【解の一つ】不要なルールはなぜ生まれるのか
私たちの身の回りには、「なんでこんな馬鹿げたルールがあるんだろう?」と首をかしげたくなるようなルールが少なからずあります。私たちの日常に横たわる不要なルールは、過去には必要とされていたものが、時が経つにつれて変質し、人々に害をもたらすようになってきています。
そこで今回は、ルールの本質と変遷、そしてその変革の方法について考えてみようと思います。
1.ルールとは何なのか
まず、ルールについて簡単に定義してみようと思います。
これは国家の法律や会社の規程、学校の校則などが当てはまります。
2.ルールの本質
ルールと聞くと束縛されるイメージがありますが、本来は組織や構成員にとって必要なものです。ルールには組織運営の効率性の向上や構成員のリスク回避などの目的があり、その目的を達成することがルールの本質です。
私はこの本質を「ルールの理念」と呼んでいます。しかし、時が経つにつれて、ルールの理念は失われていくことがあります。
3.不要なルールが生まれる3つの理由
不要なルールが生まれる主な理由は3つあります。
①外部環境の変化
ルールは誰かに変更されない限り変わりませんが、外部環境は絶えず変化し続けます。これによって、ルールで定めたことが、ルールの理念にそぐわない状況が生じる場合があります。いわゆる「ブラック校則」などが良い例で、時とともに変化した社会状況に対してルールが合わなくなってしまいます。
②構成員の変化
①は外部環境の変化でしたが、こちらは内部環境の変化です。ルールが変更されない限り残る一方で、組織の構成員は変わり続けます。これによって、ルールの本質であるルールの理念が上手く継承されず、形だけのルールがそのまま運用されることになってしまいます。
③現状維持バイアス
人が何かの判断をする際に、過去の成功体験などに影響されて、リスクのある現状変更よりも、現状維持を選ぶ方が損失や後悔が少ないと判断してしまう「現状維持バイアス」が働きます。この心理効果が働くことで、然るべきタイミングでのルールの変更や廃止が行われない場合があります。
4.不要なルールかどうかを見極める
不要なルールかどうかを見極めるためには、以下の3点に注目します。
まずルールの本質であるルールの理念を理解します。ポイントは、そのルールが組織をどうするために作られたのか、について考えることです。
次に、ルールが変更されないままでも理念を達成できるかどうかを検証します。もし、そのままでも良ければ、それは不要なルールではないことになります。問題があれば、それは不要なルールのサインです。
最後に、そのルールが現実に即した形になっているかを確認します。具体的には、ルールを運用することによる費用対効果(掛かる時間や労力に対する見返り)が適正かどうかを考えます。適正でない場合は、たとえルールの理念に則っていたとしても不要なルールと言えます。
5.不要なルールを変えるには
ルールを変えるには、その組織においてルール変更の権限を持つ人を動かす必要があります。そのためには、以下の点を説明できるようにする必要があるでしょう。
上記を論理立てて説明できたとしても、現状維持バイアスの問題が残ります。これについては、さらに上の責任を取れる人を巻き込むか、組織だけでなく権限者個人にとっても利益があるように話をもっていくことが良いかもしれません。個人の利益と言っても決して賄賂とかではなく、その人の業務量が減るとか査定がプラスになるとかになります。
6.まとめ
ルールとは、組織において構成員の行動を規定するもので、構成員が変わってもそのまま残り続け、変更には一定の手続きが必要
ルールには、ルールの理念とも呼ぶべき目的があり、組織にとってプラスに働いたりマイナスを回避したりするもの
外部環境の変化、構成員の変化、現状維持バイアスによりルールは不要化する
不要なルールかどうかを判断するには、そのルールの理念を考え、今の運用でその理念が達成できるかを考え、費用対効果も適正かを考える。
ルールを変えるには、その組織の権限を持つ人に対して、ルールと実態が乖離していること、代替案、それによる組織のメリットを論理的に説明できる必要がある。場合によっては、その権限者に対してもメリットを提示できると尚良し。
7.最後に
組織におけるルールの変更は骨の折れる仕事です。私も、かつて在籍していた会社で規程の改定に携わりましたが、中々上位者の理解を得られない時もありました。特に一番の障害は「現状維持バイアス」であると感じました。
この現状維持バイアスは、今回の不要なルールに限らず様々な場面でマイナスの効果を発揮している気がしますので、それと戦うための本を最後にご紹介します。
スペンサージョンソン著「チーズはどこへ消えた?」です。kindle unlimitedを利用されている方は無料で読めます。