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孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ⑥「虚実」篇 ~弱点を突け~【後編】

⑥「虚実」篇 ~弱点を突け~【前編】では、

「敵を操れ!」

「敵に操られるな!」

という話をしました。



今回は虚実篇の後編です。

相手の弱点はどう見つけるのか、どう作り出すのか、知っておきましょう!



敵を知れ!自分を知られるな!

「可善く将たる者は、人を形せしめて我に形無ければ、則ち我は専りて敵は分かる。」

戦上手な将軍は、敵には陣形を露わにさせ我が軍は秘匿して無形を維持するから、我が軍は兵力を集中でき、敵軍は兵力を分散させることになる。

もし敵の兵力が2倍でも、敵兵はフォア、ミドル、バックに分散し、こちらは全兵力を集中させれば、こちらの兵力の方が強大になります。



こちらのコース取りを読まれなければ、敵兵は分散します。

敵のコース取りが読めれば、兵力を集中できます。



これが実現できれば、2倍強い相手を撃破することは可能なのです。



格上の人が負けるときって、大体は全面を待っちゃってるんですよね。

いわゆる「受け身」の状態です。

それでコース取りが単調になって、相手に待たれて、攻められまくってしまうんです。



コースが読めるかどうかで、多少の実力差は簡単にひっくり返ります。



「敵を知ること」



全てはそこにかかっているのです。



4つの手法を使って敵を知れ!

「之を作して動静の理を知り」

敵軍に揺さぶりをかけて、その行動基準をつかむ。

相手の行動の規則性を見つけましょう。

見方は2つあります。



1つ目は、こちらの技術に対する相手の行動です。



フォア前に巻き込みサーブを出すと、クロスに返ってくる。

バックロングに上回転のサーブを出すと、ミドルに繋いでくる。



バックにツッツキをすると、ツッツキがクロスに返ってくる。

バックにフリックをすると、ミドルに繋いでくる。



など、自分の技術に対する相手の返球に規則性が見えれば、それを待ち伏せすることができます。



2つ目は、相手の技術とその次の相手の態勢です。



相手がバック前に順横回転のサーブを出したら、3球目は回り込んで待っている。

相手がフォア前にストップをしたら、次は両ハンドドライブの態勢で待っている。

相手がバックハンドをストレートに打ったら、次はフォア側で待っている。



など、相手の待ち方の規則性が見えれば、逆を突くことができます。


「之を形して死生の地を知り」

敵軍の態勢を把握して、その強み弱みを明らかにする。

相手の技術力を見ましょう。



フォアハンドのストップは上手いけど、バックハンドのストップは甘くなりやすい。

短いサーブはうまく捌くけど、ロングサーブには全然対応できていない。

下回転をドライブするのは上手いけど、上回転をドライブするとミスが出やすい。

バック対バックは強いけど、フォアクロスの打ち合いは弱い。

バックミドルは素早くラケットが出るけど、フォアミドルに対しては詰まりやすい。



というように、相手の長所と弱点が分かっていると、的確な攻撃が可能になります。



「短いサーブから3球目攻撃をするぞ!」

と、自分のことだけ考えていると、

「相手は短いサーブはうまく捌くけど、ロングサーブには全然対応できない。」

という相手の弱点を見落としてしまうのです。


「之を策りて得失の計を知り」

敵の意図を見抜いて敵の利害、損得を知る。

相手の置かれている状況から、敵の意図を推察しましょう。



例えば、こちらが大量にリードして相手が開き直っているなら、相手は思い切って攻めてきます。

この場合、相手は攻撃が利益となり、守備は不利になります。

なのでこちらは、受け身になって攻められないように、先に仕掛ける必要があります。



相手が勝利目前で攻め急いでいるなら、多少無理をしてでも攻めてきます。

この場合は、ラリー戦が相手にとっては不利になります。

粘りの姿勢を見せることで、より相手の焦りを大きくさせます。



相手が緊張で固くなっていれば、ドライブが振れなくなります。

この場合は、相手は攻撃が不利になります。

相手に打たせてしまいましょう。

わざわざ自分からリスクを負って攻める必要はありません。



競り合っていて、相手が保守的になっていれば、無難なことしかやってきません。

この場合は、相手は守備が不利になります。

相手が何をやってくるか予測をしやすい状況なので、狙い打ちをしましょう。

しっかり攻めることで、相手は余計に保守的になります。



このように、試合の状況などから相手の立場を考え、その利害を推察してあげましょう。


「之に角れて有余不足の処を知る。」

敵軍と小競り合いしてみて、優勢な部分とそうではない部分をつかむ。

相手のあちこちを突いてみて、相手の反撃度合いを見ます。



例えば、こちらのクロスのバックハンドに対しては、しっかりバックハンドで返してきました。

ストレートのバックハンドに対しては、ややフォアハンドが詰まりました。

ということは、こちらのバックハンドに対して、相手はバック側を重点的にマークしています。



このように、相手の態勢を把握できれば、虚を突くことは容易いのです。



もちろん、相手の態勢は常に変わることは理解していないといけません。



バックストレートを多用すれば、相手の意識は徐々にフォア側に移っていきます。

重点がフォア側に寄ったところで、今度はバック側を攻めましょう。



移りゆく相手の虚の部分を、的確に突き続けるのです。



コースだけではありません。

短いサーブか、ロングサーブか。

ストップか、ツッツキか。

下回転か、上回転か。



相手が何をマークしているのか、何をマークしていないのか、いろいろ試してみましょう。



自分の得点パターンに頼るな!

「兵を形すの極みは無形に至る。」

望ましい軍形の極みは無形である。

敵を知る方法は述べました。

逆に言えば、敵に自分を知られてはいけません。

そのための理想が「無形」です。



「お決まりのパターンを持つな」



ということです。



「バック前に横上を出して、回り込み3球目攻撃」

が一度決まったとして、それに味をしめて何度も同じ作戦を使えば、当然相手も警戒します。

ストップをしたり、フォア側にレシーブしたりすれば、この作戦はできなくなります。



決まった型に頼ると、必ず行き詰まるのです。



そうではなく、相手はいずれフォア側にレシーブしに来るんだから、それを最初から狙うべきです。

これができれば相手は、



「バックに返しても打たれるし、フォアに返しても打たれるし、もうどうしたら良いのー!?」



と叫びながら絶望することでしょう。



敵を知り、自分を知られないことで、「無形」という魔術のような戦い方ができるのです。



攻撃は、水だ!

「兵の形は水に象る。」

軍の形は水を模範とする。

水は、高い所を避けて低い所へ向かいます。

卓球も、相手の実を避けて虚を狙います。



水は、地形によって進路を決定するのであり、固定した形というものはありません。

卓球も、相手の態勢によって戦い方を決定するのであり、ひとつの得点パターンに固執することはありません。



相手に応じて絶えず変化することが、戦いの妙なのです。



「ジャンケンに絶対勝つ手を教えまーす!」

こんなことを信用する人はいませんよね。



「人対人」において、常に通用する型なんてありません。



「卓球の必勝パターンを教えまーす!」

なんてことを言う人を、信用してはいけないのです。


⑥「虚実」篇 ~弱点を突け~【前編】
⑦「軍争」篇 ~先手を取れ~
その0「孫子の兵法とは」

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