ロジカルシンキングのすゝめ -有用性と活用の方法-
世の中には様々なスキルや能力があります。様々なことに活用できる汎用的なものもあれば、何か一つのことに特化した専門的なものまで、枚挙に暇がありません。今回はそんな多種多様なスキルや能力の中でも、私が特にお薦めしたいものとして、ロジカルシンキングについて書いていきます。
本稿は、ロジカルシンキングを詳しく知らないけれど興味のある人、仕事において何か強みを身に着けたいと思っている人などに向けて、ロジカルシンキングの有用性や注意点などについて理解でき、日々の生活に活かしていけることを目的としています。
1.ロジカルシンキングとは
大半の方は、ロジカルシンキングという言葉を一度は聞いたことがあるかと思います。英語のlogical thinking をカタカナ表記したものですが、もはや日本語として定着している観もあります。日本語訳では「論理的思考」とも言います。
ロジカルシンキングの厳密な定義というものがあるのかは分からないのですが、私は以下のようなものだと考えています。
物事同士の関係性について言えば、下図の「三段論法」が有名です。
このように、物事や物事同士の関係性を言語化して誰でも理解できる様に筋道立てて考えることがロジカルシンキングと言えるかと思います。
2.ロジカルシンキングを薦める理由
私がロジカルシンキングを皆さんにお薦めする理由は大きく3つあります。それは、①汎用性が高いから、②出来るようになることや得られる能力が多いから、③才能に依存せず後天的に習得できるからです。
私は、人生の意味について考えてきました。そして、現時点での結論として、他者へ良い影響を与えることが人生の意味の一つであろうと考えています。しかし、私には何か特別な才能があるわけではなく、何かの専門家として、例えば画期的な発明をしたり、或いは感動を与えたりすることは恐らくできません。
それでも多くの人に役立つことはないかと考えたときに行きついたのが、ロジカルシンキングでした。私の中では、ロジカルシンキングは、行動力とコミュニケーション能力に次ぐ汎用的な能力であり、且つ生まれつきの性格や才能にそれほど依存せずに、フレームワークなどを学ぶことで誰でも身に着けることができます。
ロジカルシンキングを自分でも深く理解し、それを皆さんに紹介することが、他者へ良い影響を与えることに繋がると考えています。
①汎用性の高さ
ロジカルシンキングは、上述の通り物事と物事同士の関係性を扱います。そして、それらを考えるにあたって言語を用います。この世の中の大半の物事が言語で表現できるものなので、その全てにロジカルシンキングを用いる余地があることになります。これが、ロジカルシンキングの汎用性の高さです。
今回は扱いませんが、行動力やコミュニケーション能力などの他の能力の欠如すらもある程度は補完できる可能性がロジカルシンキングにはあり、他人の才能にすら対抗できる数少ない能力であると考えています。
②ロジカルシンキングで出来るようになること、得られる能力
ロジカルシンキングを用いることで、以下の能力が得られる、又は養われていきます。
応用力
既存の知識や経験から法則を導き出し、別の物事に適用する力問題解決力
問題解決や目標達成までの筋道を描く力他者への説得力
事実や根拠に基づいて他者に納得感の高い説明ができる力イノベーション能力
複数の物事の要素同士を組み合わせて新しいモノを生み出す力本質把握力
物事の最も重要な部分が何かを把握し、論点や焦点をずらさない力
それぞれの力の活用事例については、「3.活用の具体例」にて後述します。
③誰でも後天的に習得できる
ロジカルシンキングは、言語と論理を駆使します。この二つは、私の考えでは、人間が生まれつきそれらを駆使する素地を持っています。何か特別な才能がなくとも、殆どの人は自然と言語を理解できるようになりますし、先述の三段論法のような論理構造を理解ができます。
つまり、ロジカルシンキングを習得するのに必要な言語と論理は、人間を人間足らしめている能力とでも言うべきで、才能の有無に関係なく持っているものになります。
加えて、ロジカルシンキングに関しては、既に様々なフレームワークが考えられており、それらを活用して当てはめていくだけで誰でも一定の成果を得られるようになっています。
以上から、ロジカルシンキングは基本的には誰でも後天的に習得することができる能力であると考えています。
ロジカルシンキングを習得するにあたっては、意識的にロジカルシンキングのフレームワークを学び、実践していくことも大切ですが、私の場合はほぼ無意識的に学んでいたように思います。具体的には、「読書」と「日常生活で何にでも疑問をもつこと」を通して培われてきたと思います。
