見出し画像

孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ⑫「用間」篇 ~スパイを送り込め~

用間篇では、

「相手の情報を掴め!」

「5種類のスパイを使え!」

といったことが語られています。



卓球は情報戦であり、相手の弱点を的確に突いた方が勝ちます。

どのように相手の情報を掴むのか、知っておきましょう!



スパイ活動こそ重要だ!

「相守ること数年、以て一日の勝を争う。
而るに爵禄百金を愛みて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。」

数年にも及ぶ持久戦によって戦費を浪費したのちに、たった一日の決戦で勝敗を争う。
にもかかわらず、間諜(スパイ)に褒賞や地位を与えることを惜しんで、敵の動きをつかもうとしない者は、指揮官失格である。

卓球は、数年数カ月に及ぶ期間を練習に費やしたのち、たった一日の大会で勝敗を争います。

にも関わらず、対戦相手の動きを掴もうとしないのは、卓球選手失格です。



せっかくあれだけドライブの練習をしたのに、試合で対戦相手のコース取りを読むことをしなければ、ドライブは打てません。

数年数カ月に及ぶ努力を、自分自身で無駄にしてしまっています。



相手の動きを掴むことは、自分の努力に報いることに繋がるのです。



5種類のスパイを使いこなせ!

「間を用うるに五有り。
因間有り。内間有り。反間有り。死間有り。生間有り。」

間諜には5つの用い方がある。
因間、内間、反間、死間、生間である。

情報収集の方法は5種類あります。

これを駆使することで、読み合いを制し、試合を制するのです。


「生間なる者は、反り報ずる者なり。」

生間というのは、敵国に侵入して諜報活動を行ってから生還して報告を行う者である。

生間は、実際に敵国に侵入するスパイです。

つまり、実際にボールを打ってみて、相手の反応を見ます。



フォア、ミドル、バック。

どのコースを待っていないのか。



上回転、ナックル、下回転。

どの回転が一番ミスを誘えるのか。



順横回転、縦回転、逆横回転。

どのサーブが一番効くのか。



ストップ、フリック、ツッツキ。

どのレシーブが一番効くのか。



また、何をやったときに、相手の返球がワンパターンになるのか。



このように、実際にラリーをすることで情報を手に入れます。

情報を得るために、相手に打たせたり、難しいコースに打つこともあるので、ある程度の失点は覚悟しなければなりません。

それだけ、情報の価値は大きいということです。



情報は、後に大量の得点を生み出します。

目先の1失点を嫌がって、情報収集を疎かにすると、最後の最後に、

「ヤバい!何をすれば良いんだろう…」

と言って、大きな損失を抱えることになります。


「因間なる者は、其の郷人に因りて用うる者なり。」

因間というのは、敵国の村里にいる一般人を使って諜報をする者である。

因間は、敵側にいる人間から情報を手に入れます。

相手のベンチコーチや応援の言葉に、ヒントは隠されています。



「攻めろ!」
「思い切って!」

という言葉が聞こえたら、相手は攻めようとするでしょう。

ならば、コースを散らして簡単に打てないようにすれば、相手は無理な攻撃をして自滅してくれます。



あるいは、「攻めろ!」という声があっても攻めてこないこともあります。

これは、

「分かっていてもビビって攻められない」

という精神状態に相手は陥っています。

ならば、もう厳しいボールは必要ありません。

厳しくないボールを送って、相手の攻撃を誘いましょう。



「落ち着いて!」
「丁寧に!」

という言葉が聞こえたら、相手は無理せず繋いでくるでしょう。

ならば、こちらも粘り負けしないように、ラリー戦の覚悟を固めましょう。

または、緩いボールを狙い打ちするのも良いでしょう。



あるいは、「落ち着いて!」という声があっても攻めてくることもあります。

これは、

「分かっていても焦って攻めてしまう」

という精神状態に相手は陥っています。

ならば、自分から点を取りに行くまでもありません。

しっかりコースを突いて、相手に自滅してもらいましょう。



このように、相手の周りの人間の言葉は貴重な情報になります。

言葉に耳をよく傾け、相手の行動を先読みしてやりましょう。


