からだのすべてを、ひとつのアプリで管理する「FiNC」
私は今、FINCをDLして体重の記録や、毎日の活動量の記録に使っているのですが、フィンクちゃんが「今日は朝から活動的だね✨」と声をかけてくれて、ちょっと親近感を湧いてしまって、いつもサイトを開いてしまいます...笑
そんな感じでFINCを使っている人は他にもいるのではないでしょうか?
ということで、今日はFINCを題材にして、マーケティングトレースをしてみたいと思います。
用いた分析は以下の3つです。
①3C分析
②STP分析
③4P分析
■FINCのサービス概要
FINCのコンセプトは
「カラダのすべてを、ひとつのアプリで」
「一生に一度のかけがえのない人生の成功をサポートする」
「人生をもっと健やかに楽しくするあなただけのスマートパートナー」
といったもので、人の健康維持という世界共通の課題解決につながるイノベーションを、テクノロジーによって引き起こすことを目指しています。
後で詳しく説明しますが、具体的な事業としては、
ライフログの管理から、健康と美容を学ぶコンテンツ、健康と美容関係の商品を買えるECモールまで、体に関わるすべてを提供
しています。
ざっと簡単に、FINCが解決していることをまとめますと、
FINCは「ちょっと健康を気にし始めた」30代前後の女性の、
健康や美容を意識したいんだけど、自分一人では継続することができないという課題を
AIサポーターのフィンクちゃんによるサポートや、ポイントが溜まる制度などを導入して、「取り組むインセンティブ」や「取り組みやすくなる仕組み」を導入して解決しています。
ーユーザー数
2017年にアプリを公開してから順調にユーザー数を伸ばし続け、現在では美容・健康に関心の強いF1・F2層を中心に、800万人以上のユーザーに利用されているサービスとなっています。
※F1、F2層とは?
マーケティング業界ではよく使う言葉らしいのですが、よく知らなかったので周辺知識と一緒にまとめておきます。
C、T、M、Fと1、2、3を使って、性別や年齢別に層を分けているみたいです。
・C層 (Child、Kids : 男女4歳~12歳
・T層 (Teen-age) :男女13歳~19歳
・M1層 (Male-1) :20歳~34歳の男性
・M2層 (Male-2) :35歳~49歳の男性
・M3層 (Male-3) :50歳以上の男性
・F1層 (Female-1) :20歳~34歳の女性
・F2層 (Female-2):35歳~49歳の女性
・F3層 (Female-3):50歳以上の女性
ー市場規模
富士経済調べでは、ヘルステック・健康ソリューション関連の市場規模は、2022年には3,083億円まで拡大すると予測されています。
今後もFINCのユーザー数が増加していくと思いますし、そのユーザー増加に伴ってFINCを使っている人のECモールでの消費なども増加していくことが期待できると思います。
■事業背景
<パーソナルトレーナが事業のスタート>
創業者である溝口は、パーソナルトレーナーでした。
パーソナルトレーニングジムを経営し、プロのスポーツ選手から膝・腰が悪く日常生活が困難な方まで、お客様一人ひとりの悩みを聞き、その人に最適なメニューを提供し、励ましながら継続してもらうことで成果を出していました。
この時、「1人では月に50人しか指導できない」「お客様もパーソナルトレーナーを探すのに手間や時間、お金がかかる」という課題を感じていました。
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<スマホを活用してパーソナルトレーナーの無料体験を提供>
そこで、当時普及し始めたスマートフォンを活用して、自身のノウハウを届けることで、多くの人を救うことができると思い、無料でパーソナルトレーナーの体験を提供できるアプリを作りました。
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<成果報酬型のFiNCダイエット家庭教師でマネタイズ>
さらに、FINCでは、成果保証型の「FiNCダイエット家庭教師」を提供し始めました。
これは専用アプリによって、ダイエットの専門家であるトレーナーや栄養士から、栄養・運動、メンタル面のサポートを受けられるものです。
当時、「60日間で19万8000円(税別)」とスマートフォンを使ったサービスとしては高価格でした。
この時の狙いは、価格を安くすることよりも確実に成果を生み出すことだったそうです。
パーソナルトレーナーとして、活動してきたため、価格を安くしてやる気がないような人が始めて効果を実感できない、というよりも、やる気がある人が必ず成果を出せることに拘ったのだと思います。
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<「健康が所得に左右されるのはおかしい」という思いからFINCアプリを開発>
