孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ⑪「九地」篇 ~自分の立場を知れ~
地形篇では、
「自分の立場を知れ!」
「正しく開き直れ!」
といったことが語られています。
試合では様々な立場があり、それぞれ戦い方があります。
それぞれの立場でどう戦うのか、知っておきましょう!
自分の立場を把握せよ!
「用兵の法には、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢地有り、重地有り、泛地有り、囲地有り、死地有り。」
地形には、散地、軽地、争地、交地、衢地、重地、泛地、囲地、死地の九つがある。
卓球の試合をする上で、様々な立場があります。
・自分が格上
・同格
・相手が格上
という、実力による立場があります。
・リードしている
・競っている
・リードされている
という、カウントによる立場もあります。
これらの立場と、そこから来る心境と戦い方を、孫子の言う9つの地形のうち3つを使って、解き明かしていきます。
「諸侯自ら其の地に戦う者を散地と為す。」
諸侯が自国の領内で戦うのを「散地」と言う。
「散地には則ち戦うこと無く」
散地では戦ってはならない。
散地とはつまり、
「受けて立つ立場」
にある状況です。
・相手より自分の方が強い
・大きくリードしている
こういった状況だと、受けて立つことになります。
この状況では、早く勝とうとして攻め急ぐのが危険です。
こちらは受けて立つ立場で、相手は向かっていく立場です。
実力的には自分の方が攻撃力が高くても、メンタル的には相手の方が攻撃をしやすい状況です。
この状況で攻めようとしても、相手の攻撃に屈する可能性が十分にあります。
そうなったときに、
「俺の方が強いんだから、俺が攻めるんだ!」
と言って攻め急ぐと、ミスを連発してしまいます。
基本はしっかり繋いで、読めたときだけ仕留める。
受けて立つ立場では、1点を急がないことが重要です。
「人の地に入るも深からざる者を軽地と為す。」
敵国に侵入してもまだ深く入り込んでいないのを「軽地」と言う。
「軽地には則ち止まること無く」
軽地では、ぐずぐずせずに突破すべきである。
軽地とはつまり、攻めてはいるような、攻めきれてはいないような、もどかしい状況です。
乙女のような、揺れ動く儚い心境になります。
実力や点数が互角のときに、こういった状況になります。
「攻めたいけど、打ちミスしたくない…」
「守りたいけど、ブロックできるかしら…」
と言って、ハッキリとした戦い方がなかなか難しくなります。
だからといって、ラリー戦をやっていても、
「チャンスが来たら打ちたいなぁ。」
と、ここでも心が揺れ動きます。
しかし、もう散々言ってきたように、
「チャンスが来たら打つ」
と考えている時点で、もう攻撃はできません。
ドライブは、相手の返球を予測して、あらかじめバックスイングを取っておくことで、初めて打つことができます。
「チャンスが来たら」
の時点で、もうバックスイングを取る時間は無いのです。
必要なのは、
「ぐずぐずしないこと」
です。
コースが読めれば、ドライブで仕留める。
相手の打ちミスを誘える、もしくは相手のドライブのコースが読めているなら、打たせてしまう。
読めていないなら、ラリーで相手の読みを外しつつ、読めるようによく観察する。
このように、戦い方をハッキリさせましょう。
軽地では、お互いに心が揺れやすく、お互いにぐずぐずしがちです。
先に戦い方をハッキリさせた方が、優位に立つことでしょう。
「疾く戦えば則ち存し、疾く戦わざれば則ち亡ぶ者を、死地と為す。」
迅速に攻めれば生き延びるが、突撃が遅れれば全滅するのを「死地」と言う。
「死地には則ち戦う。」
死地ではひたすら突撃あるのみである。
死地とは、敵に囲まれた絶体絶命の状況のことです。
もはや、敵に向かって突撃するしかありません。
6点以上の大差をつけられたときに、こういった状況になります。
めちゃくちゃ格上の人と対戦するときもそうでしょう。
もはや「死んだも同然」なので、ミスを怖れなくなります。
だから容赦なくロングサーブを出せるし、容赦なく回転をかけられるし、容赦なくドライブを打ち込むことができます。
まして、相手にとっては散地なので、相手は守りに入っています。
絶好の攻撃チャンスでもあるのです。
決死の攻撃を見せれば、相手は受け身になります。
これが、次のセットに繋がるわけです。
このセットは取られたとしても、次のセットも相手は受け身になり、こちらのペースで試合を進められるようになります。
なので、点差が開いたら、開き直りましょう。
一瞬でも攻撃をためらえば、そのセットは相手の圧勝のまま何事もなく終わってしまいます。
正しく開き直れ!
「兵士は甚だしく陥れば則ち懼れず、往く所無ければ則ち固く、深く入れば則ち拘し、已むを得ざれば則ち闘う。」
兵士たちは、あまりにも危険な状況に陥るともはや恐れなくなり、行き場がなくなれば覚悟も固まり、敵国に深く入り込めば一致団結し、逃げ場が無くなれば奮戦する。
卓球選手は、死地に追い込まれたと自覚したときに、もはや恐怖を感じなくなります。
「これだけ点差をつけられちゃったんだから、このセットはもう負けて当たり前」
「相手の方が強いんだから、負けて当たり前」
負けて当たり前だと思えると、開き直って思い切ったプレーができます。
さて、この「開き直る」という状態ですが、一歩間違えると「雑になる」という状態になってしまいます。
この2つは紙一重でありながら、全く別の結果を生みます。
開き直れば、逆転のチャンスが来ます。
雑になれば、勝負はそのまま終わってしまいます。
では、この2つの違いは何でしょうか。
それは、
「一撃で決めようとしているかどうか」
です。
一撃で決めようとすると、雑になります。
力が入り過ぎて、コースを狙い過ぎて、ミスが増えてしまいます。
開き直っている人は、実は一撃で決めに行く気はほとんどありません。
思い切ってロングサーブを出しつつも、
「さぁ、打ってみなさい!」
と、相手にレシーブで打たれることを覚悟します。
思い切って回転をかけつつも、
「さぁ、打ってみなさい!」
「さぁ、ブロックしてみなさい!」
と、返ってくることを前提に考えます。
思い切ってドライブを打ちつつも、
「さぁ、ブロックしてみなさい!」
と、連打することを最初から考えています。
このように、開き直ると、しっかり振りつつも決める気はほとんどありません。
だから無理がなく、ミスをしないのです。
しかも、相手が返してくることを前提としています。
だから、次の態勢を作るのが早く、ラリー戦でも勝てるのです。
・しっかり振る
・決めに行かない
この2つを理解すると、死地で正しく開き直ることができます。
機敏に決断せよ!
「始めは処女の如くにして、敵人、戸を開くや、後は脱兎の如くす。
敵、拒ぐに及ばず。」
初めは乙女のようにおとなしくしておいて、敵が侵入口を開けたら、逃げる兎のように機敏に動け。
そうすれば、もはや敵は防ぎようがないのである。
散地では「基本的に繋ぐ」。
軽地では「ぐずぐずしない」。
死地では「開き直る」。
共通して言えるのは、
「決断」
することです。
攻めるなら攻める、守るなら守る、繋ぐなら繋ぐ。
ハッキリと心に決めることが重要です。
状況が変われば、戦い方も変わります。
そのときに、ぬるっとグラデーションのように戦い方を変えるのではなく、スパッと即座に戦い方を変えます。
そうすることで、相手は後手の対応をするしかなくなります。
初めは様子を見て、戦い方が見つかれば、即座にその戦い方に切り替える。
機敏に切り替えるほど、相手は対応が後手に回り、もはや防ぎようがなくなるのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?