孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ⑩「地形」篇 ~位置関係を知れ~【後編】
⑩「地形」篇 ~位置関係を知れ~【前編】では、
「相手との位置関係を知れ!」
「地形に適した戦いをしろ!」
といったことが語られています。
今回は地形篇の後編です。
あらゆるパターンに対してどう戦うのか、知っておきましょう!
6種の自滅パターンを知れ!
「兵には、走る者有り、弛む者有り、陥る者有り、崩るる者有り、乱るる者有り、北ぐる者有り。凡そ此の六者は、天の災いに非ず、将の過ちなり。」
軍の状況を見てみると、逃亡してしまったり、弛んでしまったり、落ち込んでしまったり、崩壊したり、乱れてしまったり、敗走するようなことがある。これら6つの敗因は、天災や災厄ではなく、将軍の過失であり人災である。
位置関係を間違えると、自滅してしまいます。
この自滅には6つのパターンがあるので、それを紹介していきます。
全ては不運などではなく、あなたの過失です。
つまり、言い訳はできませんし、逆に言えば、対策も立てられます。
なので、自滅の6つのパターンはよく覚えておいてください。
「夫れ勢い均しきに、一を以て十を撃つは、走ると曰う。」
軍の勢いや兵の置かれた状況が同じである時に、10倍の兵力の敵を攻撃しようとすれば、敵前逃亡させるようなものだ。
バック対バックが、自分は苦手で、相手は得意であれば、これは悪い位置関係です。
バック対バックでまともに戦っても勝ち目はありません。
でも、相手はバック対バックに持ち込もうとします。
そこで成り行きに任せてバック対バックをやってしまうのは、勝負を諦めて敵前逃亡してしまっているようなものです。
相手の態勢を崩したときに初めて、バック対バックが許されます。
・フォア側に振ってからバック側に打つ
・フォアミドルをバックハンドで打たせる
・相手が下がったらバック攻め
など、自分が優勢になれば、バック対バックが使えます。
相手は、
「バック対バックは勝てる」
という自負がありますから、無理に打ってミスをしてくれることもあります。
これが、悪い位置関係の唯一の使い道です。
悪い位置関係を見つけ、そこは相手を崩したときだけ使うようにしましょう。
「卒の強くして吏の弱きは、弛むと曰う。」
兵士の鼻息が荒く猛々しいのに、それを管理する軍吏が弱々しくては、タガが弛む。
チャンスボールが来れば、攻撃ができます。
しかし、競った状況などで、ビビって繋いでしまったら、もうドライブのタガが緩み、ドライブは打てなくなります。
「しっかり振れ!」
「勇気を持て!」
「メンタル!」
なんて言っても、もう無理です。
一度ビビったら、なかなか立ち直れません。
こうなってしまったら、もうチャンスボールを作っても仕方ありません。
・相手の弱点を突く
・相手に打たせる
など、自分がドライブを打つことなく点を取る方法を考えましょう。
競った場面は、相手だってビビっているんです。
だったら、打たせれば良いじゃないですか。
攻撃ができない精神状態なのに攻めようとするから、メンタルがやられるんです。
「吏の強くして卒の弱きは、陥ると曰う。」
軍吏が強気で優秀であっても、兵士が弱くて無能であれば士気が上がらず落ち込んだ空気となる。
いつも通りの流れで打っているのに、なぜか入らないことがあります。
いつも通りのはずなのに、
「なぜドライブが入らないんだ…」
と落ち込んでしまいます。
このときに、
「いや、このドライブは入るはずだ!」
「一回ドライブを決めて安心したい!」
と、入らないドライブに固執してしまうのが一番危ないです。
固執が焦りを生み、どんどん無理なボールに手を出すようになってしまいます。
そして、ドライブが入らないまま、試合が終わってしまいます。
そんなことにならないように、入らないドライブは一旦捨てて、ラリー戦に切り替えます。
ラリーをしているうちに、体が動くようになって、ドライブが打てるようになるかもしれません。
ラリーをしているうちに、相手の球質に慣れて、ドライブも入るようになるかもしれません。
ドライブを再び使うきっかけがいつか現れるので、それを待ちましょう。
攻撃の位置関係で上手くいかないなら、その土地は今のあなたには合っていません。
今のあなたに合った土地に移動しましょう。
その土地で戦うときは、いずれまた来ます。
「大吏怒りて服さず、敵に遇えば懟みて自ら戦い、将も其の能くするところを知らざるは、崩るると曰う。」
高級将校が将軍に対して憤って服従せず、敵に遭遇した際にも将軍への怨みの感情から独断で戦うような状況となり、将軍もまたその事態をどう収拾すれば良いか分からないようなことでは、軍は崩壊する。