パーソナルトレーナーを持つというのは、場所も時間もお金もかかり、どうしても所得などに制限がかかってしまいます。
創業者の溝口さんは、健康を手に入れられるのは所得に関わりなく、誰もが同じように保証されるべきと考えました。
だから、いろんなハードルをAIなどのテクノロジーによって、悩みを持った人たちに対して、最適なものを届けることができると考えて、FINCを始めたそうです。
技術の発展・時代の流れによって、思いを実現できるようになったということですね。
■3C分析によるまとめ
<顧客>
メインターゲットは、体の変化に敏感になって、「健康でいたい」「美しくいたい」と思う 30 歳前後の女性(美容・健康に関心の強いF1・F2層)です。
この層は、美容や健康の知識には興味があります。
その中でも特に、ダイエットなどの活動をした時に
・一人では継続できない
・人に応援されると頑張れる
などの頑張る理由が欲しいと思っている人がターゲットになります。
またこれとは別に、特に女性は、
・割引などには目がない
という特徴がありますね。
(特に洋服において、女性ものはよく割引がありますし、店員も割引きを大きな声で呼びかけているので、この特徴があるのかなと思っています。)
<自社>
①ライフに関わるサービスの提供
②フィンクちゃんによるサーポート
③ポイントや特典がもらえるインセンティブ
詳細は4P分析にて。
<競合>
ある分野に特化したものが多く、インセンティブがあるものは少ない印象です。
有名なアプリで言うと、dヘルスケアがインセンティブがあるアプリとしてはあります。ある分野に特化したアプリは数多く存在しており、万歩計系で言うとgoogle fit、睡眠管理系で言うと睡眠アラートなどがあります。
<3Cからの考察>
Fincが目指す、「カラダのすべてを、ひとつのアプリで」を実現しようとしているものはほとんどなく(見つからず)、目立った競合は存在していないと思われます。
そのため、メインターゲットをより具体的に考えた時に、Fincというアプリが目指すものがターゲットの課題を解決するものになっていて、またそれ自体が競合優位性を発揮しています。
逆にからだのすべてを管理したいと思わない人にとっては、ある分野に特化したアプリで十分であるとも考えられます。
■STP分析を使ったポジションマップ
ターゲットは、3C分析で述べた通り
体の変化に敏感になって、「健康でいたい」「美しくいたい」と思う 30 歳前後の女性(美容・健康に関心の強いF1・F2層)
です。
こういう女性の中には、継続するのが苦手であるために「健康でいたい」「美しくいたい」という思いを達成できていない人が多いと思います。
そのため、継続して使えるか、というのがポイントであると思っています。
まず大事なのが、歩数計測アプリや睡眠計測アプリなど、あるカテゴリーに特化したサービスを提供するのではなく、体重・睡眠・食事・歩数・生理などの様々な計測データをまとめて管理できるということです。
様々なアプリに分散させずに、管理できるというのが「楽に」継続することにつながると思います。
また、美容・健康に関するコンテンツを多く配信していることで、知識をつけて行動に移すといういい循環が廻り始めます。
以上のように、フィンクはカラダに関わるプラットフォームというのが強みです。
「楽にできる」意外にも、インセンティブがあるというのが継続につながる重要な要素になっています。
いくら楽に記録できても、記録した先に「健康」「美しい」意外にイメージできるものがなければ、やる気は継続しないと思います。そこで、「ポイント」や「特典」がもらえるというインセンティブがあるというのが、強みであると思います。
よって、「カラダ全般✖️インセンティブ」という観点から比較してみます。
そもそもからだ全般に関係するコンテンツを提供しているものはほとんど存在していません。
dヘルスケアは、万歩計や体重の記録などを行なって、dポイントをもらえるという点では、他のサービスよりもメリットがあります。
しかし、健康や美容に関する情報提供や、ECモールという点ではFiNCには劣っていると考えられます。(dヘルスケアは、dポイントでお買い物できるためECモールがあると考えることができますが、特化しているFiNCよりは良さが際立ってはいない感じです。)
FiNCは、体重計やバンドなどのウェアラブルデバイスの提供も行い、からだ全般の領域を広げて行っています。からだ全般といえば、FiNCというイメージができつつあるのではないでしょうか。
うまくポジショニングができていることがわかると思います。
■4P分析
<Product>
①カラダのすべてを管理できるアプリ
②独自開発のAI「フィンクちゃん」
③インセンティブの仕組みと取り組みたくなる仕掛け
