【はるかぜ 第1話】3分で読める恋愛小説|青春物語|毎日21時更新
1. 雨の日の出会い
放課後、急に降り出した雨。
高木俊(しゅん)は傘を忘れてしまい、校門前で困っていた。
「どうしよう、今日はこんなに降るなんて思わなかったし…」
俊は立ち尽くしていた。
「傘、忘れたの?」
突然、後ろから優しい声がかかる。
振り返ると、そこには一個上の先輩、平子ちなつがいた。
「え、あ…はい。忘れちゃいました」
と俊は少し驚きながら答えた。
「そっか、じゃあ一緒に帰ろうか。私の傘、大きいから大丈夫だよ。」
ちなつは微笑んで、自分の傘を広げた。
「えっ、でも、先輩に迷惑じゃないですか?」
俊は少し戸惑ったが、ちなつは首を横に振った。
「全然迷惑じゃないよ。困っている人を見過ごせないタイプなんだ、私。さあ、早く濡れる前に入りなよ。」
そう言って、彼女は俊に傘の端を差し出した。
「ありがとうございます…じゃあ、お言葉に甘えて。」
俊は少し恥ずかしそうにしながらも、彼女と一緒に傘に入った。
歩き始めると、ちなつが話し始めた。
「そういえば、君ってどこのクラス?見たことある気がするんだけど。」
「2年のB組です。先輩は、3年の…A組ですよね?」俊は少し緊張しながら答える。
「そうそう、よく覚えてたね。君、真面目そうだもんね。」ちなつは楽しそうに笑った。
「いや、そんなことないです…ただ、先輩が目立つから。」俊は顔を赤らめた。
「え?目立つ?私、そんな目立ってたかな?」
ちなつは驚いた表情を浮かべた。
「先輩、いつも笑顔で、なんか周りの空気が明るくなるっていうか…だから、よく見かけるなって思ってました。」
俊は少し恥ずかしそうに言った。
「そんな風に思ってくれてたんだ。
ありがとう。嬉しいな。」
ちなつは嬉しそうに微笑んだ。
雨音が静かに響く中、二人の距離は少しずつ縮まっていく。
俊はその瞬間、自分がちなつに惹かれ始めていることに気づいていた。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!