《ショートコラム》卑小な私に最適な「アンガーコントロール」法
わたしは、すでにいい年なんだけど、切れやすい。最近も家族に切れ、昔の会社の後輩を怒鳴りつけたりした。
相手を殴ったりはしないが、モノに当たったりはする。腹が立った理由は明確にあるのだけど、切れたらこちらの負けだ。いいわけもできない。
またわたしは、過去に抱いた腹立ち、怒りをいつまでも忘れず、原因となった人物のことも含めて、牛が反芻するかのごとく、ときどき思い出しては、怒りの炎をちろちろと燃やすことがある。
いい加減なんとかしないと、いつか、とんでもないことを引き起こしそうで怖くなり、「アンガーコントロール」に関する動画をいくつも見たり、関連の本を読んだりした。
怒りをコントロールするには、いろいろな方法があるそうだ。
何か腹立ちが起きたらとにかく6秒は我慢する、そうすると自然と収まるそうだ。
呼吸法なんかもあるというし、怒りを抱えてる自分を客観視することもいいようだ。あとは瞑想とかw
まあ、どれも効果はあるのだろうけど、いまいち引き込まれなかった。
わたしが一番、しっくりきたのは、
「怒りをコントロールしないまま、放置していると、心臓発作を起こす可能性がある」という解説だった。
家族や知人に怒った原因は、本当にくだらないことだった。
そんなことで怒りを抱えて、心臓発作なんかで死にたくないw アホみたいだ。
ついでに、長年密かに恨みに思ってきた、さまざまな人の過去の言動も、忘れようと考えた。
相手は、そんなこと言ったかなんて、とっくに忘れている。そんなことにこだわって心臓を悪くしたくないw
家族や知人を激しく怒鳴ったことで、わたしの心臓は少なからずダメージを受けたことだろう。
馬鹿馬鹿しい。
怒鳴られた相手のダメージのことなど考えず、まず自分の心配をしている自分がいた。
「自分が怒るときはどんなときか、振り返ってみましょう」
そのようなアドバイスがあったので、わたしはその通りにしてみた。
すると、怒る時は複数のケースがあるのだが、大抵は、自分が低く見ている相手に対しては、すぐに発火するようだった。
気がつくと、自分が色々な人を軽く見て、蔑んでいることが分かった。もちろん、さしたる合理的な理由もなくだ。
そして低く見る相手の言動が気に入らないと、いきなり沸騰してしまう。
自分の怒りを振り返ることで、わたしは自分のどうしようもない「卑小さ」を思い知った。
なんて嫌な人間なんだろう。
そう思うと、思考が停止してしまって、先に進めなくなった。コントロールなんて到底無理だと感じた。
そのときに、「怒りをコントロールしないまま、放置していると、心臓発作を起こす可能性がある」という注意書きが目に飛び込んできた。
そしてなんとかコントロールしようと思い始め、積年の恨みの相手のことも忘れようと思ったのだ。
自分の卑小さを知り、そこから解決の道を歩み出すのではなく、
自分の健康、命を第一に考え、それを守るために、怒りのコントロールに本気で取り組み始めたのである。
長年抱き続けた恨み、怒りの断捨離をすぐさま開始した。そして規則正しい生活を取り戻そうと決意した。
この決意のとき、わたしは密かにうそぶいた。
「あんなクソみたいなやつらのせいで、心臓発作なんか起こしてたまるかよ」。
わたしは、これからも卑小で器の小さな人間のままなのだろう。
それでもいい。長生きできるなら。