🌸あとがき＆引用参考文献

　『蒼天に鳩を放て！』を読んでくださり、ありがとうございます。
改めまして、祈祷師の橘と申します。
　２０２２年春から２０２４年現在まで、私は五芒星巡りと関ってきました。
この探求は、その記録でもあります。

　私は、自分が「霊能者でよかった！」と思ったことがありません。
そして、自分の個性(霊能力)を「世のため、人のために使いたい！」とも思いません。
できれば、ごく一般的に生活し、現実的な手段で社会貢献がしたい。
いつもそう願っています。
　ですが、私の願いとは裏腹に、目に視えない世界は向こうからぶつかって来るわけで…。
五芒星巡りも、そうやって突然ぶつかってきたもらい事故でした。
　経験上、目に視えない世界のアタックから逃れることは(ほぼ)出来ません。
ぶつかったが最後、それが私に過失のないもらい事故だろうと対峙するしかないのです。
とんずらする機を失った私は、２０２２年の春、アメーバブログという媒体で五芒星巡りの警鐘記事を公開しました。
この探求記は、そこから現在に至るまでの記録の連なりとも言えます。

　この二年数か月は、まさに激動でした。
私は、現実生活と目に視えない世界でそれぞれマルチタスキングをこなしながら、痛んだ身体の修復に努める日々を送っていました。
そのせいで、ブログやnoteも更新できず、折々いただく読者さんからのメッセージやコメントにも満足に返答できずじまい...。
それでも、心配し、励ましと応援を送ってくださった読者さんのなんと多いことか…。
皆様のあたたかいお心遣いが、激動に揉まれる私を和ませてくださいました。
この場を借り、改めてお礼をさせてください。
本当に、本当にありがとうございました！

　また、家族にも大いに支えられた二年数ヶ月でした。
霊能者の家族というポジションは、かなり難しい立場です。
例えば我が家の場合、霊能者は私だけで、父と母は霊視ができません。
よって、両親は私が視て感じている世界を共有できないわけです。
だから、霊障でのた打ち回り、悪霊・怨霊・生霊と対峙する娘を彼らは見守るしかないわけで…。
　多くの場合、霊能者の家族がとる態度は、崇拝か拒否・否定だと言われています。
つまり、霊能者である家族を崇拝し、妄信し、自慢に思うか…。
あるいは、気味が悪い存在として拒否し、霊能力自体を否定するか。
そのどちらかに傾きやすいということです。
　その点、我が両親はいい塩梅で中庸です。
そして、そっとしておきながらも、現実生活のサポートは抜かりなくしてくれます。
父と母の愛情がなければ、私は恐らく今日まで生きていません。
私を霊能者ではなく、普通の娘でいさせてくれる両親に感謝しています。
お父さん、お母さん。ありがとう！

　それと、もう一人感謝したい人がいます。
Ｃさんという知人です。
怨霊達と対峙していたある晩、私は風呂場で意識を失いそうになっていました。
心臓に激痛が走り、みるみる呼吸が出来なくなったのです。
原因は、心臓にかけられた呪詛なのですが…。
ちょうどその晩は、両親とも出かけていて家には私一人でした。
(まずい。死ぬかも…。)
死を察した瞬間、脳裏を過ぎったのは、

『中年女性、浴室で全裸遺体。死因は心臓発作か？』

という新聞の見出し…。
(あかん！まだ死ねない！)
死亡フラグと羞恥心を天秤にかけ、飛びそうになる意識を必死で繋ぎとめていると、

「○○さん(私の本名)！心臓を下に！姿勢を低くして！」

突然現れたのは、Ｃさん(生霊)でした。
Ｃさんとは数年前まで交流がありましたが、最近は没交渉です。
その上彼女は、青森からずっと離れた場所に住んでいます。
(Ｃさん！？なんで！？？)
ビックリしましたが、Ｃさんの指示通り体勢を換え、私は呼吸を整えました。
Ｃさんは医療従事者です。
彼女の的確な医療指示によって、何とか私は一命を取り留めることが出来ました。
それにしても、なぜＣさんは私のピンチに気づいたのか。
未だに謎です。
もともと彼女は並みの霊能者より霊的感性が優れていますし、何か察するところがあったのかもしれませんが…。
「ありがとう、Ｃさん。おかげ様で全裸遺体をまぬがれたよ～。」
お礼を伝えると、Ｃさんは泣きそうな顔で、

