山形の姥神をめぐる冒険 #13
【円通山 普廣寺】 山辺町根際 2023年9月
山裾にあるこの寺にはいくつもの石仏がある。そしてそれらには皆おそろいの着物が着せられている。桜の模様の薄いピンク色の衣。手作りのミシンの縫い目が見える。お地蔵様も観音様も、そして姥神様も、みんな一緒。夕日を浴びて、ほんのりピンク色。和やかな雰囲気にふさわしく、ここの姥神は毒気のない淡白な様子だ。
石像に衣を着せるとは、どういうことなのだろう。私たちはなんの疑問も抱かずお地蔵さんや奪衣婆に着物を着せる。寒かろう、気の毒に、と。
ふと、日本のむかし話『かさ地蔵』を思い出す。雪の降る中、売れ残った笠をお地蔵さんに被せて帰るおじいさん。その夜ふけ、ズシンズシンと何かがやって来る。これが現代のアニメなら人喰い巨人の足音かもしれないが、ここでやって来たのは地蔵だ。米俵やお酒を持っておじいさんのところへプレゼントしに来たのだ。
このお話しのポイントは何だったっけ。
貧乏暮らしにも関わらず、善良な心根を失わないおじいさん。
そういう者には果報がありますよ、と。
カホーを待ちわびて。
いや違った。
カホーを待ちながら。
私たちはつい、さまよってしまいがちである。
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