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山形の姥神をめぐる冒険 #40
【五百羅漢刹 高福寺】 河北町田井 2024年4月
見る角度によって姥神の表情が大きく変わるように感じる。焦点が合っていないような瞳も、この世ならぬ者の様子で油断できない。左から見れば左、右からなら右とこちらを見られている感じ。「ちょっとそこの人」と呼びかけて振り向いた顔がこんななら、足がすくんでしまう。上半身は小柄だが、組んだ足はどっかりと存在感があり、着物のドレープも優雅だ。台座も立派であり、『河北町の石碑•石造物』(河北町教育委員会 平成11年発行)によると、明治29年のものとある。
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境内は種々様々な石像がひしめき合っていて、さながら仏教&民間信仰のテーマパークのよう。綺麗に刈り込まれた植木の間から、大黒天に閻魔王、六地蔵に馬頭観音、仁王様が次々現れる。稲荷のキツネだっていい味出してる。
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寺の開祖は寛永12年(西暦1635年)。以来、現在に至るまで19代に渡って寺を受け継いできた和尚の名が刻まれた碑もあった。寺のすぐ脇には最上川の堤防がある。菜の花が咲く堤防のこちら側は果樹園が広がっている。桃の花とタンポポの向こうは真っ白い月山。山形の原風景とも言える景色を臨むことができる。