3分小説家|橘藍 たちばなあい

毎週日曜新連載開始|3分で読める短編小説を執筆しています。日常に起こりそうな恋愛をテーマに毎日1話21時頃に更新したいと思っています。1週間読切ですので「寝る前にちょっとだけ読もうかな・・・」そんなちょっとした時間に読んでもらえたら嬉しいです。気まぐれにエピローグも掲載します🐈

3分小説家|橘藍 たちばなあい

毎週日曜新連載開始|3分で読める短編小説を執筆しています。日常に起こりそうな恋愛をテーマに毎日1話21時頃に更新したいと思っています。1週間読切ですので「寝る前にちょっとだけ読もうかな・・・」そんなちょっとした時間に読んでもらえたら嬉しいです。気まぐれにエピローグも掲載します🐈

マガジン

  • 『短編小説 翠の料理人』3分で読める恋愛小説|青春物語

    大学生・酒井楓(かえで)は、徳島県の祖谷渓に魅了され、ある旅館でバイトを始める。そこで出会ったのは、口数の少ない料理に情熱を注ぐ見習い板前・近藤一太。徳島の美しい自然を舞台に、出会い、そして成長を描くハートフルなラブストーリー。友情、夢、そして恋愛が交錯する中で、二人が辿る道は新たな未来へと続いていく。

  • 『短編小説 はるかぜ』3分で読める恋愛小説|青春物語

    高校2年生の高木俊は、いつも優しく見守ってくれる先輩、平子ちなつに密かな憧れを抱いていた。おっとりとしたちなつの笑顔に励まされる日々だったが、そんな彼女ももうすぐ卒業の時期が迫っている。高校最後の1年、ふたりが過ごす何気ない日常が、少しずつ特別なものに変わっていく―。温かくも切ない、青春物語。

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【翠の料理人 第1話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

1. 旅館での出会い徳島県の祖谷渓。 深い渓谷とその向こうに広がる青々とした山々は、私がこれまで住んでいた宮城の景色とは全く違う。 ここで働き始めて3日目、ようやく旅館の仕事にも慣れてきたけれど、どこか自分がこの地に馴染めていないような感覚があった。 「楓(かえで)ちゃん、お疲れ様。少し休んでおいで」 と、女将の木内早苗(さなえ)さんが微笑む。 早苗さんは旅館の女将として有名で、温かい笑顔が印象的な女性だ。 彼女がいるから、私も少しずつこの場所に馴染んでいるのかも

    • 【翠の料理人 第8話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

      8. 新たな道旅館での最後の日、私は荷物をまとめていた。 徳島での生活が終わろうとしていることを考えると、胸が締めつけられるような思いがした。 この場所で過ごした日々、一太と過ごした時間、すべてが大切な思い出になっている。 「楓ちゃん、もう帰るんだね」 早苗さんが私に声をかけた。 彼女はいつもの優しい笑顔で、私にお別れを言いに来てくれた。 「はい、本当にお世話になりました」 深々と頭を下げると、女将さんは私の肩を軽く叩いてくれた。 「またいつでも帰っておいで。

      • 【翠の料理人 第7話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

        7. 二人の距離コンテストが無事に終わった翌日、一太は再びいつもの厨房に立っていた。 コンテストの結果は見事なもので、彼の料理は高い評価を受け、賞も獲得した。 しかし、彼自身はどこか落ち着いており、大きな騒ぎをするでもなく、淡々と仕事を続けている。 「一太さん、本当におめでとうございます!」 私は彼の背中越しに声をかけた。 「ありがとう。でも、これがゴールじゃない。まだまだこれからだ」 彼の声は冷静だったが、その中には決意が感じられた。 一太は、賞を獲ったことを

        • 【翠の料理人 第6話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          6. 料理人としての覚悟一太との休日が終わり、私たちは少しずつ距離を縮めていったように感じた。 だが、それでも彼の中にはまだ何か隠されたものがある。 彼が料理人としての道を歩む理由、その背後にある謎は解けないままだ。 ある日、旅館の厨房で一太が師匠の林さんと料理について真剣に話し合っている姿を見かけた。 普段、口数の少ない一太が、ここでは目を輝かせて自分の考えを堂々と話している。その姿は、いつもの彼とは違って見えた。 「一太、今日の料理はよかった。だが、まだまだお前

