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山形の姥神をめぐる冒険 #59

【ワサ小屋跡】 蔵王山頂付近 2024年8月

 ロープウェイで蔵王地蔵山頂駅に向かう。白い骨のように枯れたアオモリトドマツの林が続く斜面を昇っていく。学生時代、友達とスキーに行って樹氷を見て歓声を上げた。あの珍奇な造形も、こうなってしまっては残念なものになってしまう。あの時の未来が今なのだった。
 遭難者を弔うためという大きな地蔵を参ってから姥神のいる〝ワサ小屋跡〟へ向かう。ワサ小屋とは避難小屋だった所で、明治から昭和にかけては老婆が管理人をしていたという。そこに鎮座する姥神は、本物の老婆と共に熊野岳山頂を目指す登山者をねぎらっていたのかもしれない。

 この姥神の欠損していた頭部を2011年に山形市内の石材店、石駒が修復した。その様子は六代目さんのブログに詳しい。 http://blog.ishikoma.net/
 すげられた頭は最初は随分と色が合わなかったが、風化が進んで一体感が出てきたと、ちょうど登山道の整備をしていた団体の方が話していた。
 姥神の前にはたくさんのお賽銭が詰まれていたが、中に見慣れない硬貨があった。孫文の顔が刻まれた台湾の硬貨らしい。国家の樹立というものに、この姥神は翻弄されてこのような姿になった。台湾にも同じような姥神みたいな神様はいるのだろうか。金色に輝く硬貨がひときわ目立っていた。

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