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孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ⑤「勢」篇 ~勢いで攻めろ~【後編】

⑤「勢」篇 ~勢いで攻めろ~【前編】では、

「スムーズに攻めろ!」

「正と奇を使え!」

という話をしました。



今回は勢篇の後編です。

勢いとはどうやって作り出されるのか、知っておきましょう!


勢いとタイミングだ!

「勢は弩を彍るが如く、節は機を発するが如し。」

勢いを蓄えるのは弓の弦を一杯に引くようなものであり、タイミングとはその引き金を引く時のようなものである。

ここで孫子は、勢いの仕組みを弓に例えて説明しています。

勢いとは、蓄積と発射の2段階から構成されます。



まずは、弓を引っ張って引っ張って引っ張ることで、エネルギーが蓄積されます。

この蓄積具合で、勢いの大きさが決まります。



そして、発射することで蓄積されたエネルギーが放出されます。

発射にかかる時間が短いほど、威力は大きくなります。



つまり、蓄積が大きく、発射が短時間になると、破壊力が最大となります。



ドライブを打つときも、バックスイングをしっかり取って、一瞬で振り抜いたときに、威力は最大となります。



つまり、攻撃をするときは、

「バックスイングをしっかり取れるか」

が勝負の分かれ目になります。

そのために必要なのが、スムーズな動きです。

スムーズに動いてコースに先回りすることで、バックスイングを取る時間が作れます。

そして、一瞬で振り抜くことで、決定力のある攻撃ができます。

さらに、奇法を使って相手の待ちを外すことで、より決定率は上がります。



このようにして、強打が一撃で決まることが連続する状態が、いわゆる「勢いのある」状態なのです。



好調は永遠ではない!

