孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ③「謀攻」篇 ~戦わずに勝て~【前編】
謀攻篇では、
「戦うな!」
「敵の情報を手に入れろ!」
といったことが語られています。
戦いで勝つために、相手を攻め滅ぼす必要は必ずしもありません。
謀(はかりごと)で攻めるということを、知っておきましょう!
撃破せずに勝とう!
「百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。
戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。」
百回戦って百回勝利するのは最善とは言えない。
戦わずに敵を屈服させるのが最善である。
「戦争」というと、バチバチの「戦闘」をイメージしますよね。
「突入じゃー!」
「あいつの首を獲るのじゃー!」
「放てー!」
弓矢ヒュン、ヒュン、ヒュン。
「撃てー!」
火縄銃バン、バン、バン。
大砲ドーーン。
こんなイメージです。
しかし、戦争の目的は利益の追求であり、戦闘は手段のうちのひとつに過ぎません。
戦闘によってこちらにも被害が出れば、それはもはや利益の追求に反してしまいます。
なので「百戦百勝」は百戦している時点で最善ではないのです。
相手の意図を挫くことが戦争の本質であり、そのために必要でない戦闘は、すべきではありません。
卓球の試合も、バチバチの「打ち合い」をイメージしますよね。
スマッシュ、ドーーン。
「ナイスボール!」
みたいな。
しかし、強打という戦闘行為も、手段のうちのひとつに過ぎません。
にも関わらず、
「スマッシュこそ我が人生」
とばかりに、常にスマッシュを打ちに行き、甘くないボールにも手を出してしまうと、ミスで相手に得点を与え、こちらに大きな被害が出てしまいます。
百回スマッシュを打っている時点で、最善ではないのです。
伊藤美誠選手のスマッシュは天才的ですが、それでもスマッシュばかりで勝ちにいくことはしません。
多彩なサーブレシーブで崩し、
バックハンドでコースを突き、
ブロックで前後左右に揺さぶり、
コースを限定してカウンターで仕留めています。
敵情に合わせて手段を選んでいるのです。
強打はどうしてもミスがつきまとうので、無理にやりたくはないんです。
例えば、明らかな格下の人と試合をするときに、わざわざ強打で勝とうとは思わないじゃないですか。
ロングサーブを相手が返せないなら、ロングサーブを出し続ける。
ツッツキを相手が打ちミスするなら、フォア側にツッツキをし続ける。
ループドライブを相手がブロックできないなら、下回転のサーブを出してループドライブをし続ける。
ロングサーブもツッツキもループドライブも、強打よりはミスが少ないですよね。
このように、自分はなるべくリスクを負わずに勝つことが最善です。
そのために、相手をよく見て、適切な手段を選ぶ必要があるのです。
相手がミスをして、
「ラッキー!」
と言っているうちは、まだ相手のことが見えていません。
「相手はそれが苦手」なのか、
「相手はそれを待っていなかった」のか、
決してラッキーではない「必然的な理由」が、そこにはあるのです。
作戦を討て!城を討つな!
「上兵は謀を伐つ。」
最高なのは、相手の作戦を未然に潰すことである。
最善の戦い方は、相手の得意なパターンを未然に防ぐことです。
例えば、相手は「下回転サーブからのループドライブからのスマッシュ」が得意だとします。
このとき、下回転のサーブを出させないようにします。
「そのサーブは効かねぇぜ!」
というレシーブをするのです。
ストップをすればループドライブはできません。
フリックやチキータをすれば、ループで思い切り回転をかけることができません。
とにかく相手がループドライブをできないようにレシーブをします。
こうなると、相手は得意なパターンに持ち込めないことを悟り、諦めることになります。
このようにして、相手の得意技を諦めさせるのが、最善の戦い方になります。
「其の次は交を伐つ。」
その次は、友好国との同盟関係を断ち切ることである。
しかし、ストップやフリックやチキータができないこともあります。
「あっしはまだこの世界に入って日が浅いもんで、レシーブはまだツッツキしか教わってねぇんです。」
という、技術的にできない人もいれば、
「この人のサーブ、なんかやりづらいなぁ。」
と、技術はあっても、相性的に難しいこともあります。
こうなると、謀を伐つのは難しそうです。
ならば次の作戦として、交を伐ちにいきます。
つまり、
「下回転サーブからループドライブの流れ」
「ループドライブからスマッシュの流れ」
このどちらかの連携を断ちます。
下回転サーブに対して、ツッツキをしっかり切ったり、コースを使い分けたりして、しっかりループドライブが打てないようにします。
または、
ループドライブに対して、ブロックを低くしたり、コースを使い分けたりして、スマッシュが打てないようにします。
相手の想定内のボールを打ってしまうと、相手のパターンにハマってしまいます。
それよりも少し良いボールを打つことで、相手のパターンを狂わせましょう。
相手にパターンを諦めさせることはできなくても、相手のミスで得点を拾うことはできます。
「其の次は兵を伐つ。」
その次は、敵との戦闘に勝つことである。
しかし、相手の想定よりも良いレシーブができないこともあります。
「ツッツキでコースを狙えません!」
「ループドライブをブロックできません!」
こうなったら、こちらも攻めます。
ここまで来るともはや良い作戦とは言えませんが、こんな状況なので仕方ありません。
繋いでいるだけでは相手のパターンを食らうだけなので、リスクを覚悟して攻めます。
下回転のサーブに対して、フリックやチキータ、台から出ればドライブを打ちます。
謀を伐つときのフリックとは違い、レシーブミスを覚悟して行きます。
あるいは、
ループドライブに対して、ドライブを打ったり、ブロックで叩いたりします。
これもかなりリスキーですが、もうやるしかありません。
これらが決まればラッキーですし、こちらの攻めの姿勢を相手が意識して、相手のパターンが崩れることもあります。
これで勝つのはさすがに難しいので、
「打ち勝ってやるぞ!」
というよりも、
「相手を崩してやるか。」
というノリで臨みましょう。
下策ではありますが、無策よりはだいぶマシです。
「其の下は城を攻む。」
最悪なのは、敵の城を攻撃することである。
最悪なのは、相手が守りの体勢でいるのに攻めてしまうことです。
こちらがリスク覚悟で攻めていくと、次第に相手も守りの体勢になっていきます。
相手が守りの体勢になっているのに、攻め続けるのは得策ではありません。
相手が守りの体勢になっているということは、相手は得意パターンの意識が薄れているということです。
ならば、レシーブで普通にツッツいても大丈夫です。
ループドライブを普通にブロックしても大丈夫です。
もうリスクを取る必要はなくなります。
そして、相手がまた得意パターンを狙いだしたら、またリスクを覚悟して攻めるのです。
つまり、相手の体勢をよく観察する必要があります。
なので兵を伐つときも、
「よっしゃー!攻撃じゃー!」
と、血を昇らせるのではなく
「守りの体勢にならないかなぁ。」
と、あくまで冷静に相手を観察して、それに応じた作戦を取りましょう。
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