「読書」は、文章を読むことで様々な論理構造に触れることになり、自然とロジカルシンキングのスキルが培われていきます。
そして、「日常生活で何にでも疑問をもつこと」は、物事の因果関係について考えることになるので、自然とロジカルシンキングをするようになり、スキルが培われていったのだと思います。
何にでも疑問をもつとなると大変そうに思えますが、私もこの世の全てのことに対して疑問を持っていたわけではなく、折に触れて、「これって何でこうなっているんだろう?」と考えていた程度で、それが習慣化されて自然とできるようになりました。初めは意識的にする必要がありますが、慣れてくると苦もなく出来るようになってくるので、皆さんも良ければ実践してみてください。
因みに、汎用性の高い能力として先述した行動力やコミュニケーション能力などは、生まれつきの性格などに大きく影響を受けると考えています。実際に私自身が、行動力やコミュニケーション能力が優れているとはいえず、何か行動を起こすときに躊躇したり、他人とコミュニケーションを取る際に普通の人よりも苦労をすることが多くありました。内向的な性格の人にとっては、これらの能力を持っている人は才能がある人に見えているかもしれません。
3.活用の具体例
ここでは、ロジカルシンキングの有用性を説明するために、「2.②ロジカルシンキングで出来るようになること、得られる能力」で挙げた各能力の説明と簡単な例を挙げていきたいと思います。
①応用力
応用力とは、「既存の知識や経験から法則を導き出し、別の物事に適用する力」です。応用力がある人は、既に持っている知識や経験を活用することで、未知の事象にも対応することができます。仕事において一を聞いて十を知るような、或いは説明されていないことでも、「これってあれと同じでこういうことですよね?」と言えるような人が応用力のある人です。
応用力は、ロジカルシンキングのフレームワークである、帰納法と演繹法を活用することで身に着けることができます。
応用力の活用例としては、以下のようなことが考えられます。帰納法と演繹法の詳細については別の記事で改めて触れたいと思いますので、ここでは応用力を用いることでどのようなことができるようになるかのイメージを持ってもらえればと思います。
シチュエーション
ある会社において新規取引先へ営業して売上アップを狙う
既存の取引先の中で売上が伸びている取引先の理由(成功事例)を分析
分析の結果、取引先のキーマンと親密な関係を築けていたことと、新商品を初めはお試し価格で購入してもらい、商品を理解してもらった後に正規価格で継続販売できていたのが理由と判明
新規取引先との取引を開始するに当たって、上記方法を参考に、キーマンである営業課長と親密な関係を構築し、新商品を無理強いせずにお試し価格で販売することで、その後の正規価格での定期購買につながり、売上を伸ばすことができた。
既存の成功体験を新規取引先にも適用すること(=既存の経験を応用すること)で、新たな成功を生み出すことができる例になります。注意点として、既存の成功体験が必ず他の取引先にも当てはまるとは限らない(帰納法で導いた法則はあくまでも仮説)ので、もし上手くいかなかった場合には、別の成功事例を見つけて改めて適用していくトライ&エラーは必要になります。
②問題解決力
問題解決力とは「問題解決や目標達成までの筋道を描く力」です。問題解決力のある人は、問題解決や目標達成のために何をしなければいけないのかを論理的に考え、明確にすることができます。会社において、戦略を立てたり予算を達成する方法を考えたりするときなどに役立つ能力です。
問題解決能力は、ゴールと現状を明確にし、その差異を埋めるためには何が必要なのかを考えていきます。その際に、ゴールに至れるように因果関係を考えるのですが、ロジカルシンキングのロジックツリーのフレームワークが役に立ちます。
問題解決能力の活用例は以下になります。ここでも、ロジックツリーの詳細についても別の記事で触れる予定ですので、そういうフレームワークがあるんだな、程度に捉えて頂ければと思います。
シチュエーション
ある製造会社において来年の予算達成に向けた戦略を考える
今期の営業利益8000万円に対して、来年の予算は1億円
営業利益を2000万円増やす必要がある
営業利益を増やすには売上の増加、又は費用の減少が必要
売上を伸ばすには売数量又は売単価の増加が必要、費用を減らすには売上原価の減少、又は販管費の減少が必要
