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魯肉飯を食べながら自意識について考える

 インスタのおすすめ投稿に、まさに今住んでいる地区の美味しい飲食店を特集した投稿が出てきました(どういう仕組みなんだ本当に怖い)。その中で見つけた魯肉飯(ルーローハン)のあるエスニック料理屋が美味そうで、こないだ行きました。普段そういうことはしないので、休日をいいものにしようと、少し無理をしています。
 その店はオプションがいくつかあり、トッピングをいくつか無料で頼めたり、他のメニューと半分ずつにして頼むことができたりするらしいのですが、とにかく魯肉飯を食べたかったので単品で頼み、トッピングにパクチーを注文しました。パクチーは普通に好きですが、今回は、(単品で魯肉飯だけだと、これだけオプションがある店でこだわりが少なすぎると思われるのでは?)と思い、「僕には考えがありますよ」という意味でのパクチーです。自意識による演出です。
 すると、「お値段変わらずハーフアンドハーフにできますが宜しいですか?」と言われました。ですよね。いざ勧められた上で断ると、(こいつどんだけ魯肉飯食べたいねん)と思われそうなので、従うままにタコライスとハーフアンドハーフにしました。
 そうなるとパクチーが浮きます。こだわり演出パクチーなので、ハーフアンドハーフにすると、そのパクチーは不要になります。なりますよね?最初からハーフアンドハーフにするつもりなら、パクチーを頼むつもりはなかったのです。「じゃあタコライスとハーフアンドハーフで、…で、やっぱりパクチーはキャンセルでお願いします」と言いました。すると店主さんに「タコライスにも合いますよ」と言われました。ですよね。僕は「合いますか?えー、じゃあお願いします!」と、とっても愛想よく返すと、悩んでいる様子を見せた僕を見かねて「別皿にしましょうか?」と聞かれました。本当にそのサービス精神ありがとうなんですが、パクチーに大した思想のない僕はキャパオーバーとなり、「お任せで」を発動しました。やりとりが多くなってなんかもうつらくなってたのもあります。「じゃあ乗せちゃいますね」

 乗せられてきたパクチーは無料ということもありほんの少しで、別皿にしなくてよかったなと思いました。

 このやりとりは全て、僕の自意識によって生まれています。
…(オプションの多い店で単品魯肉飯だとこだわりが少なすぎると思われるのでは)(というかオプションを知らないと思われるのでは?じゃあパクチーをつけよう)(こいつどんだけ魯肉飯食べたいねんと思われるな)(演出パクチーが意味をなさなくなったのでパクチーをやめよう)(別皿だとこだわりが強すぎる感じになるな)…

 タコライスと魯肉飯のハーフアンドハーフパクチー乗せが運ばれてきた際、「お荷物こちらに置いていただいて大丈夫ですよ」と隣の席を指して言われました。カウンター席で荷物を膝の上に乗せていたからです。入店した時、昼過ぎで人も少ないし、隣の席に置けてしまうのは分かってましたが、そりゃ自分では置けませんよね。マナーが悪いかもしれないし、人が来たらどかさないとだし、その際に、(置いてんじゃねえよ)と思われるかもだし。でも言われたら置けます。許可が降りたから置けます。ありがとうございます。これも自意識です。

 ここから僕はぼーっと、自意識について考える事になります。

 タコライスと魯肉飯のハーフアンドハーフパクチー乗せを食べながら自意識について考えていると、金属製のスプーンと皿が擦れる音が気になってきました。これは普通に僕が金属の擦れる音が苦手だからです。でももし他の客に同じような人がいたら、きっと嫌がられる事でしょう。自意識について考えている僕は、スプーンと皿の擦れる音が出ないように気をつけて食べる事になりました。スプーンで掬う時に、スプーンと皿の間に米を挟んでお米のセグウェイみたいにすると音が出ませんでした。キャプテン翼でそういう移動方法があったな。蹴ったボールの上に乗って移動するやつ。これにより、ほかの客に嫌がられるのではないか?という懸念は消えました。自意識。

 他の客は、前からいたお兄さんと、僕が入る直前に入ったおばさんと、僕が料理を待っている途中に入ってきた女子大生2人組の計4人でした。ゼミとか単位の話をしているのが聞こえて、懐かしく感じると同時に、もう僕は大学生じゃないことを思い出しました。大学生の頃友達と入った店にいたような独り身の男に、いつのまにか僕は今なっているのだ。彼女たちに僕はどう見えているのだろう。自意識。

 店にはBGMの代わりとして、ラジオのショッピング番組が流れていました。いつもはイヤホンで音楽を聴いたりYouTubeを見たりしますが、今日はイヤホンはせずなんとなくそれを聞いていました。前のnoteで言ったように普段はオモコロチャンネルを見たりするのですが、飲食店で見ているとき、隣に人が来ると、見られていないか気になります。てかちょっとは見ますよね。いつみられてもいいように、あんまり恥ずかしい動画は見ないようにしてます。これはあるあるでしょ。

 この辺りで気づいたんですけど、自意識とは、他を意識する事だな。と思いました。不思議な話だな。

 食べ終わったので、お金を払います。ちょうど僕と同じタイミングで入ったおばさんが会計に向かったので、その後に会計に向かいました。そっちの方が店員さんからしたら一気にできて楽だと思うし、レジまで行ったけど店員さんに気付かれなくて、別に気付かれないことに焦ってないですよ、みたいな感じで財布をゆっくり取り出して時間を稼ぐ、みたいなこともしなくて済みますし。

 1000円です、といわれて、トレーの上か、トレーの上に微妙に出された店主の手のひらに乗せるか迷って手のひらに乗せたら、すぐにトレーに置かれました。
 会計を終わらせたおばさんは、すっかり道を塞いでいる僕がしまわなかったカウンターの椅子をしまって店の外へ出ました。すいません。
 ちょっとずらしたつもりだったけど、椅子でもたついたのもあり、おばさんと店を出るタイミングが全く同じになりました。入店のタイミングもほぼ一緒だったので、食べるスピードまったく一緒ですね。
 細かい所が全部なんか噛み合わない日ってあるよなあ。


 食べている間、ラジオのショッピング番組は、大きな声で電話番号を伝えていました。ほどなくして、電話が埋まった報告をしていました。まだまだ数はあるので繋がらなくてもあきらめずに電話を続けてほしいと言っていました。
 僕が電話をかけだしたら、周りのお客さんどんな反応しただろう。

 そんなこと考えながら、帰りました。そんなことできる人いるのかな。
 自意識がなければ…。

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