、武術の型を演舞している光景を、頭に浮かべる人が多いのではないだろうか?

僕も実際に中華圏の国々に旅行に行き、公園のあちこちで、本当に多くの人々が太極拳をしているのを目の当たりにした。朝方の時間帯だったこともあり、日本でいうところの「ラジオ体操」的な位置付けなのだろうと思った記憶がある。

南足柄市にある温浴施設『modern湯治おんりーゆー』で、その太極拳を体験する機会を得た。この施設では、三昧講座と称して、実にさまざまな体験講座がおこなわれている。今回はその中の『かんたん太極拳教室』を受講した。料金は、無料(大抵のアクティビティが無料!)。
受講、と言っても堅苦しさは一切なく、温泉とサウナのついでに、ふらりと体験してみるか、そんなお手軽さ。申し込みも、フロントで「これ、参加できますか?」と聞くだけ。

風呂上がり、館内着のまま指定された会場へ。
僕以外にも2組のご夫婦と思われる受講者がいた。皆、僕よりも少し年配の方々。
入り口では、白いチャイナ服(いかにもカンフーとか繰り出しそうなサテン地っぽいやつ)に身を包んだ女性が迎え入れてくれた。
タイトル画像にも映る彼女の名前は、福井さん。太極拳歴は30年弱ほどの経歴らしい。気持ち良い笑顔で接してくれる。
たった1人で参加した僕も、妙な緊張をせずに楽しめたのは、彼女の明るい人柄のおかげだったと思う。

開いた左手に右拳を胸の前で合わせる、カンフー映画でよくみるあの挨拶から始まった。45分間の太極拳教室を通じて、僕が一番心に残った福井さんの言葉は「いかにちからを使わずに体を動かすか」と言うものだ。

例えば、両腕を一旦胸の前あたりまで上げて、左右どちらか一方に振り下ろす。腕を下ろした反動で、また両腕を胸の前まで上げる。上げた腕が自然に落ちる法則を利用して、今度は両腕を先ほどとは反対の方向へ落としながら振る。
自然に。反動を利用して、ちからを使わずに。

福井さんの動きを、見よう見まねで腕や足を形作る。その際、呼吸に意識を向ける様、教えられる。呼吸に合わせ、体にちからを入れずに自然に動くことで、気の巡りを整えていくのだそうだ。
ゆっくりとした動きなのに、いつしか体全体が温かくなり、冷たかった足の指先も赤みを帯びてきた。これも太極拳による、気の巡り効果なのか。

いかにちからを入れずに体を動かすか。
これは目指す人生そのものではないだろうか。ふとそんな思いが頭をよぎる。
僕らは常に、不要なほど力んで生きているのではないか。無理をせず、自然に生きる、それこそが正しく気の巡った最も健康的な生き方なのではないだろうか。

2月の優しい日の光が差し込む畳の部屋で、「ローシーアオブー」の動きに合わせて深呼吸しながら、そんなことを考えた。

その日の夜、とても深い睡眠を得ることができたのも、太極拳を体験したことと無関係ではないはずだ。

もしあなたも太極拳を体験する機会があるとしたら、きっと「生きる」本質について、思いを馳せるきっかけを得るのではないだろうか。

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