売数量を伸ばすには商品と販売先の視点がある
売単価を上げるには値上げ交渉の必要がある
売上原価を減らすには、原材料と製造工程の視点がある
販管費の中でも金額の大きなものとして人件費と交際費がある
上記視点に立ってそれぞれの解決策の案を考えた結果、最も効果が大きそうな「新商品の市場投入」と「原材料調達ルートの見直し」に優先的取り組もう
上記はあくまでも一例で、予算達成に向けて営業利益を増やす具体的な方法は無数に考えられると思います。ここで重要なのは、2.で現状と目標の差異を把握し目的を明確にすること、3~8.で営業利益を増加させるという目的を要素ごとに分解すること、9.でその営業利益を増やすための具体的な手段を複数出した上で優先度の高いものを選択することです。
初めの営業利益2000万円の増加という抽象的な目標が、最終的には「新商品の市場投入」と「原材料調達ルートの見直し」という一見直接的には繋がっていないように見える具体的な行動に至れる。これが、問題解決力の凄さです。
③他者への説得力
他者への説得力とは「事実や根拠に基づいて他者に納得感の高い説明ができる力」です。他者への説得力がある人は、自分の意見や主張を他人に受け入れてもらいやすくなり、様々な場面で自分が思う通りに事を運べる可能性が高くなります。この能力は、ロジカルシンキングという言葉から最もイメージしやすい能力かもしれません。
他者への説得力は、自分の主張を理由と根拠で支えることで、その意見の良さや正しさを論理的に伝える力です。ロジカルシンキングのピラミッドストラクチャーのフレームワークを用いると、主張をどの理由が支え、どの理由をどの根拠が支えているかを可視化することができます。
他者への説得力の活用例は以下になります。ここでも、ピラミッドストラクチャーについての詳細は割愛します。
シチュエーション
会社に対して自分の考えた企画Aを通したい
会社は何を望んでいるのかを考える
会社は利益の向上を望んでいる
企画Aで利益が向上することを軸に説明しよう
企画Aで利益が向上する理由は、未開拓の市場で競争相手がいないため高い利益率が望めることと、投資金額が小さいにも関わらず想定される市場規模が大きいため費用対効果が良いこと
それぞれの理由を裏付ける根拠として、国の統計データ、研究機関の研究結果、自社で取ったアンケート調査、自社での試算結果があり、それぞれが競合相手がいないこと、競合相手がいない場合は利益率が高くなること、市場規模が大きいこと、投資金額小さくなることを証明している。
他者への説得力は、単に理由や根拠を並べればよいというわけではない点に注意が必要です。上記例の1~2.で会社が何を望んでいるのかを書いていますが、相手の願望や気にしているところに焦点を当てて、そこに合致する内容で主張をし、理由や根拠を準備する必要があります。
仮に相手が重視していない点の主張、例えば上記例で、会社が利益を重視しているのに、社会貢献度に重点を置いて理由や根拠を準備しても、社会貢献度が高いことは理解してもらえるかもしれませんが、企画を通すことはできないかもしれません。
つまり、相手への説得力とは、理由や根拠を準備することに加えて、相手の願望なども考慮した内容にすることで、より納得感が高まり、説得力が生まれることになります。
因みに、相手の願望についても、ロジカルシンキングを用いることで、その時の会社の状況や過去の事例などから、応用力を用いたり論理的な推論をすることで想定することは可能になります。これもロジカルシンキングの汎用性の高さです。
④イノベーション能力
イノベーション能力は「複数の物事の要素同士を組み合わせて新しいモノを生み出す力」です。イノベーションは何もないところから突発的に生まれるというよりは、既存の物事に対して新しい解釈を加えることや組み合わせることで生まれるケースが多くあります。この時、既存の物事がどういった要素で構成されているのかを分解する際に、ロジカルシンキングが役に立ちます。
但し、ロジカルシンキングは過去のデータなどを根拠として論理展開をするのが得意な一方で、根拠がない全く新しいものを考えるのは得意ではありません。新しいものを考える際は、創造的な思考法と言われている「ラテラルシンキング(水平思考)」と組み合わせることが重要になってきます。
以下の例では、物事の分解から新しいビジネスモデル(イノベーション)ができるまでの過程を書いています。
シチュエーション
消費者への直売が当たり前な業界のある会社が他の業界に進出を検討
進出を検討している業界の流通構造は、多段階の卸売業者がおり、そこから小売店を通して消費者にモノが届いている
