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山形の姥神をめぐる冒険 #18

【古峯神社境内】 山形市谷柏 2023年11月
 ここは近年大規模に山野を切り拓いて造成された新興住宅地、蔵王みはらしの丘にほど近い山の中である。新興住宅地と高速道路に切り取られて残っているような古の神社。さすがに古代の神々の地を更地にするほどの勇気はないだろう。「バチが当たる」からである。

 山門から山道を登り、しばらく行くと落ち葉が重なり積もった足元にツチグリの大群を見つけた。宇宙人なのか妖怪なのか、不時着したUFOなのか。その妖しさにしばし足を止める。

どこに姥神はいるのだろうかと不安になりながら尚も進む。
姥神めぐりはいつも、会えるか会えないか不安と焦燥に駆られながら歩き回る旅になる。ポケモンを探す時もこんな気分だろうか。
 ようやく本殿に着く。新しい狛犬がいて梵鐘もある。三十三観音の社もある。そして姥神はしっかりした木の社に入れられ、かんぬきには鍵がかかっていてそこから覗き込むことしかできない。

 だからこそか、石像は綺麗に姿形が保たれており、開けた口の中の歯や乳房、足の指までよく見ることができる。
この山の中にこれほどのものを作り保つには、並ならぬ強い思いがあるのだと感じる。それは何故だろう。

 梵鐘には昭和五十二年とあった。寄進者の名前に江口姓がならぶ。江口といえば、戦国末期に上杉軍に攻め入られた畑谷城の城主の名前じゃなかったろうか。ここ谷柏からも参戦したというし、主戦場となった長谷堂城はこのすぐ近くである。もしかしたら、その時の最上勢の末裔がここにその記憶を宿しているのだろうか。
 姥神像は女性の信仰を集めた面が強いと思っていたが、ここでは武士の匂いがする。
殺し合いの血の匂い。
彼らは三途の川で何を見たのだろうか。
そして今の世界で、激しい暴力に吹き飛ばされる命は、何処へいくのだろう。
罪とはなんだろう。

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