山形の姥神をめぐる冒険 #50
【山の神】 天童市田麦野 2024年5月
天童高原へ向かう旧道を案内する立札を目印に細い道を入ると、山神様のお堂があった。山神というが姥神の仲間にしたいと鹿間廣治氏がオリジナル姥神認定した石像は、このお堂の中に自然石と隣り合って座っていた。
この像の写真を見た時にその造形に私も心惹かれて、自分の姥神めぐりコレクションにも加えたいと思ったのだった。土偶や埴輪を連想させるような、洗練とは程遠いがかと言って無骨というわけでもない。貧しい老夫婦が自らの垢を捏ねて作ったあか太郎のような存在感。誰かが思いついて彫った石の像に命が宿り、いつしか村人に愛され敬われるようになった何気ない感じ。手遊びの延長のような無邪気な心が宿っているみたいだ。男根をかたどった棒がいくつも添えられている。両手の仕草は何を表しているのだろう。謎は多いが何とも親しみの湧く姿だ。
この田麦野は山形市にある東北芸術工科大学の学生が地域おこしのプロジェクトを立ち上げ、その文化の継承を行なっている地区だ。過疎地の空き家対策と移住の促進。そこかしこにその活動の痕跡を認めつつ、この像も記憶され、守られていくのだろうと思う。土の奥底に眠る神々の声を残して。
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