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これは、食べる「サウナ」だ! 薬膳チョマーメンの神秘!
半年に一度くらい、無性に食べたくなるものがある。急に脳が思い出す、というより、体が、ある日突然に欲する感覚。発作に近い。
誰にでもそんなものの、ひとつやふたつあるのではないだろうか。
今週末の僕を制御不能にするほどの欲求を突きつけてきた一品、それはチョマーメンだ。
きっと、大多数の方は聞いたことすらないものだと思う。僕も、この店以外でこのメニューを食したことがない。それどころか、目にしたことすらない。
名前からして、麺類だと想像がつく。それにしても、チョマって。
氷花餃子。小田原と開成町に1店舗づつ。今回僕は、開成町店でそれを食べた。
メニューには、十数種類の薬膳調味料を使用、とうたわれている。
はて、薬膳とは。
薬膳とは、中国の伝統医学「中医学」の考えに基づいた食事のこと。
体調不良を改善し、健康的な体作りを促すため、体のバランスを整え、おいしく食べながら健康管理ができます。
薬膳は、「陰と陽」「五臓」「六味」「五行」「五気」という基本の考え方から成り立っている。
薬膳では、「陰虚」「気虚」「気滞」「血虚」「血瘀」という代表的な5種類の体質が定義されており、それぞれにおすすめの食材がある。
何やらさらに意味不明な単語が羅列されたが、要は中国4000年の秘伝、的な。
厳かである。
絶対体にいいやつ。
登場したチョマーメン、写真の通り、結構赤い。多くの野菜が盛られ、麺は見えない。
まずはスープを一口飲む。
確かに辛味はあるが、後を引かない辛さだ。複雑な香りに包まれる。香辛料、そんな単語が頭に浮かぶ。
麺は太く、黄色い。かなりの歯応えがある。手打ちだそうだ。野菜と一緒に啜る。美味い!
一気に身体中の毛穴が開くのがわかる。水をゴクゴク飲む。
箸が止まらない。体が次から次へと、チョマを欲する。キャベツ、豚肉、帆立。赤く染まった具材を、太麺と共に食す。水差しからドバドバとコップに注いだ冷水を、音を立てて飲む。そしてまた、赤いスープを啜る。
この香り、何に似ているのだろう、そう思っていた時、数席向こうの家族で来店していた子供が、かなり的を得た発言をした。
その家族の父親と見られる男性も、チョマーメンをオーダーしていた。それを食べるのを隣で見ていた子供が「カレーみたいな匂いがする」と言ったのだ。
ピンと来た。カレー味ではないのだが、カレー粉の香りに通じるものが、確かにある。あの中に含まれているクミンやらコリアンダーやらクローブやらのスパイスと同じものが、薬膳の中に含まれているのかも知れない。
開いた毛穴からは、汗が吹き出してくる。鼻水も流れる様に出てくる。僕はバッグの中からポケットティッシュを取り出し、勢いよく鼻をかんだ。そしてまた、チョマの世界に浸る。気がつくと、スープまで全て飲み干してしまった。
食べ終わり、さらにもう一杯水を飲む。
これは、「食べるサウナ」だ。
額の朝を手で拭きながら、僕はそう思った。
発汗、水のがぶ飲み、鼻水。
そして何より、食べ終わった後の爽快感。
これが薬膳のもたらす効能か。
どうもシャキッとしない時、チョマーメン一杯で、体は再起動したPCのごとく軽快に動き出すだろう。軽い二日酔程度なら、一気に吹き飛ばす。
¥1100也(2024年10月に値上げして現在は¥1280です)。
奇しくも、近くのサウナの休日料金と同じ値段だ。
4月の風が、開いた毛穴をそっと撫でる。
そう、このチョマーメン、外気浴まで味わうことができるのだ。
2週連続で、僕はチョマーメンを食べた。
体が、軽い。
中国4000年、恐るべし。