格上の選手の勝率がたったの3%になってしまう仕組みを紹介します!【卓球パラドックス】
試合で、自分の方が格上なのは間違いないのに、なぜか全然リードできないことってありますよね。
別に、油断なんかしてないんです。
むしろ、めちゃくちゃ頑張ってるんです。
なのになぜか、頑張ろうとすればするほど、どんどんミスをしてしまって、格下の相手にどんどんリードされてしまい、そのまま負けてしまいます。
それで、
「格下に負けた…」
なんて言っていると、
「いやいや、負けたってことは相手の方が格上なんだぞ!」
と、ブチ切れられたりします。
でも、
「負けたってことは相手の方が格上」
には、やっぱりしっくり来ません。
負けてもなお、実力は確かに自分の方が上だと思います。
これは、勘違いなのでしょうか?
いや、数学的に、格上の選手が頑張ろうとすればするほど勝てなくなることは起こり得ます!
ということで、今回は数学人間ホシナが、
「格上の選手が頑張ろうとすればするほど勝てなくなるメカニズム」
を解明します!
【問題】
AさんとBさんが試合をします。
ツッツキが入る確率は、AさんもBさんも99%です。
Aさんがドライブを打つと、40%の確率で得点できます。
Bさんがドライブを打つと、5%の確率で得点できます。
つまり、実力はAさんの方が上です。
このことは、AさんもBさんも自覚しています。
【問1】
このとき、格上であるAさんの勝率は、きっと約3%になってしまいます。なぜでしょう?
【問2】
Aさんの勝率がたったの3%なんていう事態を回避するためには、どうしたらいいでしょう?
【解説】どんなラリー展開になるのか?
まずは、この2人が試合をするとき、どのようなラリーの展開になるかを考えます。
ラリーのパターンは4種類あります。
①お互いにツッツく
まずは、ひたすらツッツき合うというパターンです。
お互いに99%の確率で入るので、かなり長いラリーになります。
計算すると以下の通りです。
半分の確率で35回以上ラリーが続き、5回に1回の確率で80回以上ラリーが続きます。
これは相当な長丁場となりそうです。
②お互いにドライブを打とうとする
Aさんがドライブを打つと、40%の確率で得点できます。
Bさんがドライブを打つと、5%の確率で得点できます。
2人とも50%以下なので、自滅合戦のような形になりますが、Bさんの方が圧倒的にミスが多いので、Aさんが大きくリードする展開になっていきます。
③Bさんがドライブを打とうとする
Aさんはツッツき、Bさんがドライブを打つパターンです。
Bさんがドライブを打っても5%の確率でしか得点できないので、Aさんのボロ勝ちとなります。
④Aさんがドライブを打とうとする
Bさんはツッツき、Aさんがドライブを打つパターンです。
Aさんがドライブを打っても40%の確率でしか得点できないので、Bさんがやや優勢となります。
さて。
②お互いにドライブを打とうとする
③Bさんがドライブを打とうとする
この2つは、Bさんがドライブを打つパターンです。
この2つのパターンだと、どちらにしてもAさんがボロ勝ちします。
つまり、Bさんはドライブを打った時点で、圧倒的に損をします。
だったら、Bさんは途中からドライブを諦めるか、あるいは、最初からドライブなんて打たないことすらあるでしょう。
こうして、Bさんがツッツき続ける覚悟を固めると、ラリーの展開は、
①お互いにツッツく
④Aさんがドライブを打とうとする
のどちらかになります。
このとき、Aさんはどうするでしょうか?
①のツッツキ合いをすると、五分五分の戦いな上に、めちゃくちゃ持久戦になります。
④のドライブをすると、少しずつリードを許してしまいます。
なんと、Aさんは格上のはずなのに、自分がリードできる選択肢が、どこにもなくなってしまいました!
さぁ、Aさんは、勝てるかどうか分からない五分五分の持久戦を、格下相手にする覚悟を持てるでしょうか?
そんな覚悟はできず、ドライブの調子が上がることを信じて攻め続けてしまわないでしょうか?
こうしてAさんは、確率40%でしか得点できないドライブで、戦い続けてしまいます。
得点率40%のラリーをし続けると、その試合の勝率は以下の通りです。
(計算方法は、表を見て分かる人だけ分かってください。)
なんと、Aさんの勝率はたったの0.033725=約3%になってしまいます!
このように、格上のAさんが、気がつけば勝率たった3%の戦い方をしてしまうことがあります。
さて、なぜこんなことになってしまうのか、更に詳しく見ていきます。
【解説】なぜAさんは勝率たった3%の戦い方をしてしまうのか?