「内間なる者は、其の官人に因りて用うるなり。」

内間というのは、敵国の官吏などを利用し内通させる者である。

内間は、敵自身から情報を手に入れます。



相手の立ち位置から、意識を読み取れます。

相手のレシーブの立ち位置、そして、ラリー中も常に相手の立ち位置を見ておく必要があります。

・フォア側に寄っているのか
・バック側に寄っているのか
・両ハンド待ちなのか

・下がっているのか
・前のめりなのか

これを把握することで、的確に相手の虚を突くことができます。



あとは、相手の顔もよく見ておきましょう。

精神状態が表情に現れています。



相手が緊張していれば、ドライブが振れなくなっています。

打たせる作戦が有効でしょう。



相手が焦っていたり、イライラしていれば、強引にでも攻めてきます。

しっかりコースを突けば、自滅してくれるでしょう。



相手が困っているときは、ワンパターンになっていることに気づいていません。

同じコースに来るのを狙い打ちしましょう。



相手が自信ありげなときは、相手のパターンで戦っています。

コースを変えるなどして、今のパターンから逃れましょう。



このように、すべき作戦が相手の顔に書いてあることがあります。

それをしっかり読解できるようになりましょう。


「反間なる者は、其の敵間に因りて用うる者なり。」

反間というのは、敵国の間諜を逆利用する者である。

反間は、相手のスパイを逆利用します。



相手だって当然、スパイ活動をやってきます。

あなたの弱点がバレることもあるでしょう。

そのときに、

「嫌だなぁ…」

で終わってしまうのは非常にもったいないです。



「こちらの弱点を突いてくる」

これも立派な情報です。

だったら利用すれば良いじゃないですか。



利用法は2つです。

1つ目は「させて狙う」方法です。

来ると分かっているなら、それを狙ってしまえば良いんです。



バック側が苦手なのがバレて、狙われているなら、回り込みましょう。

フォア前が苦手なのがバレたら、バックハンドでレシーブしましょう。



2つ目は「させない」方法です。

相手がやりたいことを封じれば、むしろ相手を苦しめることができます。



ループドライブが苦手なのがバレたら、ツッツキをしないようにしましょう。

フォアハンドが苦手なのがバレたら、順横回転のサーブからバック攻めをしましょう。

下回転打ちが苦手なのがバレたら、ロングサーブや上回転系のサーブを出して、下回転の展開にならないようにしましょう。



このように、自分の弱点は逆利用できます。

・自分の弱点はどこか
・相手はどうやって弱点を突いてくるか

これを把握しておけば、逆利用する方法も見えてきます。

方法を見つければ、練習することができます。



「弱点を突かれる」

ということは、

「相手が何をやってくるのか読める」

ということ。

このように思考を切り替えることが、一番の弱点克服法なのです。


「死間なる者は、誑事を外に為し、吾が間をして之を知ら令め、而して敵を待つ者なり。」

死間というのは、偽情報や誤情報を流すことで敵を欺き、味方の間諜にそのことを自国に報告させ、敵がその偽情報に乗せられて動くのを待ち受ける者である。

死間だけは、情報収集ではなく、情報操作が役割になります。



懸命なスパイ活動の結果、相手の弱点を見つけました。

だからといって、そこにばかり打てばいいわけではありません。

そこにばかり打てば、相手の反間が活躍してしまいます。



そうならないように、定期的に別のことも見せておく必要があります。

これが、

「誤情報を流す」

という死間の役割です。



バックハンドが相手の弱点なら、定期的にフォア側にも打っておきます。

横下回転のサーブが効くなら、定期的に横上回転も見せておきます。

相手の打ちミスが多いなら、定期的にこちらから先に攻めて、更なるプレッシャーをかけます。



9-9以降では、弱点を突いて確実に得点したいところです。

そのために、試合前半や各ゲーム前半で、死間に活動させます。

そうやって相手の目を別のところに向けることによって、弱点がより弱点になるのです。


⑪「九地」篇 ~自分の立場を知れ~
⑬「火攻」篇 ~相手を弱らせろ~【前編】
その0「孫子の兵法とは」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?