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揉んでも抱けない<56>

第七十二回 欲情するふたなり娘

「な、ナメないでって……?」
 リーダーの美少女に脅す口ぶりで告げられ、アリカは怖じ気づいたように後ずさった。
「水くさいのはアミもそうだけど、アリカ、あんたも同罪だかんね」
「同罪──」
「こんな大事なこと、どうしてわたしたちに相談しないで、ふたりだけで勝手に決めちゃうのよ? たしかにあんたたちは幼なじみかもしれないけど、わたしやレミだってピンクの四つ葉っていう、運命共同体っていうか仲間じゃない。困ったことがあったらどうすればいいのか考えて、支え合って、共に進んでいくべきなんじゃないの!?」
 いきなり真面目なことを言い出したモモコに、アリカはかなり面喰らったようだ。けれど、正論であるのは間違いなく、何も言い返せず黙りこくる。
「そうよね。誰ひとり欠けたって、ピンクの四つ葉じゃなくなっちゃうんだもの。メンバーひとりひとりが、かけがえのない存在なんだから」
 レミも真顔で告げ、自分に酔ったみたいにうんうんとうなずいた。
 そのとき、失神状態にあったアミが「ん……」と呻き、身をもぞつかせる。間もなく、瞼がぱっちりと開いた。
「だいじょうぶ?」
 モモコに覗き込まれても、アミは何があったのか思い出せないらしく、何度もまばたきをした。けれど、ようやく自らの置かれた状況と、下半身丸出しであることに気づくと、慌ててベッドに身を起こし、スコートで股間を隠した。
「わ、わたし……」
 泣きそうに顔を歪めた彼女を、モモコがギュッと抱きしめる。
「ひどいことしちゃってゴメンね。だけど、ひとりで悩まなくってもいいんだよ。わたしたちは、アミの味方なんだから」
 優しく告げられ、アミは戸惑いを浮かべた。
「あたしもだよ。アミのこと、大切な仲間だって思ってるんだからね」
 と、レミも抱擁の輪に加わる。
「ふたりもこう言ってくれてるんだし、脱退のことは考え直そうよ。あたし、アミのいないピン4なんてイヤだもの」
 アリカも涙目で訴え、アミの頑なな気持ちもほぐれたらしい。
「……ありがとう、みんな」
 そうして、四人が固まってえぐえぐとしゃくりあげる。
(──て、いい加減にしてくれないかなあ)
 美少女アイドルたちの友情ごっこを見せつけられ、満也は鼻白んだ。ついさっきまで淫らな戯れに興じていたのに、どうしてこうも変わり身が早いのか。巻き込まれた立場としては、馬鹿にされている気すらした。
 ただ、アミのほうも、そう簡単に脱退の意志を撤回することはできなかったようだ。
「でも……わたしはやっぱり、ピン4にいちゃいけないのよ。みんなに迷惑がかかるに決まってるもの」
「オチンチンがボッキするから? だいじょうぶよ。わたしたち三人で、ちゃんと面倒見てあげるから」
「あと、バレないように、しっかりガードするからさ」
 モモコとレミが言い聞かせても、アミは力なくかぶりを振った。
「無理よ。だって、わたしは……」
「何が無理だっていうのよ。あ、手だと満足できないってこと? だったら、お口でしてあげてもいいわ」
 経験などないくせに、モモコが安請け合いをする。すると、アミが泣き出しそうに顔を歪めた。
「そんなことしちゃダメよ。わたし、ますます我慢できなくなっちゃうわ」
「え、我慢?」
 きょとんとするメンバーを見回し、ペニスの生えた美少女は爆弾発言をした。
「だって、わたしのこれが大きくなるのは、みんなに欲情するからなのよっ!」
 三人の目が驚愕で見開かれる。
「よ、欲情って……つまり、あたしたちとヤリたいとか、オカしたいってこと?」
 怖ず怖ずと訊ねるレミに、アミは間髪を容れずに「そうよ」と答えた。
「レッスンのときとか、みんな薄着じゃない。どうしても、おっぱいやおしりに目がいっちゃうのよ。着替えのときなんて、もうたまんなくなるんだから」
「あっ」
 モモコが声をあげ、アミの下半身を指差す。
「じゃ、じゃあ、そこがまたそんなになってるのは──」
 何と、スコートの前がテントをかたち作り、内部にあるものの昂奮状態をあからさまにしていたのだ。
「そうよ。みんなに囲まれて、いい匂いを嗅いだだけで、こんなになっちゃうの。このままだと、わたし、いずれみんなに襲いかかっちゃうかもしれないわ」
 どうやら股間に生えたものの影響で、異性ではなく同性に惹かれるようになったらしい。これには、満也も唖然とするばかりだった。
(……まあ、四人の中で一番体格もいいし、アミちゃんが本気で襲いかかったら、他の子たちは抵抗もできないだろうなあ)
 グループ内でレイプ騒ぎなどあった日には、解散どころでは済まないだろう。おまけに、襲うのも襲われるほうも、美少女というのであっては。
「そ、そんなオーバーな」
 引きつった笑みを浮かべたレミであったが、わずかに後ずさりをしたところを見ると、本当に犯されるのではないかと怯えているようだ。
「オーバーなんかじゃないわ。わたし、アリカにトイレで──処理してもらってたときだって、何回も襲いかかりそうになったんだもの。親友なのに……」
