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東欧旅行記 day9 社会主義の遺物たる大宮殿を訪れる

ブカレスト、ルーマニア最大にして首都であるこの街は、かつて東欧のパリと呼ばれる程の美しさを誇っていたらしい。ただし共産主義時代を経て旧市街の一部以外は殆ど区画整理されて東側あるあるの無機質な街並みになってしまった。かつての様相を取り戻すべく諸々努力がされているらしいがその道程は長い。

そんな罪深い共産主義時代の象徴が、街のド真ん中に聳える国民の館。

ルーマニア共産党書記長ニコラエ・チャウシェスクの命令で1984年に着工されたウルトラデカデカビルヂングである。その大きさたるや半端なく、延床面積は当時世界で二番目に大きい規模だったという(1位は米国国防総省ペンタゴン)

なお1989年のルーマニア革命時は7割程しか完成してなかったが、このまま未成ってのもなぁ、ということでそのまま国民から建設費を税金で毟り取って1997年に完工させた。革命の理由って無駄遣いなくしたいからってのもあったはずでは、、、

NTTデータよ、お前グローバル企業だったのか

16時からこのデカデカビルの見学ツアーの申し込みをしていたので早速入ろうとするも、前述の通り建物がデカすぎるうえに出入口も何箇所もあるため、どこが集合場所かさっぱり分からない。しかも全ての出入口に警備員が突っ立っており(当たり前)、通ろうとすると

「ここじゃない、あっちのゲートに行け」

と言われ、そのあっちのゲートとやらに言っても、

「ここじゃない、向こうのゲートに行け」

と突き返される。

国民の館。ツアー入口はここではない

今思えば完全にたらい回しの体だが、そうこう正しい入口を探して走り回っている内にしてるうちに無常にも16時は過ぎてしまい、一気に脱力モード。ただ単に国民の館の周りを走り回るだけの悲しい存在になってしまった。

ただこれで終わりなんて余りにも勿体ないので、国民の館の西翼を改装して作られた現代芸術美術館に行く。ここも数回たらい回しされたが無事に到着することができた。

嬉しいことに毎月第一日曜日はフリーデーらしく入場料はタダ。

フロアは全体で5階建てだが、正直見所と言えるのは2階部分のみ。5階はテラスはあるもののそれ以外工事中だし、そもそも4階に至っては閉鎖状態

一番ウケたのは、でっかいチンアナゴにプロペラ的な羽?を生やした謎のオブジェ。ビッグアナゴヘリコプターみたいなタイトルなんやろうな〜笑、と思って説明文を見ると、正しい作品名はOld Pilot Cucumberだった。あまりセンス変わらない気もするが、チンアナゴではなくキュウリだったようだ。

現代美術館の5階テラスから国民の館を
地元の子供の絵。

ルーマニアのみならず中東欧では電動キックボードが普及しており登録すれば誰でも使うことができる。利用料は結構高めだが、街中を歩かずに疾走できるのはとても爽快。なお速度制限が2種類設けられており、安全重視するなら15km/h迄のプランであるが、走り屋用に40km/h迄の爆走走り屋ブイブイプランも用意されているとか。

勿論この電動キックボードにはシートベルトなんてないので車にぶつかったら間違いなく死ぬし、市内は石畳(しかもところどころ剥げている)や段差も多いのでミスって躓くと、こちらも死まっしぐらである。あまりにも防御力が貧弱すぎる。ちなみにベルや警笛もないので存在すら気付かれず轢かれる可能性も大だ。

せめて三輪スタイルしてバランスを取れ。

この電動キックボード(BOLTという)を用いて旧市街へ。東欧のパリの名残を見せてくれ、と願いつつ入るも、全体的にはパリはパリでも汚いパリを運んできたような感じの街並み。なんなら運ぶ途中に何回か落としてるな。ただし屋外ピエロ劇場が開催されていたり、小さなパサージュの中ではシーシャ屋が所狭しとあったり、ナイトクラブが夜通しブイブイEDM垂れ流していたりと、活気自体はモダン的だがちゃんとある。