では、ラリーの4パターンそれぞれで、お互いがどれくらい得をするか、数字で考えていきます。
①お互いにツッツく
これは、戦い自体は五分五分ですが、「相当な持久戦になる」というマイナスがお互いにあります。
なのでとりあえず、2人とも-5としておきましょう。
③Bさんがドライブを打とうとする
Bさんがドライブを打つと、5%の確率でしか得点できません。
20回打つと、1得点19失点で、18点損をするようなイメージです。
なので、Aさんは+18、Bさんは-18としましょう。
④Aさんがドライブを打とうとする
Aさんがドライブを打つと、40%の確率で得点します。
20回打つと、8得点12失点で、4点損をするようなイメージです。
なので、Aさんは-4、Bさんは+4としましょう。
②お互いにドライブを打とうとする
20回打つと、Aさんは8得点、Bさんは1得点するイメージで、Aさんが7点分の得をします。
なので、Aさんは+7、Bさんは-7としましょう。
これを元に、まずはBさんの行動を考えます。
Aさんがツッツキをする場合は、Bさんはツッツキをすれば-5、ドライブをすれば-18なので、ツッツキをした方が得をします。
Aさんがドライブをする場合は、Bさんはツッツキをすれば+4、ドライブをすれば-7なので、ツッツキをした方が得をします。
つまり、Aさんが何をしようが、Bさんはツッツキをした方が得をすることになります。
ということで、Bさんの行動は決まりました。
では続いて、Aさんの行動はどうなるでしょうか。
Bさんがツッツキをするとき、Aさんはツッツキをすれば-5、ドライブをすれば-4なので、ドライブをした方がわずかに得をします。
だからAさんは、上手く行かないながらも、ドライブを打ち続けてしまうのです。
これが、格上のAさんが勝率たった3%の戦い方をしてしまうメカニズムです。
だからといって、ツッツキの持久戦を-3として耐え続けても、それはあくまで五分五分の戦いであり、格上なのに優位に立ててはいません。
さて、一体Aさんは、どうするのがベストなのでしょうか?
格上のAさんは、どうすれば「勝率たった3%」なんていう事態を回避できるのか
Aさんがマズかったのは、
「Bさんにツッツき続ける覚悟を固めさせてしまったこと」
です。
この時点で、Aさんが有利になるパターンが消滅してしまったわけです。
だったら解決法は、
「Bさんがドライブを打ちたくなるように仕向ける」
ということになります。
例えば、ツッツキをわざと甘くしてみたらどうでしょう。
Bさんは、ドライブを打ったときは元々5%の確率でしか得点できませんが、ツッツキを甘くすることで、この確率が上がります。
仮に30%まで上がったとしましょう。
するとBさんは、今までほどドライブにデメリットを感じなくなります。
更に、Aさんがツッツキを甘くすることにより、ツッツキのミスが更に減るので、ツッツキ対ツッツキは更に持久戦になり、更に辛くなります。
この状態で、Aさんがツッツキをすると、Bさんはツッツキをすれば-10、ドライブをすれば-8なので、ドライブをした方が得をします。
これでBさんは、なんだか打てそうな甘いツッツキに対して、粘ることを選択できず、確率30%のドライブを打つようになります。
さっきのAさんがそうだったように、Bさんは上手く行かないながらもドライブを打ち続けてしまうのです。
これこそが、格上のAさんの戦い方だったのです!
まとめ
結論として、こういった試合は、
「覚悟を固めた人」
が勝ちます。
だから、Bさんがツッツき続ける覚悟を固めたとたんに、Aさんの勝率がたったの3%になってしまったわけです。
そして、逆に言えば、
「相手に覚悟を固めさせなかった人」
が勝ちます。
だから、Aさんが甘いツッツキをしたとたんに、Bさんはツッツき続ける覚悟を固めることができず、勝てもしないドライブを打ち始めてしまったわけです。
もし、相手が格下なのに、頑張れば頑張るほどなぜかリードされてしまうのなら、それは相手に何かしらの覚悟を固められてしまっているのかもしれません。
そんなときは、甘い罠を用意して、相手の覚悟を崩してください。
逆に、相手が格上なら、何かしらの覚悟を固めて戦ってください。
正しく覚悟を固めれば、格上の相手の勝率はきっと、たったの3%になることでしょう。
さぁ、覚悟を固め、覚悟を固めさせずに、勝てるパターンに持ちこみましょう!
【参考】
今回は、「合理的な豚のパラドックス」というものを、卓球用にアレンジしました。
この動画が分かりやすいので、見てみてください。
https://youtu.be/MqqDITO7YSU
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