自社の業界を分析し、消費者へ直売しているという要素を取り出す
進出を検討している業界では殆どの会社が消費者への直売を行っていないが、商品特性を考えても直売は不可能ではない
消費者への直売という自社の業界の要素を、進出を検討している業界に持ち込むことで、その業界では全く新しい流通経路の開拓に成功し、イノベーションを起こすことに成功
上記の例が実際に成り立つかどうかは分かりませんが、自社の業界を論理的に分析することで、どういう構成・構造になっているかを理解することをきっかけとして、イノベーションの元となる材料が得られていることは分かるかと思います。
得られた材料を使ってどのような新しいモノやサービスを生み出すかを考えるのは、先述の通り、ラテラルシンキングを用いるのがよいでしょう。ラテラルシンキングについても、いつか扱いたいと思っています。
ちなみに他の例として、私が以前勤めていた会社の例を挙げます。その会社は農業資材業界に属していましたが、同業界の肥料製品の流通構造は肥料メーカー⇒肥料元売業者⇒肥料問屋⇒小売店⇒農家という多段階でした。しかし、時が経つにつれてITも物流も高度化し、肥料メーカーや肥料問屋が直接農家に販売をするというケースも出てきていました。
イノベーションというには大げさかもしれませんし、同じ業界内の出来事ですが、他業界であるIT業界や物流業界の発達やAmazonなどに代表される消費者への直売の機会の増加の影響を受けて、それらを自分の業界に持ち込み、業界の流通に影響を与えたという点ではイノベーションのようなものと言えるかと思います。
⑤本質把握力
本質把握力とは「物事の最も重要な部分が何かを把握し、論点や焦点をずらさない力」です。本質把握力のある人は、その物事において絶対に外してはいけない核となる部分を見抜き、余計な情報を排除してより的を射た判断や意思決定を行うことができます。
本質を把握する上で重要なことは、その物事の目的について考えることです。つまり、その物事は何のために存在しているのか、或いは何のためにするのかについて考えることです。その目的こそが本質になります。
そして、捉えた本質を常に念頭に置きつつ、本質との因果関係を考えてより具体的な思考や行動などを考えていき、現状からその本質に達する方法を考えていく力が本質把握力です。先述の「何にでも疑問を持つ」という思考の癖をつけておくことが大切になります。
以下、私の別の記事でも取り上げたことがありますが、かつて私の勤めていた会社であった組織の本質に関する例になります。実際の結果は、残念ながら私の考える本質がおざなりにされてしまいましたが、ここでは本質を重視した場合に至るであろう結論を例とします。
シチュエーション
A社で赤字となっているB部門(農業資材部門)の存続についての検討
A社は企業理念として、日本農業の発展に貢献することを掲げている(この企業理念が組織の存在理由=「本質」)
B部門は、日本の農家に対して農業資材を供給しており、日本農業の発展に貢献するには必要不可欠な部門である
よって、企業理念体現の上でも必要な部門であり、赤字だからといって簡単に事業撤退はできない(事業撤退するときは企業としての存在理由を失う=廃業の時)
一方で、赤字のままで事業を継続することが不可能であるのは事実
故に、事業を継続できるように赤字を解消することに全力を尽くすことが必要(大きな利益は必ずしも必要としない)
B部門の赤字の原因は、市場縮小による売上減少、市場で発揮している機能が乏しいことによる競争力不足、流通構造の変化(直売の増加など)への対応不足、同部門の離職率の高止まりによる人材流出などが考えられる。
(具体的な施策)……
具体的な施策まで細かく書いてしまうと非常に長くなってしまうので、例は途中までとしておりますが、重要な点は、1.の本質は何かを正しく把握することです。今回の例では、B部門の上位概念であるA社というより抽象度を上げた対象の目的を考えることで本質に迫っています。それを議論の大前提(指針)に据えることで、B部門の存続についても答えを出すことができます。その後の具体的な施策についても、本質と因果関係で結びつけられる形で議論することができ、話が横道にそれることもなく、論点や焦点のぶれない議論となります。
ちなみに上記の例ですが、実際には企業理念を念頭に置いた対応ではなく、赤字でなくなればよいという考えの元、人員削減や拠点の縮小、利益率が低いとみなされてた取引の停止などが行われていきました。私が退職した際には、その対応は継続中でしたので、現在どのようになっているのかは分かりませんが、企業理念を大切に思っている社員は心安からぬものがあると想像しています。