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        【翠の料理人 第1話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

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        • 『短編小説 翠の料理人』3分で読める恋愛小説|青春物語
          7本
        • 『短編小説 はるかぜ』3分で読める恋愛小説|青春物語
          8本

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          【翠の料理人 第5話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          5. 夢への一歩翌日、私は一太の言葉を胸に、いつも以上に張り切って仕事に取り組んでいた。 彼が目指す料理、それは単なる食べ物ではなく・・・その人を想い、心を込めてつくるもの。 そんな彼の夢を、私は全力で応援したい。 自分に何ができるのか、まだはっきりとはわからないけれど、そばで支えることから始めようと思った。 昼休み、私は旅館の庭にあるベンチで一太と一緒にお弁当を食べていた。 彼は相変わらず寡黙だが、どこか以前よりも少し心を開いているように感じた。 「一太さん、次

          【翠の料理人 第5話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【翠の料理人 第4話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          4. 心の影その日の夜、仕事を終えて自分の部屋に戻ると、私は一太との料理の時間を思い出していた。 彼の手際の良さや、少しずつ見え隠れする彼の内面。 自分でも驚くほど、彼のことが気になり始めている。 「楓、今日のバイトどうだった?」 里帆からのメッセージがスマホに届く。 私は少し笑いながら返信した。 「普通だったよ。でも、一太さんって意外と話すんだよね」 「一太さんって誰?」 「ああ、旅館の厨房見習いの人。あんまりしゃべらないんだけど、料理のことになると真剣で…

          【翠の料理人 第4話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【翠の料理人 第3話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          3. 料理と心の距離その週のある夕方、仕事がひと段落した後、私は厨房へと足を運んだ。 約束通り、一太に料理を教えてもらうためだ。 正直、少し緊張していた。 彼と二人きりでの時間がどうなるのか、まだ全然わからない。 でも、一太の料理に対する真剣さに触れてみたいと思っていた。 「お邪魔します…」 そう声をかけると、彼はすでにまな板の前に立っていた。 彼は無言で頷くと、用意していた食材を指し示した。 「今日は、簡単なものから始めよう。まずは野菜の下ごしらえから」

          【翠の料理人 第3話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【翠の料理人 第2話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          2. 静かに流れる時間翌朝、私はいつも通り旅館の掃除をしながら、昨日の一太の姿を思い出していた。 厨房で黙々と働く彼の姿には、どこか近寄りがたいものがある。 けれど、同時にその背中には何か隠されたものを感じてしまう。 なぜか彼のことが頭から離れなかった。 その日、女将の早苗さんが私にある仕事を頼んできた。 「楓ちゃん、一太君が商店街に行く用事があるから、一緒に荷物を運んでほしいの」 「えっ…、私がですか?」 突然のことに驚きつつ、私は少し緊張していた。 あの寡

          【翠の料理人 第2話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【はるかぜ 最終話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          エピローグ: 桜の下で再会してから数ヶ月が経ち、俊とちなつは何度か会っていた。 桜の季節が終わり、初夏の爽やかな風が吹くある日、二人は久しぶりに一緒に過ごすために出かけることになった。 「俊くん、今日はどこに行こうか?」 ちなつは明るい声で問いかけた。 「そうですね…少し歩いてみませんか?あの桜並木のところに行ってみたいんです。」 俊は提案した。 二人が再会したあの桜の道にもう一度訪れることが、彼にとって意味深いと感じていた。 「いいね、桜はもう散っちゃったけど

          【はるかぜ 最終話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【はるかぜ 第7話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          7. 再会それからしばらく経ち、俊は大学生活に慣れ始めていたが、時折ちなつのことを思い出していた。 彼女との思い出は鮮明で、特別な存在であり続けていた。 そんなある春の日、俊は大学の近くの街を歩いていると、桜の並木道でふと懐かしい声を耳にした。 「俊くん?」 振り返ると、そこにはちなつがいた。 「先輩…!」 俊は驚きながらも、すぐに嬉しさがこみ上げてきた。 「久しぶりだね。元気だった?」 ちなつは微笑んで、桜の花びらが舞う中で俊を見つめた。 「はい、元気です

