孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ⑧「九変」篇 ~柔軟に対処しろ~【前編】
九変篇では、
「対処法を持て!」
「利害を考えろ!」
といったことが語られています。
卓球は、相手が何をやってきても、対処できないといけません。
あらゆる事態に対してどう対処するのか、知っておきましょう!
9種の対処法を知れ!
「九変の利に通ずる者は、兵を用うるを知る。」
「九変(九種の対処法)の効果をよく知っている将軍こそが、兵の運用法を弁えている。
ここでは、戦いにおける9種の対処法を紹介していきます。
これを知らないと、あなたの得点のパターンも、強力な得意技術も、使えなくなることがあります。
「なんか上手く行かないなぁ。」
のまま負けてしまうことを無くすために、九変を熟知しておきましょう。
①「圮地には舎ること無く」
足場の悪い不安定な土地には宿営してはならない。
戦いづらい場所に留まってはいけません。
卓球に言い換えると、点が取れない戦い方をし続けてはいけません。
「そんなの当たり前だろ!」
「点が取れない戦い方は、すぐに捨てるに決まってるだろ!」
と言うかもしれませんが、いやいや、これはやっちゃいがちです。
例えば、自分はバックハンドが得意だとします。
しかし、相手はさらにバックハンドが上手かったり、相手との相性が悪かったりして、バック対バックでは勝てないこともあります。
この場合、バック対バックは圮地なのです。
にも関わらず、
「俺の武器はバックハンドなんだ!」
「俺はバックハンドの神だ!」
とか叫びながらバック対バックで挑み続けてしまいがちです。
自分の武器を過信すると、そこが圮地であることに気づけないのです。
例えば、自分は先に攻めるパターンが得意だとします。
しかし相手は、ツッツキを相手に持ち上げさせて、それを上から叩くのが得意です。
この場合、ツッツキを持ち上げるのは圮地なのです。
にも関わらず、
「俺は絶対先に攻めるんだ!」
「卓球は先にドライブをかけた方が強いんだ!」
と書かれたハチマチを巻きながら、一生懸命ドライブで持ち上げ続けてしまいがちです。
自分のパターンに固執すると、そこが圮地であることに気づけないのです。
相手との兼ね合いをしっかり見て、圮地を避けていきましょう。
②「衢地には交を合わせ」
交通の要衝では諸国との親交を結ぶ。
交通の要衝とは、いろいろな方向の道に行けるポイントのことです。
卓球で言うと、パターンを変えるときです。
例えば、ずっと短いサーブを出していたので、そろそろロングサーブを出そうと考えているとします。
このとき、相手の対応をしっかりイメージしておくことが重要です。
「バックロングにサーブを出せば、相手はビックリしてミドルに繋いで来そうだから、フォアドライブの準備をしておこう。」
と考えます。
3球目フォアドライブと、あらかじめ親交を結んでおくのです。
「バックロングにサーブを出したら、相手はビックリするだろうなぁ。」
これだけでは、全く準備が足りません。
例えば、コースを変えるときもそうです。
バック対バックからストレートに打ったとき、相手の対応をしっかり見ておきます。
「相手の対応が遅れているから、ストレートに繋ぐしかできないはず。バックハンドでクロスに叩く準備をしよう!」
「相手がしっかりバックスイングを取っているから、フォアブロックの準備をしよう!」
このように、バックハンド強打やフォアブロックと、あらかじめ親交を結んでおくのです。
「よし!ストレートに打ってやったぞ!」
と、コースを変えたこと自体に満足している場合ではありません。
パターンを変えるときこそ、相手の対応をイメージすることが重要なのです。
③「絶地には留まること無く」
敵国に深く入り込んだ土地には長く留まらない。
卓球にも、長く留まってはいけない奥地があります。
代表例が「回り込み」です。
説明するまでもないですが、回り込むとフォア側がガラ空きになります。
なので回り込んだら、打ちながら右足を少しフォア側に踏み出さないと、次が間に合いません。
回り込んで、左足を前に踏み込みながら打つと、次はもう絶望的です。
