山形の姥神をめぐる冒険 #49
【水晶山】 天童市 2024年5月
水晶山はかつて女人禁制の霊山で、さかんに参詣者が訪れたそうだ。女の人は登り口にいる姥神と山の神のところまで来てお詣りすると引き返す。私はどうもこの、女人禁制の結界ウバに会うとインスピレーションを感じてしまうらしい。この冒険の始まりに蔵王古道の結界にある姥神に出会い、何やらビリビリと感じることがなかったら、ここまで続けてきたかどうか。
ここにいる二人の姥神は作られたのが1790年代とほぼ同時期だが、随分姿は異なっている。右手にいる姥神の姿と顔の表情に引き込まれた。小さく丸い背中に座り方も飄とした雰囲気。こんな笑顔は見たことがない。古事記に出てくるアメノウズメのようなおどけを含んだ表情にこちらも笑顔になる。
いらっしゃい。よく来たね。
うふふふふふ。
笑い声まで聞こえてきそうである。
そして、このウヅメ様の足元に水晶の塊がお供えされていた。結晶を含んだ石の欠片もあった。その名の通り、水晶山には水晶を含んだ岩があちこちにある。純度の高い美しい結晶を姥様に供えようという、心の清い方がいるのだ。過去に登った時、拾った結晶を標本箱にしまった私とは大違いである。
二人のおまんじゅうのような背中を見て、山の神の御神体にもお参りして気分よく参道を引き返したのだった。
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