言葉はなくても、おしゃべりはできる
ダイアログ・イン・サイレンスとは、
「言葉はなくても、おしゃべりはできる」、
それを知る体験だった。
おしゃべりすることの、たのしさ。
わかってもらえたときのうれしさ。
わかったときの「なるほど」。
受けとったよ、受けとってくれたんだね、
が確認できたときのひと安心。
わたしを見つめる、あたたかい瞳があることを知れること。
そばにいてくれる存在。
いっしょにいる時間。
わたしがいて、あなたがいて、わたしたちはおしゃべりができる。
ただ話すだけでいい。
ただ確認できるだけでいい、あなたがいることを。
言葉をつかわなくても、おしゃべりはできる。
それを知れることは、ただうれしい。
言葉はなくても、おしゃべりはできる。
それは、自分の気持ちと相手の気持ちに、
ていねいに耳をすませて、
すなおに語りかける時間。
そんたくも、空気を読むのも、情報の新しさも、たくさんの「いいね」も、
わたしたちのおしゃべりには必要ない。
親しさと安らぎをあじわう、ほんとうのおしゃべりは、
言葉ぬきだからこそできたのかも。
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東京・新宿で、2018年7月29日から8月26日まで開催されていた、「ダイアログ・イン・サイレンス」を体験してきました。
音のない世界で、表情やボディランゲージなど、言葉を使わない対話を楽しむエンターテイメントです。
音を遮断するヘッドフォンを装着し、アテンド役の聴覚障害者の女性にいざなわれて、さまざまな部屋をめぐっていきます。
彼女が全身で表現してれたウエルカムは、まるでテーマパークのダンサーのよう。
あっという間に魔法にかかりました。
そして、彼女のキラキラ輝くような存在感に、なぜか泣けてきた私。
聞えないことを上回る表現力と、それを獲得してきた彼女の積み重ねと、そしてなにより私たち参加者へのいっぱいの愛情をみせてくださったからなのかも。
彼女と、12人の参加者といっしょにすごして、言葉はほんとうに必要なのだろうか?
おしゃべりのうれしさ楽しさは、言葉がなくてももてるんじゃないか?と思い、その気持ちを記してみました。