なので、左足を踏み込んでいいのは、絶対に決められるときだけです。
絶対に決めるだけの態勢が整っていないときは、打ったらすぐにフォア側に動いてください。
あと最近はチキータの出現によって、フォア前をバックハンドでレシーブする人が増えました。
これも、バック側がガラ空きになります。
しかも回り込みとは違って「絶対に決められる」ことはありません。
なので、レシーブしながら左足を少しバック側に踏み出すのは必須です。
打ったらすぐにバック側に動いてください。
④「囲地なれば則ち謀り」
三方を囲まれた土地では包囲されないように計謀をめぐらす。
卓球においても、一方にしか進めない状況はかなりマズいです。
例えば、相手のバックロングの順横回転のサーブに対して、クロスにしか返せないと、相手に待たれてしまいます。
一つのコースにしか打てないと、全部相手に狙い打ちをされてしまうのです。
なので、ミスをしてもいいから、たまにはフォア側にも返す必要があります。
1点を犠牲にしてでも、別のコースを見せて相手の狙いを外せば、その1失点は最小限の被害なのです。
全日本選手権2020男子シングルス決勝もこのパターンでした。
宇田選手は、フォアサイドに台から出るサーブを出し、張本選手がクロスに返してくるのを、回り込んで叩きました。
特に最終ゲームはほとんど全部このパターンでした。
張本選手は、三方を囲まれていたのです。
中盤あたりで、ミスをしてでもフォア側を見せておけば、ここまで被害は広がらなかったんですが、それがなかなかできませんでした。
このように、コースを限定されてしまう展開はかなりマズいです。
脱却するために必要なのは、目先の1点を捨てることなのです。
⑤「死地なれば則ち戦う。」
逃げ場のない土地では必死に戦うしかない。
チャンスを与えてしまい、相手が打ってくるときは、もう決死の覚悟で立ち向かうしかありません。
ヤマ勘で良いので、コースを決めてブロックをしに行きます。
強打が怖いからといって逃げるのは、相手に楽をさせるだけなので、絶対にやめてください。
まず理解すべきは、ブロックで立ち向かう主目的です。
「ブロックすること」
ではありません。
もちろんブロックできたら良いんですが、さすがに難しいですもんね。
なので、そこが主目的だと思うと、
「どうせ無理だから」
と思って逃げたくなります。
そうではなく、ブロックで立ち向かう主目的は、
「相手のミスを誘うこと」
です。
ブロックの構えを相手に見せることで、プレッシャーをかけるのです。
強打する側の立場で考えてください。
つい力み過ぎたり、コースを狙い過ぎてミスすることってあるじゃないですか。
ブロックの構えは、これを誘えるんです。
大きく構えることで、コースを塞いでしまうのです。
ブロックの構えを見せて損はありません。
それを放棄して逃げてしまうのは、損しかありません。
「本気で勝ちたい人間」は、逃げの姿勢を決して見せないのです。
⑥「塗に由らざる所有り。」
通ってはいけない道がある。
卓球にも、使ってはいけないコースがあります。
例えば、相手がブロックをフォアで構える癖があり、しかもちょっと叩いてくる場合。
この場合は、ドライブをフォア側に打ってはいけません。
相手はそれを自然にいくらでもカウンタースマッシュできます。
このように、特に狙っていなくても自然に打ててしまうボールというものが、多くの人にあります。
そこは絶対に避けないといけません。
バック側にツッツいたら、自然にバックドライブで打ち抜けちゃう人もいるでしょう。
フォア前にストップしたら、自然にフリックで打ち抜けちゃう人もいるでしょう。
バック側にブロックしたら、自然に回り込んで打てちゃう人もいるでしょう。
自然にできちゃうものは、どんな状況だろうか、どんなに揺さぶろうが、できてしまいます。
なので、これをやらせてはいけません。
相手の意識を分散させるために、試合前半で敢えてやらせることはあるかもしれません。
しかし基本的には、これは避ける必要があります。
残りの3つは【中編】へ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?