「乱は治に生じ、怯は勇に生じ、弱は強に生ず。」

混乱は整然と統治された状態から生まれ、臆病さは勇気の中から生まれ、弱みは強みから生まれるものである。

コースの予測がしっかりできていて、勇気を持ってドライブが振れていて、自分の得意なパターンで得点ができている。

こんな調子の良い状態が、永遠に続くと安心してはいけません。



相手がコース取りを変えて予測ができなくなると、たちまち混乱します。

リードしているところから追い上げられると、たちまち臆病になってしまいます。

こちらの得意パターンを相手が阻止すれば、たちまち不利な態勢になってしまいます。



状況は変化することを自覚し、臨機応変に対応する必要があります。


乱れるか治まるかは、組織編制の技術の問題である。

例えば、フォアクロスにループドライブを打って、クロスにブロックが来たのをフォアドライブ。

これがよく決まっているとします。

非常によく治まっています。



しかし、相手もバカではありませんので、次第にクロスにブロックをしなくなります。

ストレートにブロックをするようになります。



このときに、

「よし、バックドライブの準備をしよう。」

「よし、回り込む準備をしよう。」

と、編成の切り替えがスムーズにできると、あなたの卓球は治まり続けます。



「うわぁ!俺のパターンができない!」

「フォア側に来てくれー!」

「もうダメだ!諦めまーす!」



と、今のパターンに固執してしまうと、いずれ乱れた状態に陥ってしまいます。



治まった状態は、永遠には続きません。

編成を柔軟に切り替えることが、乱れない秘訣なのです。


臆病になるか勇敢になるかは、勢いの問題である。

大きくリードしてから追い上げられているときや、試合終盤の大事なときなどに、臆病な状態に陥りやすくなります。

臆病になるのは、勢いを作れていないときです。



勢いとは、スムーズに動いて先回りをして、早めに準備をすることで生まれます。

これができていないときに、臆病になるのです。





大きくリードすると、相手は開き直って、戦い方を変えてきます。

それに対してこちらは、



「これで点を取ってきたんだから、このままでいいんだ!」



と、過去の成功に縛られやすくなります。

これが、大逆転の元凶になります。



相手がやり方を変えてきているので、それに応じてこちらも変えないといけません。

コースが変わったのか、スピンが変わったのか、スピードが変わったのか。

しっかり把握して、改めて態勢を作る必要があるのです。





試合終盤では、ミスが許されません。

なので、全面を待ってしまいがちです。

しかし、全面を待っていると先回りができず、勢いを作れません。



ミスが許されない状況でも、予測して先回りができるかが問われています。

そのためには、相手が何をしてくるか、知っていないといけません。



「お前はメンタルが弱い!!!メンタルを鍛えろ!!!」

などと言いますが、本当に必要なのは、メンタルではなく情報なのです。


戦力が強くなるか弱くなるかは、軍の態勢の問題である。

バック対バックで得点が取れているなら、それはあなたの強みになります。

しかし、相手が一度バックハンドをストレートに打ったことで、あなたはそれを意識します。

すると、勝てていたバック対バックで勝てなくなってしまうことがあります。



意識ひとつで、強みが弱みになることがあるのです。



それまでは、バック側でしっかり待っていたから、バック対バックで勝てていました。

それが、一度ストレートを見せられたことで、バック側で待ちづらくなり、とたんにバック対バックで勝てなくなったわけです。



態勢によって、強みと弱みはひっくり返るのです。



なので、強みを見つけたからといって、

「よっしゃ!これで勝てるぜ!」

とは、決して思ってはいけません。

相手が対策を立てるまではそのままで良いですが、対策を立ててきたら、こちらもすぐに対応する必要があります。




また、相手が強みを見せてきたときに、

「うわー!もうダメだ!この世の終わりだー!」

と、絶望する必要はありません。

相手の態勢さえ崩してしまえば、そこは相手の弱みになるのです。



敵を誘導しろ!

「之に形すれば敵必ず之に従い、之に予うれば敵必ず之を取る。」

敵が動かざるを得ないような態勢を作ると、敵はこちらが思うように行動し、敵の利益を与えると、敵はその利益を得ようと行動する。

勢いを発動させるとき、あらかじめエネルギーを蓄積させておいてから、そこに敵を誘導させると、成功率が上がります。



相手のコース取りを予測して、あらかじめバックスイングを取っておくと、強打の成功率は上がります。

相手が打ってからバックスイングを取っても、時間が全く足りません。



敵を誘導させることが、勢いを使うコツなのです。



そして、敵を誘導する方法は、



「それしか打てなくさせる」

「それを打ちたくさせる」



の2つです。



「ははーん。これをやると、相手はこれでしか返せないんだな。」

というものを見つけましょう。



巻き込みサーブをフォアハーフロングに出すと、ループドライブをクロスにしか打てないかもしれません。

順横回転のサーブでバックサイドを切ると、クロスに繋ぐことしかできないかもしれません。

ストップをバック前にすると、クロスにツッツキしかできないかもしれません。

ループドライブをバックミドルに打つと、バック側にブロックしかできないかもしれません。



それしか来ないと分かっているならば、エネルギーを蓄積して待っておくことができます。



さらに、

「ははーん。相手はこれをやりたがってるな。」

というものも見つけましょう。



フォア前のサーブを、クロスにフリックしたい人もいます。

バック前のサーブを、クロスにチキータしたい人もいます。

バックへのツッツキを、回り込んでストレートにドライブしたい人もいます。



これはこれで、相手の行動が読めているので、狙い打ちすることができます。



このようにして、相手をおびき出すことが、勢いを生む秘訣です。

敵の誘導とエネルギーの蓄積は、ワンセットなのです。



さぁ、勢いで勝つのだ!

善く戦う者は、之を勢に求め、人に責めず。

戦いに巧みな指導者は、戦闘における勢いによって勝利を得ようとし、兵士の個人的な力に頼ろうとはしない。

強い選手は、技術単体の力に頼ろうとはしません。



「ドライブを打ってやるぞー!」

と、ドライブ単体の力に頼ろうとしても、打てるボールが来るとは限りません。

次第に、

「甘いボール来るかなぁ…来なかったらどうしよう…絶対来ないよぉ…もうダメだー!」

と、臆病になってしまいます。



そうではなく、強い選手は、勢いを利用します。

先回りをして、相手を誘導し、しっかりバックスイングを取って待つのです。

こうして、自分が圧倒的に有利な態勢をとれば、性格には関係なく自信がつき、勇気が湧いてきます。

臆病になんか、なりようがありません。



メンタルが強い人もいれば、弱い人もいます。

同じ人でも、メンタルが強いときもあれば、弱いときもあります。

何がメンタルの強弱を分けているのか。

その答えが、勢いだったのです。


⑤「勢」篇 ~勢いで攻めろ~【前編】
⑥「虚実」篇 ~弱点を突け~【前編】
その0「孫子の兵法とは」

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