①カラダのすべてを管理できるアプリ
大きく3つのものを提供しています。
1.AIパーソナルトレーナーがヘルスケアサポートする「ライフログ管理」
2.ユーザーに最適な情報提供を行う「メディア」
3.健康と美容に関する商品の「ECモール」
体重・睡眠・食事・歩数・生理などの「ライフログデータ」をまとめて管理できる機能があり、専門家監修の美容・健康について学べるコンテンツが約3万本掲載されています。
②独自開発のAI「フィンクちゃん」
そして、この約3万のコンテンツの中から、ユーザーの悩みに合った美容・健康メニューをフィンクちゃんがレコメンドするなどして、個々に寄り添った健康的な生活をフィンクちゃんがサポートしてくれます。
③インセンティブの仕組みと取り組みたくなる仕掛け
ーポイント制度
「FiNC」にはトレーニングや歩数などの目標を達成するたびに、ポイントを付与するシステムが備わっています。貯まったポイントは1ポイント=1円で美容と健康に特化したECサイト(FiNCモール)にて、使用することができるのです。
ーその他特典
目標の歩数を達成すると海外旅行が当たったり、自分が選んだキャラクターから褒めてもらえるなど「取り組みたくなる仕掛け」を提供しています。
ーエンタメ性のあるコンテンツ
エンタメ性のあるコンテンツを届けることは、継続して使ってもらうために大切なポイントであると考えられています。
また、多くの人にとって、知識・知恵の獲得とモチベーションアップは相互関係にあると考えれれています。
そのため、FiNCはメディアとして動画や読み物などの配信にも力を入れています。
<Promotion>
・SNSを通して、運動やメリット、エクササイズ方法の発信
一番活動的なのはInstagramで、フォロワーは11.1万人
・2020年1月6日より地上波テレビ番組「フィンク1分フィット」
月〜木で0:45~
Instagramは、フォロワーが11.1万人で、主にエクササイズ系の動画をアップロードしています。再生回数は数万回と、毎回多くの人に視聴してもらっているようです。
https://www.instagram.com/finc_app/
F1層は Instagramを活用して、時間をつぶす傾向にあると考えられますので、Instagramを主に活用しているのだと思います。
<Price>
収入源
①有料会員費:960円/月
②広告費
有料会員費が960円というのは、FiNCモールで毎回健康や美容用品を買っている人であれば、すぐに元が取れる金額です。1000円以下というのは、低価格で会員になりやすい金額ではありますね。
広告に関しては、美容・健康に関心のある500万人が集まる「FiNC」上で商品を紹介し、ミッション・ポイントを与えることで、継続購入を促しています。
若い女性にターゲットを絞って広告を出すというのが難しくなってきているため、健康や美容に関心が高い若い女性にターゲットを絞って広告を配信できるのは、大きなメリットであると考えれられます。
<Place>
・基本的にネットで完結
・パーソナルジム 六本木、銀座、永田町、原宿など都心部に5店舗
■FiNCの勝ち筋
①チュートリアルで心を掴み、
②楽に
③楽しく継続できるようにしたこと
①チュートリアルで心を掴み
FiNCは始めのユーザー登録の時に、フィンクちゃんと対話しながら登録する形式をとっています。
なぜ登録したのかや、個人情報の登録などをすべて対話の中で行なっており、フィンクちゃんにインタビューされながら進めていくので、いつもよりも緩い気持ちで行うことができます。
それによって、個人情報を登録する障壁が下がったり、プッシュ通知を許可しやすくなったりしていると考えられます。
②楽に
入力の手間をなくしたことが楽につながっています。具体的には以下の通りです。
歩数を自動取得していること
睡眠時間を独自のアリゴリズムで自動取得していること
食事の栄養を画像から自動計算していること
③楽しく継続できるようにしたこと
毎日、フィンクちゃんにコメントやアドバイスをもらったり、頑張った分だけポイントや特典がもらえたり、継続することに対する「インセンティブ」や「継続したくなる仕掛け」が用意されています。
以上により、FiNCは800万DLという数字を達成することができているのだと思います。
■最後に
今回はFiNCについて調べたのですが、有料会員数の売り上げや継続率などの詳しい情報を見つけられていないので、深い考察ができていないのが心残りではありますが、FiNC全体としての戦略を知ることができたのはよかったです。
また、どんな広告を行なっているのか、という詳細なことを十分調べられていないので、これからも意識してFiNCを見ていきたいと思います。
コメントや意見などがありましたら、気軽にコメントを残してもらえると嬉しいです。今日も最後まで読んでいただきありがとうございました!