苔読書 その1
苔に興味を持ち出してから、すごい勢いでいろいろな苔本を読んでいる。
自然科学系の本を読むことは少なかったし、苔については本当になにも知らなかったので、どの本を読んでも非常に新鮮で、学びが多い!同じ苔を扱うのでも、視点もさまざま。
自分のための備忘録もかねて、どんどんご紹介します。
『ときめく図鑑Pokke!ときめくコケ図鑑』
山と渓谷社の「ヤマケイ文庫」は、無線とじの背中の接着剤が硬すぎて開きが悪く、文庫なのに手になじまなくてすごく読みづらくて残念で、もう買わないと決めていたのだが…これは装幀がツボにはまってつい買ってしまった。そしてこの本が、現在の苔趣味のきっかけになった。
情報がコンパクトにまとまっているのはよいのだが、肝心の図鑑部分がちょっと使いづらい。どんなところで見つかるのか(土の上なのか、水際なのか、樹皮の上か)が重要な情報なのだが、その情報があまり目立たないし、文庫サイズのため写真も小さい。Vixenの苔観察セットについてたリーフレットみたいに、見つかる場所が記号で示されているといいかも。
なお、苔本をいくつか読んでわかってきたことだが、苔の分類の方法もいくつかあり、どれを採用して並べるかも図鑑にとってはかなり重要な問題。その点でも、この図鑑は苔観察の初心者にはちょっと難しいのかも。ひたすら毎日ぼんやり眺めているが、そのためにはやっぱり背中の接着剤が硬すぎるんだな…
『コケはともだち』
やや古いが、ぱらぱらと読むには楽しい本。初心者向けの情報も充実しているが、苔をキャラ化しているのがちょっと読者を選ぶかも。この手の、いかにも「女子」受けを狙った感じの本にはちょっと抵抗を感じるのだが、これは中身はちゃんとしているので、また確認したくなるかも。
『コケ見っけ! 日本全国もふもふコケめぐり』
『コケはともだち』と同じ著者による最近の本。タイトルどおり、日本全国の苔の名所を紹介した一冊。著者は屋久島で苔の魅力に目覚めたそうな…住宅地の竹垣の麻紐に生えた苔に惹かれた自分との格差を感じる(笑)
この本で紹介されている、池上本門寺はいま住んでいるところから遠くないし、鎌倉には両親が住んでいるのに、どちらも苔という視点で行ってみたことがなかった…改めてルーペもって訪れなければ。
とはいえ、いちばん気になるのは卑近なところでユニークな生え方をしている苔であるのには変わりない。特に「コケめぐり」を目的としなくても、どこへ行っても苔がみつかるというのが、苔観察の最大の利点なのだ。
『コケの謎』
これはいろいろ読んだ中でも特に気に入った一冊。著者は理科教育の専門家らしいが、苔については初心者、というところからはじまって、友人の「苔屋」の導きもあり、だんだんと苔にハマっていく。解説書というよりも読みものだが、「なるほど生物に詳しい人はこういうふうに苔をみるのか」というのがわかって興味深い。
苔は顕微鏡を使わないと種類の同定は難しいと書いてあり、納得した…そして、著者は顕微鏡をみながらたくさんスケッチをしている。本に収録されているスケッチは眺めるだけでもたのしい。そして、ただ眺めるだけでなく、スケッチすることで初めてみえてくることがあるのだということがよくわかった。
普通、植物のスケッチというのは「余計なものを描かない」ものらしいが、苔の場合はどんな環境に生えているのかが重要なためか、著者は環境もかなり描きこんでいる。絵としても見ていて楽しい。絵を描くことにはかなり苦手意識があるのだが、こんなスケッチが描けたらいいなぁ…
そうそう、苔の名前が覚えづらいと感じていたのだが、この本では苔の名前を漢字とカタカナ両方で書いてある。これは覚えやすくするための工夫としていいかも。なお、著者の「苔屋」のご友人は、はじめから和名を覚えるのを放棄してラテン語の学名だけを覚えたそうだ…さすがにそれは厳しいな。
この本で、都会で見つかる苔「アーバン・モス」というのが数種紹介されていて、そのうちのひとつに「ギンゴケ」がある。ギンゴケは都会のど真ん中でもあちこちにみられる一方で、南極の昭和基地にも生えているそうだ。それなのに、著者の住む沖縄にはほとんどないらしい。興味深い。
そのうちまた書くが、そのギンゴケ、東京都品川区に住む自分の生活圏内にもぜったいに生えているはずなのに、まだ見つけられていない。たぶん見てはいるのだが、ギンゴケだと認識できてない。身近な苔ほどよくわからないという不思議現象…
つづく。
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