「○○さん。こんな時に、傍にいられなくてごめんね。でも、神様が絶対に助けてくれるからね。」

と何度も言い、肉体に帰っていきました。
Ｃさんと私が離れたのは、Ｃさんのせいでも私のせいでもありません。
距離をとった方が、互いに心地よくいられると双方で判断したからです。
だからね、Ｃさん。
あなたが謝る必要なんて、これっぽっちもないんだよ。
助けに来てくれてありがとう！
ピンチに駆けつけてくれたあなたの手は、とても温かかったです。

　さて、あとがきに何を添えたらよいだろう。
私に関ってくれた方々への謝辞を書く以外、何か必要なことはないか。
神様に確認したところ、

「五芒星巡りは危険ですと、再度書いてください。」

こういうオーダーが入りました。
五芒星巡りの危険性については、『蒼天に鳩を放て！』で繰り返し書いています。
それでも、あとがきで警告を重ねる理由を尋ねると、

「五芒星巡りは危険ではないと信じる方を、信じたい人がいます。」

と、神様は言います。

　信じたいものを信じたい。
それは、誰の心にも生まれうる感情でしょう。
ただ、それこそが妄信だと私は思うのです。
『哭く生霊』でも書きましたが、信じたいものを信じたいと願う時、人の視野はかなり狭くなっています。
そして、誰かの妄信は、妄信された人を失敗できない状況へ縛りつけてしまうのです。
好意があればこそ、信じたい。
そういう人もいるでしょう。
ただ、好意を持った人にのびのび活動してもらいたいなら、その人の失態を笑って受け流せる環境を整えることもまた愛だと私は思います。
その点で、

「五芒星巡りは危険(という意見もある)。
　だから、安全を帰してやらない。」

こういう発想が、あらゆるリスクマネジメントに繋がるのではないでしょうか。

　最後に、個人的に面白かった話を一つ。
この探求を書き進めている間、怨霊や悪霊、地の底に沈んだモノはみんな口を揃えて、

「書くな！
　お前の言霊を豊葦原中つ国中に広めるな　
　ぁ！」

と、喚いていました。
私は、大作家でもなく、応援してくれる読者さんの数もトップブロガーほど多いわけでもありません。
だから、

(どうせ魔物のビックマウスだろ。
　馬鹿ほどいちいち規模のでかい話をする。)

と、鼻で笑って相手にもしていなかったのですが…。


　ある日、母がこんなことを言いだしました。
曰く、

「あんたの見ている世界はさ、私ら視えない人間からすると完全にフィクションなんだよ。
あんたにとっては、ノンフィクションだろうけど。」

とのこと。
確かになぁ…と思った私は、

「じゃあ、この『蒼天に鳩を放て！』を漫画にしたら面白いかもね。」

何の気なしに、思い付きを口にしました。
すると、

「やめろ！漫画になったら、もっと(『蒼空に鳩を放て！』が)広がるだろうが！」

と、悪霊達が猛烈に抵抗を示します。
　彼らは室町時代に生きていた悪霊です。
日本最古の漫画といわれる鳥獣戯画が描かれたのは、たしか鎌倉時代。
そして、鳥獣戯画は物語性に富んではいますが、まだ絵巻物としての風合いを色濃く残しています。

「あんたら、漫画って何か知らんでしょうよ。」

ぷぷぷ…と笑いを堪えて聞いてみたところ、

「知っておるわ！
　お前の言霊に色と絵がつけば、あれ(蒼天に　
　鳩を放て！)はもっと多くの人間に届いてしま
　う！だからやめろ！」

なんと悪霊達は、「人間に長くとり憑いてきたから、漫画が何かくらい知っている！」とのたまうではありませんか。
しかも、色と絵が乗ったらって…漫画のカラー原稿まで把握している始末です。