4.欠点と対策
ここまで、ロジカルシンキングの有用性を書いてきましたが、ここでは欠点についても書いていこうと思います。
残念ながら、一つで万能なスキルというものは存在しないようで、汎用性の高いロジカルシンキングにも欠点が存在します。ただし、欠点があるということを理解し、それを補うための対策を行うことは可能なので、そちらも併せて書いていきたいと思います。
①情報の量と質に左右される
ロジカルシンキングは、物事を論理的に考えていくにあたって、理由や根拠とするための情報がどうしても必要になります。その際に、その情報が少なかったり質が悪かったり、或いは誤っていたりすると、正しい論理展開ができない場合があります。
情報が足りない例
当社は今期の予算として売上を昨年対比120%にする
昨年、A事業や一昨年対比で売上150%となっており伸びている事業だ
今期はA事業に注力して予算達成を目指す
実はA事業の市場は昨年で飽和状態となりこれ以上売上を伸ばす余地はなかった
今期はA事業を上手く伸ばすことができず、結果売上予算未達となった
A事業についての情報が足りず、誤った戦略を取ることになってしまいました。情報が足りていれば、A事業以外に注力することで予算達成できたかもしれません。
情報の質が悪い例
大口取引先のA社が当社との取引を増やしていきたいと考えているという情報が入った
A社に対しての人員を増強し積極的に営業を掛ける
しかし、思ったように売上が伸びなかった
再度確認したところ、当社との取引を増やしたいという情報は、先方の一営業担当者が勝手に言っていただけで、A社としては当社との取引を増やす意向はなかった
情報が誤っていたわけではないのですが、その情報が一営業担当者の個人的な意見であったので、信憑性の観点で問題があり、無駄な労力を使ってしまいました。会社対会社では、その意見が個人的な意見なのか、それとも会社としての意見なのかを見極める必要があります。
情報が誤っている例
業界で新興のB社が新規に取引先を求めてきた
営業部よりB社は財務体質も健全であるとのことで、新規に取引を開始
しかし、すぐに支払遅延が発生
実はB社は資金繰りに苦しんでおり、既存取引先からの仕入れができなくなったため、当社に対して取引を持ち掛けてきたことが分かった。また、営業部はB社の財務体質を把握していながら、売上拡大の為に誤った情報を伝えてきていたことが分かった
その後B社は資金繰りが悪化し倒産してしまい、当社は不良債権が発生した
誤った情報を基に対応した結果不良債権を抱えてしまったという例です。上記例は極端なものではありますが、手元にある情報を基に論理的に考えて正しいと思った選択をしたにも拘らず、芳しくない結果となっています。情報は鵜呑みにせずにその裏付けを取ることも重要になります。
こういったことを避けるためには、どうすれば情報を多く集められるか、質の高い情報を集められるか、正しい情報を集められるかという目的を設定し、そこに向けてロジカルシンキングで問題解決力を発揮していくことが有効だと考えています。つまり、ロジカルシンキングの欠点をロジカルシンキングで補うということです。これも、ロジカルシンキングの汎用性の高さです。
②感情や直感などの非論理的なものを軽視しがちになる
ロジカルシンキングは正確な情報や根拠を大切にするので、統計データや実績の数値などを重視する一方、人間が本来持つ感情・直感・感性といった曖昧なものを議論の前提にされると、根拠が薄いと軽視しがちになります。
これは、一見ロジカルシンキングを行う上では正しいように思えるのですが、実はロジカルシンキングのある部分においては誤りです。それは、ロジカルシンキングにおいて最も重要になる、論理の前提条件の設定に掛かる部分です。
今までの説明と矛盾すると思われる方もいるかもしれませんが、実はロジカルシンキングには人の感情・直感・感性が入り込む(個人的には入り込むべき)余地があります。
例えば、先述の本質把握力において、企業の本質を企業理念としていました。組織の本質がその組織の設立目的であることに疑いはないのですが、実は、ここについては、例えば株式会社(特に上場企業)であれば「株主に利益を還元すること」や「企業価値を最大化すること」を本質とすることもできなくはないのです(私はあまり認めたくはないですが)。そして、どれを本質と考えるかは、個々人の感情や感性、或いはその人の経験や価値観が多分に反映され、議論の余地があります。
ロジカルシンキングにおける前提条件については、下の記事で触れているので、良ければご覧ください。