怨みの感情を試合にぶつけるのはヤバいです。
・対戦相手にイライラ
・自分にイライラ
・ベンチコーチにイライラ
・会場の歓声にイライラ
思うようにいかない要素はいろいろあります。
しかし、だからといってヤケになってはいけません。
勝利よりもストレス発散を優先して、闇雲に攻撃をするのは最悪です。
その試合どころか、卓球人生が崩壊します。
なので、普段の練習で「上手くいかない状況」に慣れておく必要があります。
・ドライブの調子が悪い
・相手のボールが合わない
こういうときは、むしろチャンスだと思いましょう。
突破口を見つけるいい機会なんですから。
「将、弱くして厳ならず。
教導明らかならずして、吏卒常無く、兵を陳ぬること縦横なるを、乱と曰う。」
将軍が弱腰で威厳がなく、兵に対する指示命令が不明確であり、将兵に対する指導方針に一貫性を欠き、布陣に秩序がなく雑然としているのを、乱れた軍と言う。
何の方針も無い、場当たり的な卓球は、あまり良くありません。
ただ単に相手のボールに反応しているだけでは、全てが後手に回り、どんどん態勢が乱れていってしまいます。
何も考えていない、というより、何を考えればいいか分からないと、こうなってしまいます。
こうならないために、相手をよく観察しましょう。
自分から攻めた方が良いのか。
相手に攻めさせた方が良いのか。
相手は何をしたいのか。
何をしたくないのか。
相手はどこに打ってくることが多いのか。
相手はどこを待つことが多いのか。
相手のことが分かれば、戦い方が見えてきます。
戦い方が分かれば、全てが後手に回ることはなくなります。
思考停止せず、ベストな位置関係を探し出しましょう。
「将、敵を科ること能わず、少を以て衆に合わせ、弱を以て強を撃ち、兵に選鋒無きを、北ぐると曰う。」
将軍が敵情判断を誤り、少人数で多数の敵に当たらせたり、自軍の弱い部隊を敵の強い部隊と戦わせるようなことをして、兵士の中にも先鋒として適任の精鋭がいないのでは、負けて退散するのみである。
敵情判断を誤るどころか、そもそも敵情を見る発想自体が無い人は、不利な位置関係で戦ってしまっていても、それに気付きません。
これはもう、負けて退散するのみです。
相手はフォア側にツッツキばかりしてきて、こちらはそれを打ちミスばかりしています。
そのときに、相手を見る発想の無い人は、
「これが入れば勝てるのになぁ。」
と言います。
しかし、この考えは完全に浅はかです。
ツッツキ打ちが入るのであれば、相手はフォア側にツッツキばかりしません。
打ちミスを誘える別のものを探し、そればかりやります。
そして結局あなたは、
「これが入れば勝てるのになぁ。」
と言います。
相手を見る発想が無い限り、このループからは逃げ出せないのです。
必要な思考は、
「これが入れば勝てるのになぁ。」
ではなく、
「何なら入るかなぁ。」
です。
ツッツキ打ちが入らないなら、ループドライブでも良いし、ツッツいたって良い。
とにかく入る技術を探し出して、相手のミスの誘いに乗らないことが大事です。
そしてもうひとつは、
「自分も相手の打ちミスを誘うこと」
です。
相手のツッツキ打ちのミスが多いなら、ツッツいてれば勝てるわけです。
11回ドライブを決めて勝つより、11回ツッツキをして勝つ方が明らかに簡単です。
試合は「簡単に点を取る方法を見つけた人」が勝ちます。
強い人は、それをよく心得ているので、ツッツキで勝ちにいくこともあります。
弱い人は、
「そんなんで勝っても嬉しくない!」
とか言って、常に自分から攻めようとします。
そして、一番嬉しくない結果になります。
試合とはどういうものなのか、履き違えないように気を付けましょう。
「凡そ此の六者は、敗の道なり。将の至任にして、察せざる可からざるなり。」
これら6つのポイントは、敗北に至る道理である。こうした道理を知ることは、将軍の最も重要な責務であり、充分に研究し心得ておかなければならない。
以上が、6つの自滅パターンと、その対策です。
これを知っていれば、
「ドライブの調子が悪かった」
とか、
「相手がたまたま良いボールが入った」
とか、
こういった言い訳の的外れ具合がよく分かります。
ドライブの調子が悪いなら、別のことをやればいい。
相手が良いボールを打ってくるなら、態勢を崩せばいい。
探すべきは「言い訳の言葉」ではなく「対策」である。
これを心に刻んでおきましょう。
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