          【はるかぜ 第7話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【はるかぜ 第6話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          6. 卒業式春が近づき、卒業式の日が迫っていた。 ちなつは高校を卒業し、大学に進学することが決まっていた。 俊は彼女との別れが近づいていることを感じ、心の中が複雑に揺れていた。 「もう卒業ですね。なんか…寂しいです。」 ある日の放課後、俊はちなつに声をかけた。 「そうだね、時間が過ぎるのってあっという間だよね。」 ちなつは少し寂しそうに笑った。 「先輩がいなくなるなんて、まだ実感が湧かないです。でも、先輩ならどこに行ってもきっと大丈夫です。」 俊は真剣な顔でち

          【はるかぜ 第6話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【はるかぜ 第5話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          5. クリスマスの約束クリスマスが近づくと、街はイルミネーションで彩られ、俊の心も少しずつ浮き立っていた。 俊はちなつと親しくなってきたことを感じつつも、次のステップに踏み出す勇気が出ないでいた。 「先輩、あの…もしよかったら、クリスマスに一緒に出かけませんか?」 放課後、意を決して俊はちなつに声をかけた。 「え?クリスマスに?」 ちなつは少し驚いた顔を見せたが、すぐに微笑み、 「いいよ。楽しそうだね。」 と答えた。 「本当ですか!?ありがとうございます!」

          【はるかぜ 第5話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【はるかぜ 第4話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          4. 体育祭の絆体育祭の当日、俊はクラス対抗リレーの選手に選ばれていた。 俊自身は足が速い方ではなかったが、仲間と一緒に頑張ることを決意していた。 しかし、リレーの最後の走者となったとき、すでにクラスは他のチームに大きく差をつけられていた。 「どうしよう、これじゃ負けるかも…」 バトンを手にした俊は焦りとプレッシャーで足がすくむ。 「頑張れー!高木くん、いけるよ!」 突然、応援席から聞こえた大きな声。 振り返ると、ちなつが手を振って応援していた。 「先輩…?」

          【はるかぜ 第4話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【はるかぜ 第3話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          3. 文化祭の奇跡文化祭の準備が佳境に入り、俊のクラスでは模擬店の準備に追われていた。 一方で、ちなつは3年生の劇の練習で忙しそうだった。 「先輩、劇の準備、順調ですか?」 俊は廊下で彼女に会った時、勇気を出して声をかけた。 「うん、なんとかね。でも結構大変。台詞覚えるのが苦手でさ…」 ちなつは苦笑いを浮かべた。 「え、先輩でも台詞覚えるの大変なんですね。いつも完璧に見えるから、そういうこと想像できなかったです。」 俊は驚いて言った。 「そんなに完璧に見えるか

          【はるかぜ 第3話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【はるかぜ 第2話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          2. 図書館の窓際いつものように、俊(しゅん)は放課後の図書館に向かっていた。 そこでいつもと違うことがひとつだけあった。 彼の隣には、ちなつが座っていた。 「ここ、毎日いるんですか?」 俊は隣に座る彼女に思い切って話しかけた。 「うん、勉強するのに落ち着く場所なんだよね。家だとなんか気が散っちゃって。」 ちなつは本から顔を上げ、にっこり笑った。 「先輩、すごい真剣に勉強してますよね。僕、先輩が図書館にいるところ、何度か見かけたことあります。」 俊は少し恥ずか

          【はるかぜ 第2話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          【はるかぜ 第1話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新

          1. 雨の日の出会い放課後、急に降り出した雨。 高木俊(しゅん)は傘を忘れてしまい、校門前で困っていた。 「どうしよう、今日はこんなに降るなんて思わなかったし…」 俊は立ち尽くしていた。 「傘、忘れたの?」 突然、後ろから優しい声がかかる。 振り返ると、そこには一個上の先輩、平子ちなつがいた。 「え、あ…はい。忘れちゃいました」 と俊は少し驚きながら答えた。 「そっか、じゃあ一緒に帰ろうか。私の傘、大きいから大丈夫だよ。」 ちなつは微笑んで、自分の傘を広げ

          【はるかぜ 第1話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新