ですので、非論理的なことも頭ごなしに否定するのではなく、それが議論の本質(或いは前提条件、仮説)に絡むことなのかを考えることが大切です。そして、例え関係のないことだとしても、否定するのではなく、ロジカルシンキングを用いてその観点は関係がないことを相手を思いやりながら論理的に説明することが、対人関係を考えても正しい対応だと思います。
ちなみに、データや数字などは一見絶対的に正しいように見えますが、実は全て過去の結果であって、未来を100%保証するものではありません。過去と連続的に繋がっている未来を描くには頼りになるものですが、非連続的な未来を描くには、寧ろ非論理的な感情や感性などの方に分がある場合もあります。
また、イノベーション能力のところで書いたように、ロジカルシンキングはイノベーションを起こすための材料を得るには有効ですが、その先の全く新しいものを生み出すにはやや不向きです。そちらには感情や感性を活用できるラテラルシンキングが向いています。つまり、イノベーションには二つの思考方法をもつべきということになります。
5.纏め
本稿はロジカルシンキングを詳しく知らないけれど興味のある人、仕事において何か強みを身に着けたいと思っている人などに向けている。
ロジカルシンキングとは「物事や物事同士の関係性を言語化して誰でも理解できる様に筋道立てて考えること」
ロジカルシンキングを薦める理由は①汎用性の高さ②得られる能力の多さ③才能に依存せず後天的に習得できることの3つ
ロジカルシンキングの汎用性の高さは、言語が絡むもの全てに使える余地がある点。また、欠点をロジカルシンキング自身で補える点。
ロジカルシンキングで得られる能力は、①応用力②問題解決力③他者への説得力④イノベーション能力⑤本質把握力
応用力とは「既存の知識や経験から法則を導き出し、別の物事に適用する力」
問題解決力とは「問題解決や目標達成までの筋道を描く力」
他者への説得力とは「事実や根拠に基づいて他者に納得感の高い説明ができる力」
イノベーション能力は「複数の物事の要素同士を組み合わせて新しいモノを生み出す力」
本質把握力とは「物事の最も重要な部分が何かを把握し、論点や焦点をずらさない力」
ロジカルシンキングの欠点の一つ目は、「情報の量と質に左右される」こと。対策として、それらを補う(情報の量と質を上げる)にはどうすれば良いかをロジカルシンキングを用いて考えること
ロジカルシンキングの欠点の二つ目は「感情や直感などの非論理的なものを軽視しがちになる」こと。対策として、他者の意見を頭ごなしに否定するのではなく、本当に非論理的なものが入り込む余地がないのかを考え、そうだとしても、丁寧に論理的な説明を心がけること
6.終わりに
かなり長くなってしまいましたが、ロジカルシンキングについての理解は深まりましたでしょうか。本稿は、ロジカルシンキングを詳しく知らない人、何か強みを身に着けたい人向けということで、ロジカルシンキングの有用性と活用の仕方に焦点を当てていますので、有用性の説明と具体例に重きを置きました。その分、ロジカルシンキングの理論やフレームワークの詳細には敢えて踏み込まないようにしています。それらについては、これから個別に説明の記事を投稿していこうと思っています。
「2.ロジカルシンキングを薦める理由」の項でも書いたのですが、ロジカルシンキングは汎用性の高いスキルです。仕事に限らず、日常生活は勿論、生き方そのものにも影響を与えられるほどだと考えています。
もし、本稿を通してロジカルシンキングに興味を持ってもらい、また、自身の強みとして身に着けていきたいと思われた方が一人でもいれば幸いです。そんな方は、是非ともロジカルシンキングの習得に向けて、本稿や他の投稿者の方の記事を読むもよし、YouTubeなどの動画学ぶなどもよし、私がしていたように読書や物事に対して疑問を持つようにするなどでもよし。日頃のちょっとした意識でできることから始めてみてください。無理は長続きしないので厳禁です。
最後に、私の目的は、ロジカルシンキングのような、才能によらない・後天的に習得できる・汎用性が高いといったスキルを他者に伝えることで、その人がそれを活用して自分の生きたいように生きれる手助けすることです。
今はまだまだ未熟な私ですが、こういった投稿は自身の勉強にもなり、読者の方にも多少は役に立つものと思うので、今後も継続していければと思っています。今後とも、どうぞ宜しくお願いします。
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