孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ①「計」篇 ~戦いとは~【後編】
①「計」篇 ~戦いとは~【前編】では、
「戦いは重大事である」
「戦いには5つの基本事項がある」
という話をしました。
今回は計篇の後編です。
戦いとは何か、知っておきましょう!
戦いは騙し合いだ!
「兵とは詭道なり」
戦争とは、敵を欺くことである。
どういう能力のある人が試合で勝てるのか。
その答えがここにあります。
相手を欺ける人、そして欺かれない人が勝てるのです。
「お前って、"練習は"強いよな。」
って人いるじゃないですか。
強烈なドライブをバンバン打つのに、なぜか試合で勝てない人いますよね。
こういう人は、敵を欺けていないんです。
「ドライブ打ちたーーーい!!!」
ってオーラが相手に見えちゃってます。
でもサーブは単調なので、相手はストップをしやすいし、コースを打ち分けやすい。
そしてこれに対応する練習はしていないので、ドライブが打てずにあっさり負けてしまう。
これが「練習強い人間」のメカニズムです。
逆に、
「あの人なんか分かんないけど、いつも勝つんだよなぁ。」
って人もいますよね。
こういう人は、欺くし欺かれないから強いんです。
このような「本番強い人間」になるために、孫子の言う「詭道」というものを学んでください。
【作戦を使うときは、使わないと見せかけよ。】
例えば、短いサーブをずっと出していて、次にロングサーブを出すとします。
このときに、「ロングサーブ出します感」が出てはいけません。
サーブを出す前に時間をかけて考えたり、バックロングの方に目線が行ってしまったり、気合を入れ直したり集中し直したり。
こういうのを相手に見せると、
「こやつ、何かやってくるな。」
と、警戒されてしまいます。
何の気配も無しに、急にロングを出すから効くのです。
逆に、作戦を使わないときに、使うように見せかけるのもアリです。
「彼奴め、何かやってくるな。」
と警戒させて、また短いサーブを出せば良いのです。
このように、自分が何をやりたいかを、相手に悟らせないことが重要です。
本番強い人間は爪を隠す。
だから、なんか分かんないけどいつも勝つんです。
【近くにいるときは、遠くにいるように見せかけよ。】
例えば、相手がフォアロングのサーブをよく使うとします。
そのフォアロングのサーブを狙い打ちしたいなら、敢えてバック側に寄って構えます。
バック側に寄って構えれば、フォア側ががら空きになります。
こんな絶好のフォアロングチャンスはありません。
フォアロングに出したくなります。
それを狙うのです。
気持ちがフォアロングに近いときは、フォアロングの遠くにいるように見せるのです。
フォアロングのサーブが嫌なら、その逆もあります。
フォア側に寄って構えましょう。
「うわぁ、フォアロング待たれてるわぁ。」
となります。
バック側を狙いやすくなりますね。
気持ちがフォアロングを遠ざけているときは、フォアロングの近くにいるように見せるのです。
大切なのは、「いかに自分の思う方向に相手を誘導するか」です。
本番強い人間は、自分の思惑通りのことを相手にさせ、そこで待っています。
決して、相手に欺かれないのです。
【相手が利を求めている時は、それを見せて罠にかけて誘い出す。】
例えば、相手はフォアハンドのフリックが得意だとします。
フォア前にサーブを出すと、
「よっ!待ってました!」
とばかりに払ってきます。
さて、フォア前にサーブを出すと、フリックがクロスに来る。
これが分かっているなら、狙えますね。
フォア前をエサにして相手に得意技をさせ、それを待ち伏せることができます。
相手の得意技は「させない」だけでなく「させて狙う」というやり方もあるということです。
これが決まると相手は
「なに!?フリックが決まらないだと!?」
となります。
そして、より強く打ったり、コースを変えたりします。
これはもはや得意技ではないので、ミスをするようになるわけです。
この相手の混乱に乗じて、どんどんフリックをさせましょう。
「させて狙う」という作戦が成功し、相手の得意技を潰すことに成功したとき、相手は致命的なダメージを負います。
本番強い人間はなぜ、勝てる理由がよく分からないのか。
