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【第4話】映画『生きる』から学ぶ仕事への意味づけの変化と癒し効果とは?

この記事は、下記リンクのマガジン【第1話】から順番にお読みいただくと、より深く理解でき、また楽しみながらご覧いただけると思います。


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前回の記事では、「仕事」と「幸せ」の関係性について簡単にまとめ、マズローの語る自己実現がビジネス以外の様々な要素とも関係しているものであることについて触れました。

今回は、前の記事でも書いたように、黒澤明監督の映画『生きる』のストーリーに触れながら、マズロー流の仕事論の話を広げていきたいと思います。


◆映画『生きる』に見る仕事への意味づけの変化

前回の記事では、黒澤明監督作品である『生きる』という映画のストーリーは「自己救済」の道のりを理解するものとしては非常によいお手本になると話しました。

その一方で、それとは別の視点でもメッセージ性が強いとマズローは述べています。

それは、あの映画が、どのような仕事であれ本人が望みさえすれば価値ある仕事になることを表現しているという観点です。


映画『生きる』においては、最もわびしい官僚主義的仕事が、ガンによる死の接近により本質的な意味がすくい取られ、仕事は有意義で価値の高いものとなります。

その物語が、自己実現的な仕事の仕方のヒントになるとマズローは考えていました。

つまり、『生きる』のストーリーからは、生活の手段として始めた職業への目的や価値の意味づけが変わることで、それが最高の仕事に変容することを理解できるのです。

極端に言えば、最もつまらない仕事でも、その仕事に関わる人の心持ち次第で最も好きな仕事になるとも言えます。


これは、映画を見ていない方には言葉では伝わりきらないものがあるのですが、もし今の自分の仕事にやりがいをあまり感じないという場合は、是非一度この映画を見てみてください。(現時点ではU-NEXTだと見放題で無料視聴できます)

きっと、マズローの言わんとしていることが、スッと理解できると思います。



◆社会の課題解決と自分の内部にある問題解決とが同じになる

さて、自己実現に生きる人の仕事論について、少し別の角度から深掘りをしてみましょう。

まず先に結論から言うと、自己実現を果たす仕事をしている人にとっては、仕事は自分を癒してくれる存在になります

とりわけ、「仕事が自分のアイデンティティや自分の内側の奥の方を照らすほど自分に馴染んでいる人」はこの傾向が強いともマズローは語っています。

一体全体、どうして仕事をすることが自分自身の癒しに繋がるのでしょうか?

その理由を端的に言えば、自己実現している人は仕事を通して自身の不安が解放されていくからです。


どういうことかと言うと、自己実現者にとっては、仕事とは自分の内側の世界と外側の世界を結びつけるものになります。

また、それと同時に世界というものが自分の心の中を投影し映し出すようなものになります。

つまり、自分の抱えている問題に、一人で孤軍奮闘して解決するのではなく、世界に広がるあらゆる物事と手を取りながら対処するようになるということです。


この話はかなり抽象度の高い話なので、人によっては頭に「?」が思い浮かぶかもしれません。

ということで、少し具体例を挙げてこの内容を紐解いてみたいと思います。


たとえば、芸術家や知的な仕事をしている人は、自分の心の中にある問題を自分でも気づかぬうちに外部に投影し、それを取り組むべき仕事としている傾向が強いと言えるでしょう。

画家が、自分自身の内的問題をキャンバスに描き出すことでその解決を図っていることが、その象徴的な事例であるとマズローは述べています。

絵を描くという行為は、自分の胸のうちの葛藤を描き出しているという面と、描くという創作過程を通じて葛藤が解放されるという面があります。

もちろん、それはなにも芸術という分野における創作活動に限らず、本質的な取り組みとなっている仕事であれば、すべてこれと同じ側面をもっていると言えるでしょう。

あるいは、普段の何気ないおしゃべりだって、自分の意見や考えを述べるという意味では自己表現の一環に他ならないですし、自分の意見を相手に伝えること自体が内側の問題を外に出して解放しているという側面もあります。


ちなみに、さきほど触れた『生きる』という映画の主人公も、まさにこの内的問題の解放に当てはまり、彼は死に際に取り組む仕事を通して、自分の死としっかりと向き合い、その仕事はある種の自己表現となっているのです。


つまり、ここまでの話を最後に改めてまとめると、自己実現を果たす仕事というのは、社会の問題解決を図るものであると同時に、自分の内的な問題を解決することとも同義であるということです。

そういった意味で、仕事に取り組むことが自己の癒しに繋がり不安の減少と安堵をもたらすのです。

映画『生きる』の主人公も、仕事に没頭することで最終的に安らかな死を迎えることができたことがこの象徴だと思います。


なお、マズローの語る自己実現とは、仕事という枠組みを超えたもっと広い意味を帯びている概念であり、したがって、ここで触れた自己実現の話は非常に一面的な説明にすぎないということは改めて強調しておきたいと思います。


いずれにせよ、第2話と第3話の内容も加味してまとめると、仕事を通して自己実現に取り組むこと、あるいは、仕事を自己実現の手段として捉えて日々の業務にあたることは、自分自身の幸福はもとより、職場の同僚や友人や家族といった、自分の周りの大切な人々の幸福にも直結しており、その意味でも社会的なスケール感の問題解決となっているのです


なお、もしかしたら今回の話は分かりにくくて、小難しく感じて少しモヤモヤしてしまった方も多いかもしれませんが、ここまでの話は次回以降で何回かに分けて話す「仕事をする価値」という内容に触れることでより深く理解することができるかと思います。


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続きは下記リンクよりどうぞ。

★より詳しい内容は、Amazon電子書籍『心の底から「やりがい」を
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北岡たちき/マズロー研究家・電子書籍作家
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