「あーあ、漫画にならないかなぁ～。」

あまりに悪霊達の発言が面白かったので、あえて脅して(？)揺さぶりをかけておきました。
それほど、魔物や悪霊がこの探求の漫画化を拒むのであれば、私が描いても良いのですが…。
なにせ、我が画力は、

この程度なもので(笑)。

いつか誰かがバトンを繋いでくれ、悪霊・魔物がほぞを噛む日がくることを願っています。

長い探求にお付き合いくださった皆様。
心から感謝いたします。

ゴーストバスター並みのド派手アクションで悪霊・怨霊を祓ったり…。
どこかの地域に結界を張って国防したり…。
そしてそれを、逐一ＳＮＳで報告したり…。

私はそういう巫(霊能者)ではありません。
そして、そうありたくもありません。

青森のカミサマは、
自然密着型で神仏と共に生きる存在ですから

映えない祈祷師でおおいに結構！
派手でもなく華もない、毎日たんたんと続いていく当たり前の暮らしを、これからも神仏と共に続けてゆければいいなと思っています。

大自然にまします、大好きな神様方。
優しく見守ってくれる、仏様方。
日本と、日本に生きる全ての生命を守ってくれてありがとう！
終わりにかえて。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　橘

岩木山

【引用参考文献】

吉村　哲朗　2017　津軽のカミサマ－神・仏・霊との出会い－　トランスパーソナル心理学/精神医学　Vol16,No1,Mar,p,10-p.23

伊藤　耕一郎　2021　心霊科学と精神世界：２つの霊性文化　　ちさやまと:百日物語　p.35-p.57

蓮見　清一　2015　呪術と祈祷の日本史　宝島社

豊島　泰国　1998　図説日本呪術全書　株式会社原書房

大塚　秀見　1990　呪術の諸類型序説－ファン・デル・レーウを中心に－　智山学報代三十九巻

James G.Frazer　1870 金枝篇　永橋卓透介訳　岩波文庫

遠野市立博物館　2023　遠野物語と呪術　遠野市立博物館令和5年度夏季特別展　図録

柳田国男　1955　遠野物語　KADOKAWA

山田　雄司　2007　跋扈する怨霊　祟りと鎮魂の日本史　吉川弘文館

武光　誠　　呪術が動かした日本史 陰陽師ともののけの戦いの歴史　青春出版

ローズマリー・エレン・グレーリー　1996　魔女と魔術の辞典　原書房

西村　昌能　2003　星と☆形－The Symbol Of Star－　第４章　天文教育3月号

永井　路子　1976　人物日本の歴史７　南朝と北朝　小学館

永積　安明　1975 日本の古典文学13　太平記　さ・え・ら書房

井沢　元彦　1998　逆説の日本史　太平記と南北超の謎　小学館

岡野憲一郎　2007　恥の理論から見た自己愛問題　精神療法,　33,　300-310．

Marie-France,H　1999　モラルハラスメント　ひとを傷つけずにはいられない　紀伊国屋書店

村山　修一　1970　〈論説〉院政期の陰陽道　史林　53(２)：139－170

久保田　至誠　2011　滅びゆく季語－自然環境変化と歳時記　飯塚書店

古代政治社会思想　1979  日本思想大系8  岩波書店

深澤　瞳　2012　禹歩・反閉から見固めへ－日本陰陽道展開の一端として－　大妻国文　第43号　

坂口　太郎　後醍醐天皇、倒幕の道へ　宗教・文化研究所公開講座講演録要旨

吉野　裕子　2014　隠された神々　古代信仰と陰陽五行　河出文庫

三橋　健　2010　図説　あらすじでわかる！日本の神々と神社　青春出版

山田　雄司　2014　怨霊とは何か　菅原道真・平将門・崇徳院　中央公論新社

畑　アカラ　2919　古代天皇家「八」の暗号　ヒカルランド

瀧音　能之　2012　地図でスッと入る頭に入る　古代史　昭文社

平藤　喜久子　2018　日本の神様解剖図鑑　エクスナレッジ

小松和彦(監修)　2021　日本の神様　起源と物語　宝島社　

高田　公太・鶴乃　大助　2024　青森の怖い話　竹書房