誠意を尽くした者の負け
よさこいの運営は、少なくとも私が所属したり見聞きしてきたチームの運営は、まさにこの通りだと思う。
基本的に誠意で成り立っていて、「やりがい」という「利益に見えるもの」を頼るよすがとして動いていた。まさに「やりがい搾取」だ。
それの何が悪い、と、今、チームをやっている人は思うだろうけど、チームの代表をつとめていた人間が既にうつ病で自殺しているのだから、そのやり方ではまた死人が出る。冗談抜きで。
私も在籍中に少なくとも二回、祭響スコブルで一回、VOGUEで一回、本気で自殺を考えた。
祭響スコブルで、役員をつとめていた初期準備人のひとりが、2001年の本祭後に、代表からのあまりにも苛烈な攻撃で大ダメージを受け、幹部連中数名が、この人を逃がしてあげないとダメだ、と、それぞれ別個に判断して動いて、密かに助け、そのまま退会させたことがあった。
原因はとても他愛もないことだった。
代表は本祭中には絶対に「電話番」(組織委員会から連絡が来る電話を持つ係)をせず、その人が電話番をしていたのだが、もしファイナル進出の連絡を受けたら、とりあえず大通に移動するまで黙っていて、大通に着いてからみんなに知らせて、わーっと喜びあう、というシナリオが、代表の中では出来上がっていた。
だが、電話番をしたことのある人や、電話番の近くにいたことのある人ならわかると思うが、ファイナル進出、それも初めて、という連絡を受けて、黙っていられる人はまずいないと思う。
余談だが、私は、VOGUEでも初ファイナル進出に立ち会ったが、VOGUEの代表は、ファイナル初進出の電話を受けた直後に「やったーーー!!」と叫びながら、みんなのいるところに駆けてきた。
あとはもうみんなもみくちゃで、大騒ぎである。
スコブルでもそうだった。
白い恋人会場の観客席で待機しているときだったので、みんなは横に長く広がった形で座っていたのだが、「電話番」の人が電話を受けてから泣き出してしまって、ファイナル進出が文字通り端から端までチーム内に知れ渡ってしまった。
それが代表は頭にきて、その人をむちゃくちゃに攻撃したのだという。
代表が電話番をしていなかった時点で、責任は本当は代表にあった。責任者が持つことになっていたから。
「怖いから持ちたくない」といって頑なに拒んだ、代表自身の責任。
なのに、「電話番」を、ボコボコにした。
結果的に私が、代表のところまでその人を直接連れて来いと何度となく命令されても従わず(夜中に、とにかく必ず連れて来い!というようなことを書きなぐったFAXが来たりもした)、電話番だったその人に直接会って、チーム運営業務の引き継ぎを仲介した。
そのため、私だけはその人をかばっていたことがバレバレとなり、その人がくらうはずだった罵倒をくらい続けて、自殺寸前まで追い込まれたという負の連鎖があったりしたのだが。
その人が今は「代表を偲ぶ会」の幹事をやっているというから、ああ、ほんとに病んでる関係だったんだな、共依存だったんだな、と思った。
まるっきりDVの構図じゃん。
誠意を尽くした者がバカを見る。
それはもうよそうよ。