それは、相手の得意技を利用して勝つからです。
自分の得意技は極力見せないのです。
【敵が怒っているときは、挑発してさらにかき乱す】
相手の調子が悪かったり、こちらのネットインが多いときなどに、相手がイライラしてくることがあります。
これに対して、
「なんだよアイツ、態度悪いなぁ。」
とか
「ネットインばっかりで申し訳ないなぁ。」
とか思っている場合ではありません。
大量得点の大チャンスです。
甘くないボールを無理に打って、勝手にミスしてくれます。
こちらから仕掛けずとも、点が取れちゃいます。
「もう、こんな人との試合は早く終わらせたい!」
なんて思って自分から仕掛けようとすると、むしろ上手くいかないことが多いです。
態度の悪い相手のペースにハマっていきます。
こんなのは最悪ですから、絶対に避けましょう。
このように、相手の悪態は利用できます。
挑発行為はさすがに推奨しませんが、相手の態度に決してイライラせず、適切に対処しましょう。
本番強い人間に、精神攻撃は通用しないのです。
【これが兵法家の勝ち方である】
以上のような策を駆使して相手の裏をかくのが、戦いの本質です。
相手が待っていないことをやり、相手がやることを待っておくのです。
相手の情報をなるべく引き出し、その上で弱点を突いたり、得意技をさせて狙ったりします。
自分の情報はなるべく隠し、偽りの情報を与えて、こちらの狙う方向に相手を誘導させます。
これが「詭道」です。
これは、相手の状況によって臨機応変に作戦を立てる必要があります。
「よし、今日はバック前のサーブから3球目攻撃で行くぞ!」
とか言っていると、相手に対応されたときに、どうしようもなくなってしまいます。
事前に作戦を固めておくことはできないのです。
勝てると思った方が勝つ!
「算多きは勝ち、算少なきは敗る」
勝算が相手よりも多ければ、実戦でも勝利するし、勝算が相手よりも少なければ、実戦でも敗北する。
戦争の勝敗は、戦う前にほとんど決まっていると、孫子は言います。
勝算のある方が実際に勝つのです。
卓球の場合、試合前に相手の情報を得るのは難しいです。
なので、試合中により勝算を得られた方が勝利します。
相手は何が得意なのか、何が苦手なのか。
相手は何をやりたいのか、やりたくないのか。
相手はどこに打ちたいのか、打ちたくないのか。
相手は何を待っているのか、待っていないのか。
そして、自分は何ができるのか。
これらを把握した上で、点の取れる展開を見つけると、勝算が得られます。
この勝算が多い人が勝つのです。
「勝てると思った方が勝てる」
世界卓球2016で、当時15歳の伊藤美誠選手が言いました。
でも、「勝てる」と思うってなかなかできないですよね。
「負けるかもしれない…」
「ドライブが入らないかもしれない…」
「もう卓球辞めたい…」
「ゲームやってる方が楽しい…」
ってなっちゃいますよね。
なぜ、伊藤選手は「勝てる」と思えるのか。
その答えが「勝算」です。
勝算があるから、甘いボールが来ると想定でき、しっかりバックスイングを取って強打ができるのです。
勝算が無い人は、相手の返球を想定できません。
なので、
「甘いボールが来た!」
と思ってからバックスイングを取るので、準備が間に合わずにミスをします。
勝算の有無が、強打が入るかどうかを決めるのです。
接戦で勝てないと、
「お前はメンタルを鍛えろ!」
とか言いますが、本当に必要なのは勝算です。
僕は、メンタルの強さはみんな大差ないと思っています。
トップ選手だって、緊張でドライブが振れなくなることもあります。
サーブが台から出てしまうこともあります。
あれほどの技術レベルでも、そうなってしまうわけです。
僕らと一緒じゃないですか。
だから、敗因を「メンタル」としたところで、何も解決しません。
まぁ、これは僕がそう思ってるだけです。
違ったらゴメンナサイ。
ただ、勝算があれば勝利が近づくのは、間違いありません。
これが、荻村伊智朗さんの言う
「50m走をしながら”チェス”をする」
ということです。
勝算を得て詭道を制する。
それが「戦い」というものの基本なのです。
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