まぁ優雅か?と言われるとノン!であるが。

旧市街
旧市街でやってた屋外舞台
旧市街のオシャン教会
世界で一番美しい本屋に選ばれたらしい
日本ブックのコーナー

あと意外にも日本の雑貨や日本のガイド本を置いているショップが多い。ルーマニアから本邦は結構な関心を持たれているようで嬉しい。現地の女性二人組がオオゥ、ムラカァミ…!と村上春樹の本を前に呟いていた。

そういえば現代芸術美術館に展示されていた地元の子供たちの作品にもノラガミとDr.ストーンがあったしなぁ。

晩飯は屋台飯。

9時起床。本日は午後便にて遂に帰国の途に付くわけだが、まさかブカレストに来て国民の館に入りませんでした、なんて言おうものなら帰国後皆様に石を投げられること待ったなし。え、現代芸術美術館に行っただろ?いやあれは同じ建物やったけど内装リノベされまくっててぶっちゃけ別物や。

てなわけで国民の館リベンジ。

11時にガイドツアーの集合場所に向かう。今回はちゃんと念入りに場所を確認していたので問題なし。ただしそこは昨日警備員に進入を拒まれた場所であった。おい警備員??どういう了見かね??え??給料を返上しなさい??

なお帰国便の離陸時間は1435である。

国民の館。ツアー入口はここから

パスポートチェックに金属探知機という空港並みのセキュリティを抜けて国民の館への入場に成功。基本的に日本の国会議事堂みたく中で1時間おきに行われているガイドツアーに参加する必要があり、それ込みの入場料は一人頭60レウ≒1800円だが、今回僕が申し込んだのはガイドツアーに参加するためのツアー、というクソややこしいやつなので実質何もしてないのに中間マージンとして1300円位を追加で取られている。中抜きは日本特有の素晴らしい(死)文化だと思ってたので悔しい。

さて、実際に入ってみた国民の館であるが、内装が豪華絢爛であるのは事実だが宗教に否定的な共産主義らしく西欧の宮殿で見るようなフレスコ画は数えるほどしかなく、変わって精巧な彫刻が至る所に目に付く。

国民の館
国民の館

ガイド曰くこの国民の館の部屋数は3000室を超え、トイレだけで200箇所もあるらしい。階段、廊下、壁、天井等四方八方に大理石が使われているが、その使用量はなんと500万㌧。戦艦大和は7万㌧なので、このデカデカビルはだいたい大和70隻分である。

そしてこれだけ重いので地盤沈下が4メートルも絶賛進行中とのことである。そりゃそうやわ

こんなデカデカな建物なうえに何故か調度品は国産にすることに拘ったせいで金がかかることかかること。

でも天才チャウシェスクさんは、軍人にやらせれば金かからんし秘密保持もしやすいやろ!の精神で軍に丸投げしたため少なくとも人件費はかなりケチることに成功した模様。ただ当然建築のプロではないので空調が割とポンコツになった。

国民の館
円卓
チャウシェスクの仕事部屋らしい


12時にツアーは終了。国民の館の規模的にはツアーが1時間で終わるなんて短いんじゃね?と思う人もいるだろうが、ガイド曰く建物全てをガチで見て回ろうとするなら18時間というハリーポッターの全作イッキ見コースに突入する羽目になる。

そして実際のところ殆ど大小の差はあれど会議室の見学ばかりなので最後の方は飽きてしまうのだ。

電動キックボードを駆って1220には宿に帰還して荷物を掻っ攫いタクシー乗車。

おらっ!!!空港に行けぃ!!!!

ハリィ!ハリィ!と急かす僕に、たぶん英語が分からないルーマニアンドライバーはとりあえず意図だけは察したのか道中が渋滞で赤く染まったグーグルマップを見せてくる。

あれ?これ終わったか??

帰国便の離陸は1435だよ。

今は?1240だね。

謎すぎる絵

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