【はるかぜ 第2話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新
2. 図書館の窓際
いつものように、俊(しゅん)は放課後の図書館に向かっていた。
そこでいつもと違うことがひとつだけあった。
彼の隣には、ちなつが座っていた。
「ここ、毎日いるんですか?」
俊は隣に座る彼女に思い切って話しかけた。
「うん、勉強するのに落ち着く場所なんだよね。家だとなんか気が散っちゃって。」
ちなつは本から顔を上げ、にっこり笑った。
「先輩、すごい真剣に勉強してますよね。僕、先輩が図書館にいるところ、何度か見かけたことあります。」
俊は少し恥ずかしそうに言った。
「本当?気づかなかったな。君もいつもここで勉強してるよね。集中できる?」
ちなつは優しく尋ねた。
「まあ、普通には…でも、先輩がいるとちょっと緊張しちゃって…」
俊は本音を漏らし、すぐに慌てて続けた。
「いや、その…変な意味じゃなくて!」
ちなつは笑いながら
「大丈夫、変な意味だとは思わないよ。むしろ、そんな風に言ってもらえて嬉しいな。」と答えた。
俊は顔が赤くなり、何を言えばいいか分からなくなった。
ちなつはそんな彼の様子を見て、さらに笑みを深めた。
「君、面白いね。緊張することなんてないのに。私もただの先輩だし、そんなに気にしないでいいんだよ。」
彼女の言葉は優しかった。
「はい…でも、なんか先輩って、すごく大人っぽくて、僕なんかとは違う世界にいる感じがして…」
俊は正直な気持ちを口にした。
ちなつは少し驚いた表情を見せたが、すぐに柔らかい表情に戻った。
「そんなことないよ。私も君と同じで、普通の高校生だし、悩みだってたくさんあるよ。」
「そうなんですか?」
俊は意外な彼女の一面に少し親しみを感じ始めた。
「うん。でも、ここで勉強してると、少しだけその悩みを忘れられるんだ。」
ちなつは窓の外を見つめながら言った。
俊は彼女の横顔を見つめながら、図書館で過ごす時間が少し特別なものに感じていた。