韓国語文法への公理論的接近--まえがき
この本は韓国語文法を外国語として学ぶ人のためのまとめである。一般に言って、言語学者が対象とする文法は多くの難解な専門用語を含み、日常会話にはあまり登場しない詳細も 多い。このようなことを学ぶのは言語の初学者にとっては難し過ぎ、時間もかかりすぎる。しかし、文法は言語の基本的な構成要素であり、それを実用的なレベルで理解すると素早く言語が習得できるようになる。この本の目標は読者に韓国語文法をそのような実用的なレベ ルで理解してもらうことである。そのため、この本には専門用語は最小限しか出てこない。ここで示された文法は韓国語を研究する学者が分析した文法とは異なる。そういう意味では ある種の「誤った」文法であるが、もし目標が日常会話レベルの言語に現れる規則を理解することである場合、そのようなおおまかに言って正しい規則を理解することは非常に助けになる。
ある言語を勉強したい場合、その言語の様々な側面を学ぶことになる。個人的に、筆者はそのような側面を以下のように分類する: 文法、単語、作文、読解、リスニング、会話。最初に学ぶべきは文法と単語である。基本的な文法規則と単語を知らないと、その言語で何も できない。もちろん赤ちゃんは言語の全てを聞きながら学んでいくが、我々はすでに赤ちゃんではない。親との会話を通じた言語の習得以外にもやるべきことはたくさんあり、新たな言語を学ぶのに使うことができる時間は限られている。このような状況においては学びたい言語にどっぷり浸かることは難しい。
言語習得におけるこれらの 6 つの側面は言語を完全に習得するためには全て操れるよう になる必要がある。各側面の習得のためには様々なリソースがある。会話は話し相手の友達がいた方が良いが、作文と会話は自力でできる。読解はウェブ上を散策すれば新聞記事から個人のSNSまで様々な資料が見つかる。動画共有や配信のサイトが発展した現在、リスニングに使えるものもインターネット上でたやすく見つかる。単語は究極的には辞書を使えば学ぶことができるが、おそらく単語帳を使って勉強するのが手っ取り早いであろう。筆者の経験では6000語程度知っていればある言語をその言語を使って学ぶのに十分である。
それでは文法はどうだろうか?残念なことに、韓国語文法の良い教科書はあまりない。初学者向けの本は良い。どのような本でもハングルからスタートして簡単な文を作る規則は教えている。しかし、そのレベルを超えてどのような局面においても韓国語を使えるような水準に達したいと思うと、初級を超える内容の教科書は限られている。この本は初級から上級の入り口までの韓国語文法を体系的にまとめたものである。
筆者の母国語は韓国語ではなく、日本語である。筆者も韓国語を大学時代に第二外国語として学び始め、現在では母国語話者とどのような話題においても自然なスピードで韓国語のみで会話ができる程度に習熟している。この本は筆者の主たる関心である自然界のあらゆる現象を記述できる基本法則を追求する物理学の探究のサイドプロジェクトとして書いたものである。
この本の構成はこのような筆者の背景知識を反映している。論理構造は公理論的に展開されている。すなわち、まず基本的な規則を述べて、すべての基本的な規則をもとにすべての詳細な文法を記述するように心がけた。基本的な規則を説明するために必要最低限の例は示しているが、例は必要最小限しか載せていない。また、同じ説明は 2 度以上はしていない。もし復習をしたい場合は、自力で前のページに戻る必要があり、復習のためのページは書かれていない。このような簡潔な記述と論理展開が読者がこの本の内容を素早く理解することの助けになると期待している。
この本で記述されている文法は規則を学ぶ目的のみに書かれている。実際の韓国語文法は規則を異なる方法で捉えている場合もあるが、この本ではわかりやすさを優先して正統な韓国語文法とは異なる記述をしている場合もある。そうのような意味で、この本に出てくる「文法用語」はこの本のみで用いられ、他の文法書では別な形で記述されているかもしれないが、この本の中での論理的一貫性という意味では特段の問題はない。
この本は言語学習を構成する 6 つの要素のうち文法のみに焦点を当てている。それ以外の要素に関しては読者が自力で他の資料をあたることが想定されている。例えば、数の数え方といった基本的な単語は 1、2、3、... という単語を暗記するか否かの問題なのでこの本では触れていない。また、単語の意味に関しても文法の説明に必要になる以外の場合には触れていない。読者が単語帳や辞書、他の教科書を参照することを想定している。
筆者はこの本が読者の韓国語の学習の助けになることを期待している。
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韓国語文法への公理論的接近
このマガジンは韓国語文法についてまとめたものである。特徴は、必要最小限の原理に基づいて論理的に一貫した方法で簡潔に文法規則を展開しているこ…
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