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山形の姥神をめぐる冒険 #57
【姥神社】 大江町道海 2024年7月
集落へ向かう坂道を登って行くと道路脇にこのお堂があった。鹿間廣治氏の『奪衣婆 山形のうば神』の写真では、ここは〝姥神社〟と書かれた額面のあるお堂だったのだが今は造り直されたらしい。目印やいわれがわかるようなものは何もなく、ただお堂の中にこの石があるきりである。
少し赤みがかった石の表面は植物のつるが這ったような痕があり、少し崩れたかけらが落ちている。
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辺りは夏草がきれいに刈られたばかりで家々の佇まいも畑も丁寧に整えられている様子だ。作り棚に蔓を伸ばしている青々とした夕顔。まるで水墨画の納涼図みたいだと思う。山裾にお堂があったのでこれは挨拶せねばと鐘を鳴らして手を合わせる。
改めて姥神社の石を見て足元の小さな石段を下りると白詰草の匍匐した茎の先に四つ葉を見つけた。
「わ、四つ葉だ。」
と思わず言ってしまう。ここはこんな小さなラッキーを見つけて元気をもらう場所だったりして。それはまるでWebや新聞の〝今日の星占い〟で小さな元気をもらうのと似ている。そうやって日常をまた一日と生きて来たんだ、わたしたち。
今日のラッキーアイテムは姥石さんとこにあった四つ葉。姥石さんとこの蛙だったり、姥石さんとこのコオロギだったりする日もありそうだ。
車を停めた小学校の跡地に戻る途中、ハッと視線が釘付けになった物がある。
そこは家があったらしく、錆びた冷蔵庫や家具の残骸が散らばっている。その中で、すっかり塗りが剥げて白くなった福助人形がじとーっとこちらを見ているではないか。
「わ、怖っ!」
さっき車を停めた時は気づかなかったのに…。
ちょっと、この出現の仕方は姥神に似てないか?そう、この村に来る人を気配を消して見張っているみたいで。
「おいお前、調子づくんじゃないぞ。」
と言われている気がした。
うへえ、くわばらくわばら。
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