 これには、アリカも表情を強ばらせる。だが、決意を秘めた眼差しに涙を浮かべると、
「あたしは……いいよ」
 と、きっぱり告げる。共にアイドルを目指した幼なじみの発言ゆえに、アミはかなり驚いたらしかった。
「い、いいよって──」
「あたし、アミにだったら、何をされてもいいもん。バージンを奪われたって」
 大胆な告白に、モモコとレミも息を呑む。さすがに昂奮もおさまったか、アミの股間は平らになった。
(って、マジかよ!?)
 展開が急すぎてついていけない。満也は傍らに腰かけたまま、彼女たちをただ見守るしかなかった。
「──いや、もうちょっと冷静になって考えようよ」
 リーダーらしく、モモコがこの場をどうにかまとめようとする。
「そんな、襲うとかオカすとか、物騒な言い方はやめにしてさ。もうちょっと穏やかにいこうよ。だいたい、無理やりエッチするから、レイプってことになるんでしょ? ふたりが合意すればレイプじゃなくって、立派な愛の営みだわ」
「え?」
「まあ、たしかに……」
 他のメンバーも半分納得という顔でうなずきあう。
「それに、わたしたちは男女交際が禁止されてるじゃない。いくら興味があっても、ピンクの四つ葉のメンバーでいるあいだは、おとなしくしてなくっちゃいけないのよ。だけど、アミは女の子で仲間なんだから、何をしたって男女交際にはならないわ。それこそ、どれだけヤリまくってもね」
 ウインクをしたリーダーに、他の三人は目からウロコが落ちたみたいに表情を輝かせた。
「あ、そうよね」
「つまり、合法的にエッチができるってことじゃない」
「じゃあ、わたしはピン4を辞めなくてもいいの?」
 瞳を潤ませたアミに、モモコが「もちろんよ」とうなずく。
「わたしたちは四人でひとつなの。みんなに幸せを運ぶ四つ葉なんだからね」
「うん……ありがとう、みんな」
「よかったね、アミ」
「あたしたち、これからもずーっといっしょだよ」
 またも感激の面持ちで抱きあうアイドル美少女たちを前に、ひとり蚊帳の外の満也は、やれやれとため息をついた。
(なんか、無理やりいい話に持っていこうとしているみたいだなあ)
 これもテレビの似非ドキュメンタリーに毒されているせいではないだろうか。
「あ、アミのオチンチン、またおっきくなってる」
 レミが素っ頓狂な声をあげた。
「だ、だって、安心したら、つい……」
「もぉ、ゲンキンなんだから」
「そして下半身は元気ってか」
 親父ギャグではしゃぎあう四人。と、アリカがふと真顔になり、ひとりうなずく。
「……アミ、あたしとエッチしよ」
 唐突な誘いに、アミばかりか他のふたりも目を丸くした。
「あたし、ずっと前から決めてたの。アミが手で満足できなくなったら、エッチさせてあげようって」
「アリカ……そこまでわたしのために?」
 アミが涙ぐむ。
「ううん。これは、あたし自身のためでもあるの。だって、あたしは昔から、ずっとアミが好きだったんだもの。バージンをあげられるんなら、こんなに嬉しいことはないわ」
 ポッと頬を赤らめたところを見ると、幼なじみの美少女にレズっぽい恋心を抱いていたのではないか。だが、彼女にペニスが生えたおかげで、肉体の交わりを持つことができるのである。
「うん、いいんじゃないかな。アリカは思いを遂げられるし、アミもスッキリして一石二鳥だもの」
 モモコが賛同し、話は決まった。再びアミがベッドに仰向け、下半身をすべて脱いだアリカもそこにあがる。
「最初に、アリカをちゃんと濡らしてあげなくっちゃね」
「アミ、クンニしてあげて」
「うん」
「ああん、恥ずかしい」
 耳たぶまで真っ赤になりながらも、小柄な少女は幼なじみの顔を跨いだ。和式トイレで用を足すみたいにしゃがみ込む。
「ああ、素敵……アリカのオマンコ、とっても綺麗」
「ヤダぁ。あ、そこ、くさくない?」
「ううん。とってもいい匂いがするよ」
「いやぁ」
 アリカは羞恥にむせび泣いたものの、アミの股間のモノは勢いよくしゃくり上げ、スコートをヒラヒラと躍らせている。同性の秘臭に昂ぶっているのは明らかだ。
(本当にするのか……!?)
 満也は食い入るように少女たちの痴態を見つめた。それでさすがに気がついたか、
「あ、そっか、センセイがいたんだ」
 モモコがこちらをふり返る。
「キャッ、や、ヤダ、どうしよう」
 恥ずかしいところを丸出しにしたアリカは焦ったものの、モモコとレミはまったく気にしない。アミもとにかくヤリたくてたまらない状態なのか、満也をチラッと一瞥しただけで何も言わなかった。
「いいんじゃない? 見ててもらえば」
「初エッチがうまくいかなかったら、アドバイスしてもらえばいいわ」
 彼女たちは、満也が童貞であるとは思いもしないのだろう。
「ほら、アリカ、舐めてもらいなさい」
「え? あ、ヤダ──ああああッ!」
 彼女が無理やり坐らされるのと同時に、ピチャピチャと舐めしゃぶる音が聞こえる。
「きゃふぅううーン!」
 子犬のようなよがり声が、室内に響いた。


※話数とタイトルは、連載時のものです。